恐山
健さん
第1話
俺は、原たかし。45歳。独身。旅行が趣味でよくあっち、こっちへと旅立つ。この前は会社の夏休みを利用して北の国からで有名になった北海道の富良野に行って来た。季節柄ラベンダー畑が凄いあでやかで印象的だった。あんなあざやかな色した花畑は、今まで見た事がない。どうしたらあんな目に突き刺さる色ができるのだろう。あの世に行ったことはさすがにないが、恐らくあの世のお花畑と、大同小異だろう。冬は冬で、雪の光景でまた違った風景なのだろうな。数人で旅に行くこともあるが、基本的にひとり旅がすきである。一人じゃない時は、幼稚園から、高校まで一緒だった幼なじみで親友の中畑拓郎と行くことが多い。社会人になって、こんにちまで、よく飲みにいったりしている。また、ちょっとした喧嘩もする。まあ、けんかするのは、仲のいい証拠と、いうが。しかし、この前、行きつけの居酒屋で飲んでいて、たわいのないことで、口ゲンカをした。アルコールも入っていたこともあり、熱くなってしまった。ヤツも後には引けず、ヒートアップしてしまい、そのまま絶交状態になった。そのあと1週間経って俺は、名古屋に仕事で2週間出張に行った。出張に行くときは、出張先のビジネスホテルで、ヤツと電話で今日あったことなど、近況報告していたが、今回は絶交中のためしていない。すると、もう一人の友人の江川陽水から電話が。「いやあ、さっきお前の家に行ったら留守だったんだが、今どこにいるんだ?」「2週間名古屋での仕事で、今は、名古屋のビジネスホテルにいるんだ。慌ててるようだが、どうしたの?」「どうしたも、こうしたもないぞ!中畑がさ、」「中畑が?」江川は、少し間をおいて言った。「バイクで走行中ダンプと正面衝突して、即死、亡くなったんだよ!!」「えー!中畑が!?」俺は、気が動転してしまい携帯電話を落としてしまった。(今日で10日目だ。あと4日残っている。すぐに中畑の元に行きたいのだが、友人が亡くなったから帰るなんて通用しないだろうな。)ダメ元で上司に電話してみたが、やはりダメであった。とりあえず、4日待って俺は、スーパーマンの如くすぐに中畑の家に。もうすでに、葬式も終えてヤツはすでに、墓の中だった。両親に挨拶をして。(出張中ですぐに身動きできなかったことなどを告げて。)ヤツの仏壇の前に座った。ヤツの屈託のない笑顔の写真と戒名見て線香をあげ、俺は泣き崩れた。(ごめんな、拓郎、出張中だったもので、すぐ来れなくて、、。)そして、ヤツが安置してる寺を教えてもらい早速墓前に。俺は、しばらく動けなかった。今までヤツと過ごした日々が、走馬灯のように甦り、涙が溢れ出て、喪失感が、湧き出て俺は、その場にへたり込んだ。そのあと、自宅に”戻ったようだが”、どうやって帰ってきたのか?多分夢遊病者のように帰ってきたのだろう。全く記憶にない。このままだと、精神的におかしくなりそうだ。普段は飲まないが、スコッチを気のすむまで飲んだ。出張から戻り、1週間の休みをもらった。明日から仕事なら、仕事にならないだろう。とりあえず寝よう。翌朝、少し頭が痛い。少し飲み過ぎたか?俺は自分で言うのもなんだが、霊感があるほうである。街を歩いていると、人ごみの中で、”よく見る”。ある時、渋谷のスクランブル交差点を歩いていると、ひざからしたのない男の霊が。そして、こちらにものすごい勢いで来て、言った。(よくわかったな!)そして消えた。消えるなんて、もし周りの人たちが見えていたとしたら、大騒ぎだろう。そんなわけで、中畑の霊と会えないだろうかと思うのだが。そんなことをいつも思っていたら、ふっと、青森県の恐山に無性に行きたくなり、旅行の虫がうずいた。休みもまだあるし、俺は、早速恐山に向かった。何気なく立ち寄った旅館。今日は、ここに泊る。そして、客として来ていた自称イタコの長嶋さんという老婆に出会う。すると、その老婆は俺を見るなり、っていうか俺の目を見ないで、背後を見て、”私には見える”と、言って来た。「お兄ちゃん、あんた、霊感強いでしょう?」「はい、強いと思います。長嶋さん、一体何が見えると言うのですか?」すると、イタコ婆さんは、もったいなぶって言った。「今夜夕食終えたら”あるところ”に一緒に行きましょう。私が”案内”しますから。」「はあ。」ということで、夜の8時。暗いなか、恐山の中腹のところまできた。当然ここには、2人しかいないはずなのに、どこからか、複数の足音がする。”サッ、サッ”という音が。なんだろう?すると、どこからか白装束の人達が集団で歩いてくるではないか!イタコ婆さんは、「やはり見えるようね。そうよ、ここは”霊道”(レイドウ)なのよ。10人、20人、、、と次から次へと来ては消える。よく見ていると、あっ!!中畑じゃないか!おい!俺だよ!!(あの世に行くのか?)そして俺は中畑に向かって言った。「ごめんな。意地を張っていて。俺が悪かった。今まで俺と仲良くしてもらってありがとう。」すると、中畑は、満面の笑顔で、「いいよ。気にするな。お前もいずれ”こっち”に来るだろう?そのときまた一緒に飲んだり、旅行行こうぜ。じゃあな、"その時”まで、お前を見守ってるから、元気でやれよ。」と言って消えた。長嶋さんが、”私には見える”とは中畑のことだったのか。中畑がこのイタコの長嶋さんと会わせて最後のお別れにこの恐山まで連れてきてくれたのかな。俺は、家に戻り、何年か前にヤツからもらったセーターを着てヤツも大好きだったジョンレノンのイマジンを聴いた。
恐山 健さん @87s321n
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