過誤記憶

◆ご挨拶

こんにちわ、だいなしキツネです。

今日はジュリア・ショウ『悪について誰もが知るべき10の事実』から過誤記憶に関するエピソードを紹介するよ。


◆過誤記憶

過誤記憶とは、誤った記憶のことだ。

記憶とは過去の正確な記憶ではなく、ウィキペディアのページのように、誰もが書き換えられるものなんだ。記憶には自分だけではなく他人もアクセスできるようだよ。

極限状態に置かれた人の記憶は現実からかけ離れたものになる場合があり、実際には起こっていないはずの犯罪について、自分が被害者や目撃者であると考えたり、自分が犯人だと考えたりする。著者のジュリア・ショウは、実験によって被害者の記憶をハッキングし、自分が加害者であると信じさせたこともあるそうだ。


ここで、とある犯罪について語ろう。

犯人は、高齢の父親を刺殺した。動機は復讐だった。幼少期から父親に性的虐待を受けていたと考えており、あるときこれに怒りを覚えて衝動的に殺害してしまったんだね。

問題は、実際には性的虐待などなかったということだ。このことに犯人は後から気づいた。そして、なぜ自分が勘違いしたのかを訝しんだ。

犯人は、ジュリア・ショウの研究を知って、真相を理解したそうだ。それは他人によって捏造された過誤記憶だった。

犯人はもともとアルコール依存症に悩まされていたのだけど、そのときセラピストやソーシャルワーカーから、「あなたのアルコール依存症の原因は幼少期に虐待を受けていたからに違いない」と説明されていたそうだ。当時疲労困憊だった犯人はそれを信じてしまった。そして悲劇は起こったんだね。


◆悪の問題

ジュリア・ショウは、「この殺人犯を邪悪だと言い切れるだろうか」と問いかける。そして、現代の悪はこのように複雑な社会的諸条件に根ざしているものなので、短絡的に犯罪者を排除するのではなく、悪への共感性を高めるべきだと主張する。

あなたならどう考えるかな。


キツネは、ここでいう〈悪〉という言葉は曖昧ではないかと危惧している。殺人犯の社会的諸条件に共感するのは適切だと思うけれど、その社会的諸条件を背負ってもなお殺人は犯してはいけないと判断する根拠が人間には必要だ。つまり、人に共感するのはよいけれど、悪に共感したところで問題は解決しないのではないか。むしろ、悪をなさないために、悪とは何かを見据える必要がある。


このような視点から『悪について誰もが知るべき10の事実』を徹底批判した解説を執筆したので、いずれ『だいなしキツネ』本編に追加するよ。この回は本当に【台無し解説】になってしまったので、映像編集者さんから「動画化は見送りましょう」と提案されてしまったよ。だからカクヨムオリジナルの論考になると思う。楽しみにしてくれると嬉しいな!


それでは今日のお喋りはここまで。

また会いに来てね!

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