第183話 初めての海水浴
「そうそう、力を抜くと自然に浮きますの」
「怖くないですから、水中で目を開けて大丈夫ですよ」
「良いぞ、そのままゆっくり足を上下に振って……」
「はいはい、こっちこっち。鬼さんこちら、手の鳴る方に」
照りつける太陽の下、カイムはティーとミリーシア、レンカ、ロズベットの四人から水泳を教わった。
「何というか……すごい子供扱いされている気がするな」
四人に従って泳ぎながら、カイムは憮然として思う。
彼女達は優しく、わかりやすく教えてくれている。
だが……どうにも、馬鹿にされているような感が拭えない。
「お前ら、もしかして俺が泳げないからって馬鹿にしてないか?」
「いえいえ、そんなことはありませんの」
「はい。普段は頼りがいのあるカイムさんの可愛い姿に、胸をときめかせたりはしていませんよ」
「そうだとも。いつもは完全に負けているからな。たまにはマウントを取ってやるのも悪くないなどとは、微塵も考えてはいないぞ」
「もっと無様なところを見せても良いわよ……おっと、口が滑ったわね。ごめんなさい」
四人の美姫……ティー、ミリーシア、レンカ、ロズベットが笑いながら言う。
絶対に、カナヅチのカイムを面白がっている。子供にものを教えるような微笑ましそうな顔をしていた。
「クソッ……覚えていろよ……」
屈辱に呻きながら、カイムはそっと三人の姿を観察する。
「さあ、もう一度やりますの。ファイトですわ、カイム様」
ティーは豊満な肢体を真っ赤なビキニの水着に包んでいた。
メロンのようにたわわに実った果実が面積の狭い布に包まれ、動くたびにたゆんたゆんと上下に揺れている。
「いざとなったら支えますから、ご心配なく」
ミリーシアは白のワンピースタイプの水着を着ており、腰にパレオを巻いていた。
清楚でありながらも濃ゆい色気を醸し出しており、生まれたての女神のような美しい姿である。
「ほらほら、こっちだ。もっと手足を大きく動かすんだ」
レンカは黒のビキニ。セクシーなデザインでビキニの上部が左右に交差していた。
日焼けした肌、ほどよく筋肉の付いた手足が露わになり、レンカの健康的な魅力を引き立てている。
「はいはい。頑張れ、頑張れー」
そして……ロズベットはサイドが大きくカットされたモノキニの水着。
他の三人に比べると胸部こそ乏しいものの、スレンダーでスタイルが良いモデル体型。長い手足が太陽の下で水を切り、躍動している。
「ム……」
四人の水着姿。
タイプの異なる美女・美少女が艶やかに咲き乱れる姿は、まさしく眼福。
金貨を山のように積み上げられるよりも、よっぽど価値があるような光景である。
(子供扱いされるのは屈辱だが……これを見ると、絆されそうになるな)
現金な話だが……これほどの美姫の水着姿を間近で見られるのだから、多少の屈辱は呑み込んでも良いと思えてしまう。
改めて、自分がとんでもない幸せ者なのではないかと思えてくる。
「待ってろよ……泳ぎくらい、すぐにマスターしてやるからな……!」
悔しさをバネにして練習に励むカイムであったが……宣言通り、すぐにスイスイと泳げるようになった。
元々、運動神経は並外れている。センスだって悪くはない。
コツさえ飲み込んでしまえば、あとは上達する一方。すぐに女性陣よりも速く泳げるようになった。
「可愛げがないわねえ……こんなに早く上手になったら、面白くないじゃないの」
ロズベットがつまらなそうに唇を尖らせた。
「どんなもんだ。ざまあみろ」
「それじゃあ、卒業試験をしなくてはいけないな」
「ええ、そうですとも」
得意げに胸を張るカイムに、レンカとミリーシアが悪戯っぽく言う。
「卒業試験? 何の話だ?」
カイムが眉をひそめると、四人が両手を広げて自分達の艶やかな肢体をアピールする。
そして、四人を代表してティーが言う。
「鬼ごっこですわ。どうぞ、私達を捕まえてみてくださいな」
四人は笑顔でカイムを手招きするが……彼女達の顔は淫靡に染まっている。
見慣れた顔だ。どうやら、発情しているようである。
「それが卒業試験か……お前らがやりたいだけだろうが」
カイムは溜息を吐きながらも、お遊びに付き合ってやることにする。
砂浜の方を見るが、そこにランスや他の人間の姿はなかった。多少、羽目を外したとしても問題あるまい。
「やってやる。全員、すぐに捕まえてやるよ」
カイムは宣言して、水に飛び込んだ。
戦争が始まる前の束の間の休息。
四人の美姫との濃厚な交わりを存分に楽しんだのだった。
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