第3話
好きって言えるその勇気、凄いよな。
本当は言いたいよ。言いたいけどさ、怖いんだよな……。
『すき』って言えたら、どんなに楽なんだろう。
私は、そんなことをずっと考えていて歩幅も小さく歩く速度も遅くなっていた。
「あれ、美穂先輩」
「え?」
結翔くんが声掛けてきた。
まさか、下の名前で呼ばれるとは……。
今、心臓が飛び出そう……。
「そんな暗い顔してどうしたんですか?」
「ううん、なんもないよ」
「まあ、元気ならいいんですけど」
「結翔くんは、今年は何個もらう予定?」
「急になんですか?」
クスリと笑うその表情。私のモノにしたい。……なんて。
「何となく。気になって」
「ハハッ。そうなんですね。んー、何個だろう? 分からないなー」
「相変わらずモテますねー」
「ちょっとら嫌味風に言うのやめてもらえますか?」
「ふふっ。ごめんね?」
「あ、今年は貰えるかな? って感じです」
「え、そうなの?」
「はい。今年、あげるんです」
「え……? あげる?」
「はい。逆バレンタインってやつですね。あ、じゃあこれから部活なんで」
「あ、うん」
そんな話をして、結翔くんは信号を渡ってスケートリンクへと向かった。
私は、彼の背中を目線で追いかけるしかなかったけど、色々と理解が追いついていないことだけはハッキリと分かった。
あげる? 誰に?
疑問が頭の中をぐるぐると駆け巡っていて、自分でもどこを通って来たのか帰路が思い出せないが、今私は、自分の部屋にいる。
結翔くん、他に好きな人がいるのかな?
なんだろ、凄い喪失感。
心苦しい。
息って
どうするんだっけ……?
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