アンティークドール(骨董少女)の夢

@Heineine

第1話

ある自治都市のオークション会場。

中立国であるこの都市には、大国間の戦時中にも関わらず、各国の大御所が集まっていた。

目当ては今夜開かれるオークション。

他国で開かれるオークションよりも、変わった出品物が多く見られることで、掘り出し物を求めて、出品者の身元よりも、「ブツ」を重視した出品が、この会場に集まる顧客の求める、出色の品なのだ。

集まる客は仮面舞踏会のように、それぞれがマスクをしている。

相手の素性を探ってはいけない。。。それが暗黙のルールだ。

仮面だけでなく、わざとみすぼらしい身なりをしたりと、皆が工夫している。


今夜、歴代最高額が叩き出されるらしい。

それが顧客たちの口の端に自然と昇る噂だった。

一月ほど前、中立国内のある公爵夫人の屋敷の遺品整理をしているときだ。

(公爵婦人でなく高級娼婦の設定もあり。その方が、周りの人間が距離を置く理由になりやすい)

その夫人は若い頃に、夫と娘を戦争で亡くして以来、再婚はせず、邸宅に一人で暮らし続けた。

その夫人が旅行に出たまま戻らなかったのだ。

少し果ての荒野で、襲撃された様子の2頭立て馬車が見つかり、婦人のドレスと思われる布の切れ端と、夥しい血痕が現場に残されていた。

派遣兵の調べでは、血痕は近場の森まで、所々続いており、結局、死体は見つからなかった。予測される出血量から公爵婦人は死んだものと見られ、死体は内々にに処理されたらしいという判断が下された。


相続人不在の主人なき館となった邸宅は、程なくしてオークション協会主導の遺産整理が行われることになった。

婦人の私室には、天蓋ベッドの下に地下室に通じる階段があった。およそ地上3階分はある石の階段は、人が二人分通れるぐらいの幅と高さで、明確な目的があって作られたことは間違いなかった。

階段を降りきると、丁寧に作られた樫の重厚な扉があり、開けると執務室然とした部屋があった。部屋の中央には5つの棺が並んでいる。

恐る恐る教会員が棺の蓋を開ける。朽ち果てた骸骨がいるに違いない。呼吸分を3つ置いて、覚悟を決めたつもりだったが、中身は予想の上を行った。

目があった。

思わずのけぞって腰を打つ。喉から声にならない空気が漏れ出る。

岩の地面に座り込みながら、どのぐらい時間が経ったろう。

棺からは動く気配がない。呼吸の音も聞こえないほど、部屋の中は静かだった。

引けた腰を鼓舞しながら、改めて恐る恐る近づいてゆっくりと中を覗く。

それは人形だった。御伽噺の絵本の中で、永遠に時間を止められた美しい少女の、或いは令嬢のように、綺麗な宝石で出来た瞳を、虚空に固定した人形、精巧なドール仕立ての5体の人形が、それぞれ棺に収められていたのだった。

緊張と、地下室の空気で冷え切った汗が、頬を流れて正気に返った彼は、地上の屋敷に置いてきた目録調査用の紙束を取りに戻ることにした。

まるで部屋から逃げるように。

確かに人形だったが、ずっと見られているような感覚が、彼から離れなかった。


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緊張からか、彼は全ての棺は十分な検分はしなかった。5つのドールの内、1体の胸が、ごく浅く上下していることに気づかなかった。

また、地上に上がる階段の途中、背後の部屋でゴトッと音がしたにも関わらず、厚い樫の扉に阻まれて、その音は協会員の耳元には届かなかったのだった。



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中立都市とはいえ、反乱分子や諜報員、はみ出し者が不在の平和で保障された統治国家というわけでは勿論ない。

むしろ彼らは互いの情報を盗み、利用できる場として、都市の条件を利用している。

レジスタンス所属の少年アインは、オークション会場の警備として偽装し、内々の協力者の元、現場に潜り込んだ。

目的は、おそらく敵国の軍上層部に所属する貴族が、ある宝石の競り落とすことを予想し、宝石箱の中に盗聴機械を仕込むためだ。



※レジスタンス協力員のオークション警備兵。

 地下掘削して会場に辿り着いたアインは中に忍び込むことが出来た。

 部分的にセキュリティが解除された。

 監視カメラは?文明レベルはどうするか?

 目的の宝石を探すうちに精巧なドールを見つける。5体を感心しながら、

順に見ていく。5体目をそのまま見ていると、「おい」と声がかかる。

びっくりするアイン。


ドールは過去を話し出す。

クソ女魔術師に作られたこと。

目覚めてようやく体が慣れたところで、仲間のドールが連れていかれそうになる現状を知り、放っておくわけにもいかず、自分も棺のままここにやってきたこと。

ここから逃げたいこと。

※この時点で、アインを信じて全てを話すかどうか。

 無理矢理主従計画を交わす?(主人はドール側)


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残りの4体のドールも目覚める。

性格はてんでバラバラ。みんな主人公を軽んじている。

5体のドールは属性と石言葉を持つ宝石を内包する。

改造と称し、主人公の体の五体にそれぞれ宝石を埋め込む。

内心は5体の誰が、アインを自分のものにするか意地を張って取り合っている。


■ドール識別コード

ローレライ 水棲生物

アリサ 狭き門


■令嬢の外出した理由。

 敵対者の行動が活発化し始めた?

 あえて、遠く(令嬢の別邸)に外出しようとすることで、敵対者の狙う本当のブツはそっちにあると思わせるが、本当に大切なものは近くに置いていた(本邸)


■ドールの起動条件

 様々あるが、緊急措置として、製作者の血を媒介に自我を持つ。

 令嬢の心臓を5つに分けて魔核化。

 トリガーを条件に、一号から順に起動していくはずだった。

 一号は主人の窮地を感じ取り、自動起動。緊急プログラム開始。


■主人公の役目

 ドールの圧倒的力量を目の当たりにし、レジスタンス側に引き入れる役目を内々に負わされる。ドールとはいえ少女を巻き込むことへの葛藤。


■設定 備忘録

 血とはガソリン。その人物の存在を足らしめる魔力や精力、気力といった根幹の一つ。力を持った人物の血はそれだけで魅力的。

能力者の血を集めることで、その力を得ることができる。

そのため、結社や教団などの敵対組織は令嬢その他の人物の血をつけ狙う。

敵のとある一派は、かつての吸血鬼のように、血を余さず手に入れるために、美しく殺すことを信条としている。

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