ずぶりと12発目、オペラッティさんの店
ギルドから少し行った所の、表通りに面している場所に、オペラッティさんの店舗がある。
ドアを開けるとベルがチリンと鳴る。
中は棚が並び、色々な魔道具が陳列されていた。
奥にはテーブルがあり、テーブルの上には茶色い魔石が山となっていた。
さらに奥は居住スペースと工房だろう。
関係者以外お断りの札が扉に掛かっていた。
「こんにちは」
「ちわ」
「こんにちはなの」
奥のドアが開いてオペラッティさんが現れた。
「いらっしゃい」
「魔道具のスキル込めに来たよ」
「テーブルの上にあるのは全部そうだから、お願い。シュリンちゃんと、マムちゃんには、お茶を淹れるわね」
「うむ」
「はいなの」
「こら、お構いなくぐらい言うもんだぞ」
「うふふ、まるでお父さんね」
「手が掛かる事といったら、子供並みだよ」
「私を子供扱いするな」
「私が一番年上なの」
こいつらに構っていたら作業が進まない。
さあ作業に集中だ。
100個ぐらいスキルを込めたところでチリンとドアベルが鳴る。
客か?
作業を中断してドアの方へ顔を向けると、ロウタイドのパーティメンバーである、魔法使いのアドミが立っていた。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
オペラッティさんが応対する。
「あの、オペラッティ様は、体の中を綺麗にする魔法をご存じではないですか」
「浄化魔法の類なら知ってるわよ」
「いいえ、そういうのではなくて。腸内を綺麗にというか」
「あなたも便秘なのね。あれは困るのよ。病気ってわけでもないし、薬はあんまり効かないし」
「ですよね。私も色々と試してみましたが、これと言って効果があるのがなくて」
「クリスター、出番みたいよ」
「よっし、ちまちました作業に飽きてきたところだ。気合を入れてズドンと行くぜ。【浣腸!】」
俺は手を組んで人差し指を突き出した。
「はぅ、何なの。何なの。くぅ、駄目よ。オペラッティ様の前で。ふぅ、ひっひっふぅ」
「トイレは奥の突き当りよ」
「すいません。トイレお借りします」
お尻を押さえて、小股の早足で、足をするようにアドミが歩く。
器用に歩くなぁ。
奥のドアの向こうにアドミが消えて行く。
ほどなくして、スッキリした顔でアドミが戻ってきた。
「あれは何なんです」
「あれか。あれは俺のエネマスキルだ」
「なんて素晴らしいの」
「そうでしょ。私も初めての時は感動したわ」
「俺のスキルを込めた魔道具を作っているから、オペラッティさんに売ってもらうといい」
「是非、売って下さい」
「銀貨5枚ね」
「そんなに安いんですか」
「使い捨てじゃないけど、100回ぐらいしか持たないわよ」
「それでも十分安いです」
「この魔石、見たところゴブリンのだよな。材料費は銅貨10枚ぐらいだろう。オペラッティさん、ぼったくりじゃないの」
「あなたに払う金額や、この魔道具の開発に掛かったお金も、含まれているから妥当よ」
「さいですか」
「とにかくスッキリしました。ありがとうございます」
「便秘は食べ物や運動などで予防できるけど、ストレスが大敵ね」
「そうなんです。ストレスが酷くて。ロウタイドですか、彼が見境なしに女の子を口説くものだから。肩書と顔以外に自慢できる所がないくせに」
「そうなの」
「ええ、パーティメンバーの全員に声を掛けているけど、全員に断られてました」
あいつはしょうがないな。
たしか婚約者だっていたはずだ。
「愚痴なら聞いてあげられるから、また来なさい」
「はい」
浣腸の魔道具を買ってアドミは帰っていった。
「人間は肩書や姿形なんかにこだわるから。ドラゴンはその点いいよ。うでっぷしと持っている財宝で価値が決まるし」
「私は正義の心を持ってるかで価値を決めるの」
「俺はなんだろうな。女性の伴侶は優しさで決めたいな」
「男はみんなそう言いわね。癒されたいと。幻想なのに。結婚したら癒しなんて物はないわ」
「オペラッティさん、男の夢を壊さないでほしい」
「やっぱり、シュリンちゃんが正しいかしら。腕っ節と収入ね。あとは家庭を守り抜く気概ね。クリスターは合格点をあげられるわ」
夢がないな。
合格点はもらったけど、やっぱり優しい女性がいいな。
恥じらいなんがあると尚いい。
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