一周まわって、春

押田桧凪

第1話

 割り勘がめんどくさいから。照れ隠しにそう言って、いつも奢ってくれる甘々な敬志。そんな彼にはじめて会ったのは、去年の入学式の日。


 青く澄んだ空の下、一人帰り道を歩く私の方へ、彼は小走りで駆け寄り、声をかける。


「背中がさびしそうだったから」


 胸の奥で高鳴る鼓動を隠すようにして、ふいに足元に目を落とし、それから彼の方に向き直って、私は言った。


「散っちゃったね、さくら」

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一周まわって、春 押田桧凪 @proof

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