無気力主人公が異世界に行くまでに復活する…と思う話。あれ?異世界に行くまでに長すぎませんか?
赤井錐音
第1話
「僕の名前は
高校始めの自己紹介はつまらない。
みんなは友達が出来るかな?とか、ボッチは嫌だ!とかなんだとか思っているのかもしれないが、俺は何も思わない。
俺には何もない。何かあるとしたら僕の身体に染みついたもう使われることのないであろう合気道の技術だけ。
俺が今発した言葉の一つ一つが本心だが、それは無意識に、虚しいまま言っただけのどうでもいい言葉。ただの当たり前を口にした。それだけにすぎない。
昔はがむしゃらに走り続けていた気がするが、今はそんなことはなくなにもやる気が起きなくて無気力で、無意味で、虚しい日々を送っている。恐らく大人になれば「黒歴史」と揶揄されるような日々となるのだろう。
けど、そんな日々でさえ、俺は生きている。生きる意味なんて勝手に後からやってくるはずだ。その意味を待つためのこの虚しい日々は不思議と嫌いになれずかといって好きではない。が、容易に受け入れられるというだけでこの生活を一年と半分ほど繰り返してしまっている。
さまざまな人たちが規則正しく順番通りに挨拶のリレーを回していく様は側からみれば少し、異様ともとれる。
頑張って自己紹介をしてくれていたのには申し訳がないが、全く聞いていなかった。
頭によぎるのはやはり弟の類のことだ。
(あいつが作ってくれるご飯が一番の楽しみだからな…)
今年から俺は高校に上がったが、類はまだ中学生で来年には高校に進学するがあいつと離れていると心配になる。…これだけだとブラコンのように思えるが、別にそういう訳ではない。類は昔いじめられていた過去があって僕がいないところを狙われるかもしれない…そう考えるとものすごく中学校に戻りたくなってきた。けど、「大丈夫だよ!僕だってもう結構成長したんだよ!いじめなんかにもう負けないから!」と言っていて俺が戻りたいなんて思ってたら類の気持ちを裏切っているようなものだからここは前を向こう。…前を向いたところでだが。
そんなことを考えていたら授業の終わるチャイムが鳴った。
「お前、学校初日からそんなに元気なくてどうしたんだよ!もっと明るく行こうぜ!」
前の席から振り向いて話しかけられた。
「えっと…誰?」
「ちょっ!?自己紹介聞いてただろ!俺の後ろで聞き取りやすさマックスの場所でさ!」
なかなかなうでヤングな話し方だな…(古い)
「悪い、なんも聞いてなかった」
なんなら担任の名前すら覚えてないからな。
「少しは人に興味持とうぜ?初対面の俺がいうのもなんだけどよ。お前、なんか変だぞ?多分昔はめっちゃ明るかったりするだろ?」
本当に初対面だよな?俺の過去なんて知ってるやつこの学校にいたか?
「少し、お前と関わりたくなくなってきた。トイレに行かさせてもらおう。尿意が限界なんだ」
「嘘つけ、クラス分け前にトイレ行ってただろ」
「なんで知ってるんだよ、ストーカーか?そこまでくると、初対面偽ってるだけだろ」
「まぁまぁ、俺と仲良くしてくれよ。俺は菅野アキラっていうんだ、よろしくな」
「…よろしくな」
俺の自己紹介は…まぁ、要らないか。あいつはちゃんと自己紹介を聞いていたはずだし、
こいつが俺のこれから一生向き合う友達になると微塵も思っていなかったのだった。
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どうも、お久しぶりです。赤井錐音です。
"トラック"のネタを書いてたら保存し忘れて前消えして萎えたので新作です。
今日はあと1話出します!
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