No.38 私にはみなさんがいますから
破壊者たちのコアを取り込みその力を増していたトータナス。
アギ―達は彼からコアを解放する事に。
一つ、また一つとコアが解放され、変貌していたトータナスはとうとう元の姿へと戻らされるのであった。
「貴様ッッ!!」
「うっ、こ、これでもう破壊者さんの力は使えないですからねっ!!」
トータナスの鋭い睨みに一瞬ビクッとするも下がらずに言い返すアギ―。
「それだけで良い気になるのは、少し時期尚早なんじゃないか?」
息を整えながら彼はアギ―の方へと足を進める。
「え、ま、まだ戦うんですか?!」
「当たり前だ、貴様わかっていないのか?我からコアを取り出したという事の意味が。我が内包する魔力の割合がまた変わったのだぞ。つまり魔王達の力は再び私には効かなくなった、という事だ」
そう言われて唾を飲み込むアギ―。
「そうなるんですね。確かに言われてみれば……」
「アイツ理解してなかったのか……」
「恐らくコアを取り出す事にのみ注力していたからだな」
「無理もない」
「アギ―ちゃんは戦闘経験は殆どないものねー」
魔王達もそう言うが、だからと言ってコアをトータナスの身体に戻す訳にも行かない。どの道こうせざるをえないのだ。
「それに加えてだ……」
トータナスは手をアギ―に向ける。
手の先から大量の怨念が放たれた。
「うわ!」
アギ―はとっさに植物を使い回避した。
「なんだかさっきよりも……!?」
「そうだ!コア自体は取り出されてしまった、当然その分魔力量も減った、しかし破壊者たちのコアに当てられた事で我が死の力は更に絶対的なものへとなった!」
彼が腕を払うと怨念の波が発生し、アギ―を飲み込もうとする。
アギ―は樹木の壁を生み出す。
「無駄だッ!!」
波が壁に触れると瞬く間に壁は朽ち果てた。
「あ、危なかった」
耀を纏った状態のアギ―がトータナスの背後に現れる。
「ほう、良い判断だな」
「まだ私達の魔力は使える、直接相手に攻撃するのには使えなくてもこれなら」
アウレンデントがそう言うと隣でテネバイサスが首を振る。
「確かに、コアを取り出した事でこれ以上奴とアギ―の魔力量に差を広げる事は防げた。しかしそれだけではダメだ、アギ―が持つ決定的な弱点を克服しないとこの戦いには勝てない」
「アギ―ちゃんの弱点?」
彼女にそう言われ頷くテネバイサス。
「アギ―には攻撃手段がない」
「まてテネバイサス、アギ―はちゃんと攻撃しているぞ」
横からグレイシモンドがそう言って入ってきた。
確かにアギ―はトータナスの攻撃を回避しては両手に持った斧で攻撃をしていた。
「あんなんじゃダメだ。アギ―には決定打となる一撃がねぇ。確かにアイツは攻撃したり、触れた部分からどんな物でも植物に変えちまう力がある」
フラマーラが説明する。
「そうだ、その力があれば……」
グレイシモンドがそういってアギ―に視線を戻す。
するとある事に気付いた。
先ほどからトータナスの身体に植物が生えないのだ。
もうすでに何度もアギ―の攻撃を受けているというのにも関わらず。
「植物が、生えていない?!」
「実際にはちゃんと植物は出てる、だけどすぐに奴のもつ死の力で枯れちまってる。だからイビルハンガーの時みたいに身体中を植物に変えるのは無理だろうな。そしてアギーにはそれ以外の方法で奴に深手を与える方法がねぇんだ」
フラマーラが厳しい目をして見つめている。
「はぁ、はぁ」
「どうした?随分と息が上がっているな、さっきの我と立場が逆転したなッ!」
トータナスの攻撃は止まない。
次から次へと襲い掛かる怨念を回避してアギ―は攻撃を挟み込む。
「ふん、そんな斧で切った所で、そして雑草を我が身に生やそうとした所で、全てが無意味だッ!!」
「きゃっ!」
吹き飛ばされるアギ―。
すぐに起き上がり、耀を纏って行動しようとする。
しかし走り出した途端に転んでしまう。
「ハッハッハッ!!なんだ、随分と間抜けな事をするじゃないか。それとも我を楽しませるための余興のつもりか?」
アギ―の身体を纏っていた耀が徐々に弱まって行く。
