【第1章】その7✤ヴァロワ=ブルゴーニュ家

 フランスの王家の説明の後は、やはりブルゴーニュ公国家についての解説も必要だろう。


 15世紀の中世に百合の紋章のフランス王国と鷲(わし)の紋章のドイツ神聖ローマ帝国の2つの大国に挟まれて繁栄を誇っていたのは、実はこの華麗なるブルゴーニュ公国だった。


 1328年にフィリップ6世がヴァロワ朝フランス王家を開き、その息子ジャン2世には4人の息子がいたのだが、その息子達の中では一番下の四男だったフィリップがブルゴーニュ公国の後継者となる。


 この話をもう少し詳しく書くと、イギリスとフランスの百年戦争(1337年 - 1453年)の前半頃だった1365年に、イギリスの黒太子エドワードとヴァロワ朝フランス王家2代目当主のジャン2世による「ポアティエの戦い」が勃発、その際フランスは大敗してしまうのだが、その時にわずか15歳にして騎士として大変勇敢な働きをしたのがこの四男のフィリップで、彼は後にフィリップ豪胆公と呼ばれることになる。


 そしてこの際の報奨として、武勇に優れ有能だったフィリップは父王から「ブルゴーニュ領」を下賜(かし)され1363年にヴァロワ家の初代ブルゴーニュ公として即位することとなったのだ。


 一方、彼の長兄であるシャルル5世も1364年にヴァロア朝第3代フランス王として即位。


 そのフランス王の兄の強い意向もあり、フィリップ豪胆公は1369年には並居なみいるライバルを蹴落とし、フランドル伯のたった一人の後継者である娘マルグリットとの結婚によって、彼女の相続したフランドル、アルトワ、ブルグンド伯領を相続する。


 2人は幸い仲の良い夫婦だったようで9人の子供に恵まれるが、男子二人は早世、また他の2人も戦争で亡くなってしまい、残った長男のジャンが家督を継ぎ、1404年に2代目ブルゴーニュ公ジャン無怖公(むいこう)として即位。


 そしてこの2代目ジャン無怖公の、バイエルン公アルブレヒト1世の娘マルガレーテ・フォン・バイエルンとの結婚がまた、ブルゴーニュ公国に大きな利益を運んでくる。


 この結婚によって本来マルガレーテの弟が相続する予定だったエノー伯領、ホラント伯領、ゼーラント伯領(現在のオランダにあたる地域)も獲得することになるとは本家のフランス王家でさえも思ってもみなかったことだろう。


 この後に、この2人の一人息子フィリップ善良公が1419年に3代目ブルゴーニュ公として即位するのだが、1430年には、彼の従兄弟が亡くなりブラバント公領も相続したため、現在のベルギーにあたる大部分を持つ公国となり、この時にはフランス一部のブルゴーニュ地方のみならず、現在のオランダからベルギー、ルクセンブルグまで広がる、つまり現在のフランス東部からドイツ西部、そしてベネルックスまで入る広大なブルゴーニュ公国が誕生したのだ。


 本来の相続人が運悪く早くに亡くなってしまったことによって、ブルゴーニュ公国は初代フィリップ公から3代目のフィリップ公が在位していた100年ほどの間に、もともとの領土から3倍ほどの大きさに公国を広げることに成功する。


 このように考えると後にハプスブルグ家が婚姻によって領土を増やしていくことができたのは、もしかしたら後のハプスブルグ家の子供達にはブルゴーニュ家の幸運の血が流れていたからではないのだろうか?

「幸いなるオーストリア、戦いは他のものに任せ、汝は結婚せよ」という有名な言葉のイメージで、結婚政策で大成功しているのがハプスブルグ家のお家芸のように言われているが、むしろこの14世紀から15世紀のブルゴーニュ家の結婚政策の大成功ぶりを見ると、このブルゴーニュ家の強運な血がマクシミリアン1世の子供達の血に流れたために、ハプスブルグ家も幸福な王家になれたのかもしれないとふと思ってしまうのだが、どうなのだろうか。


 そして、こんな繁栄の中に誕生するのが偉大なるブルゴーニュ公国の、4代目シャルル突進公、「我らが姫マリー」の父だったのである。




Copyright(C)2022-kaorukyara



またベルギーに近いドイツ在住の地の利を生かして、InstagramやTwitterではマリー・ド・ブルゴーニュのゆかりの地ベルギーのブルージュで見かけた、マリー姫に関連するものをご紹介していきます。


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