第6話─知る者と知らぬ者


 日差しの強い昼下がりに一人、先刻の出来事を省みて佇んでいた。手に持った缶コーヒーで一息つくと、ぽつりと漏らす。

 

「悪い癖が出てたかなぁ」

 

「そうでもないんじゃない?」

 

 物陰から、全てを聞いていた人物が姿を表す。

 

「なんだ居たのかよ、神草」

 

「ふふっ、冬夜。あたしが神出鬼没なのくらい知ってるでしょ?」

 

 俺は苦虫を噛み潰した表情を浮かべた。対照的に彼女はキャンディを舐めながら、飄々としてこちらに近づいていく。

 

「……ちなみに聞くが、いつから居た?」

 

「最初っから。あいも変わらずお熱いねぇ〜」

 

「……そういう関係じゃないって」

 

 隣でケラケラと茶化すのを片目に、俺はコーヒーを仰いだ。その手はコーヒーの温かさのせいか、少し赤くなっていた。彼女は言葉を続ける。

 

「まあいいや、とにかくあんたには大字な役目が或るからねぇ」

 

「……そうだな。あいつだけはから守らないと。っと悪い、時間になる。ここらで失礼するわ」

 

 授業開始5分前の予鈴が鳴り、俺はその場から立ち去って行った。その時放った神草の言葉が俺に届くことは無かった。

 

「頑張りな、守護者サマ」

 

 

 ────────────────────

 

 家に帰るや否や、着々と装備を整える。戦いにおいてどれも不可欠なものばかりだ。天気は曇り、風向は南南東、決して良くはない。家の前では既に椛が用意を済ませ、出発の時を待ち侘びている。改めて椛と顔を合わせて気持ちを解き放つ。

 

「椛、絶対に今日は勝つからね」

 

 椛は御託はいいと言わんばかりにこう返す。

 

「その自信、折ってみせます」

 

 時は満ちた。

 

「じゃあ行きますか、!」 

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