「そうであろうな。魔王達の力は絶大だ、だから我でさえも長き時をかけねばこの身に取り込むことは出来なかった。それを貴様は短時間で使用した。いくら魔力的に繋がりがあると言っても、肉体が持ちこたえるのとは別の話だ」
トータナスが言うようにアギ―は自身の疲弊具合を感じ取っていた。
「それ以上その力を使っては体がもたないな。まあどの道、貴様は我を倒し切れるほどの力を持っていない」
アギ―に近づくトータナス。
(相手は元々あった力がパワーアップしてるのに、私はこんな状況に。なんとかしないと、魔王様達の力には頼ってもこの場はどうにもならない。私の力で……)
彼女は起き上がりトータナスから距離を取る。
「ふん、逃げた所で無駄だッ!!」
彼の放った怨念を避ける、しかし完全には避けきれずに足の一部に怨念が触れてしまった。地面に倒れ込むアギ―。
「アギ―ッ!!」
フラマーラが叫ぶ。
「うっ!!」
触れたのはアギ―の左腿の外側、怨念に当てれらたその部分は既に崩れ始めていた。
「どうだ、痛みは毛ほども無いだろう?当然だ、痛みなどという過程はない、あるのは死だ。それが死なのだ」
アギ―は動こうとはするがすでに左足は満足に動かせない。
(考えろ、考えるんだ、私の力でこの状況をなんとかしないと!)
彼女は植物を伸ばし、自身の身体を移動させる。
「貴様は万物に【始まりである生】を与える能力だ。我と逆のもの、しかしその優劣差は見ての通りだ。貴様がいくらその力を使おうとも我の【終わりである死】の能力によってすべてを終わらせる。最初から敵う通りなどなかったのだ。少しばかり我の力に抵抗出来た所でそれはただの延命だ、延命では死から完全に逃れる事はできんからな」
そしてトータナスはアギ―を掴み上げる。
「さあ、これで終わりだ!」
トータナスの手がアギ―の身体を正面から貫く。
「ふははッ!最後というのは味気ないものだ。そう、死である我から逃れることなど出来んのだ」
彼はアギ―から腕を引き抜く。
彼女の身体が力無くその場に倒れる。
「ようやく目障りな者が死んだ。この世界ももう終わりだ」
トータナスは魔王達に目を向ける。
「さて、残るは残骸共の処理だな」
彼が指を鳴らすと魔王達を囲んでいた壁が消滅した。
「……ッ!テメェェッ!!!」
フラマーラが勢いよく飛び出す。
他の魔王達も彼女に続く。
各自の魔力をもってトータナスに攻撃をしかけた。
しかし、いずれも効果はない。
「どうした、錯乱してしまったか?我に貴様らの能力は効かない事を忘れたのか?」
トータナスが手を振る、すると怨念の突風が現れ魔王達を飲み込んだ。
魔王達の身体が怨念に当てられてしまう。
身体の一部が崩壊し魔王達はその場に倒れる。
「ふん、他愛のない」
「これで終わるわけなかろうが!」
魔王達を見下すトータナスに対しグレイシモンドが凍てつく魔力を放った。
他の魔王達も魔力を放つ。
「まったく、最後の悪あがきだな」
「貴様らをここで終わらせても良いが。そうだ、この世界が終わりを迎えるのをその特等席で見届けさせてやろう。どうせ何もできん貴様らだ、己の無力を知り死ぬが良いだろう」
「ふん、何得意げに話してんだ?」
フラマーラが彼に向かってそう言った。
「なんだと?……ッ!!」
振り向くトータナスは驚きを隠せなかった。
アギ―が立っていた。
左足はもう完全に崩壊する一歩手前まで損傷し、胴体にも大穴が開いている。
そんな状態で立つどころか生きている筈のないアギ―が立っていたのだ。
「そ、そんな馬鹿なッ!!我が力を持って貴様を討ったはずッ!胴の中心から死は広がり、貴様は死んでいる筈だッ!!」
「はぁ……はぁ……私にはみなさんがいますから……負けませんよ」
アギ―がそう言うと胴体の傷も、そして脚も元に戻って行く。
「それがどうした!死を一度遠ざけただけで!死は絶対だ!逃れられんッ!」
トータナスは怨念の波を放つ。
アギ―はその波を直に受けてしまう、当然彼女の肉体はボロボロに崩壊する。
しかし、その直後、身体は元に戻っていく。
「どういうことだ!」
「この戦いを終わらせます」
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