第12話 魔法の特性とスキル

「……ん、ここは。」


目が覚め、周りを確認してみる。

ベットに机など昨日見たのと同じ光景。


「部屋か。」


カーテンを開けようと、ベットから起きようとして力を入れる。

軽くふらついたが、コケることも無くカーテンを開いた。


「朝か。……いつの間に寝たんだっけ。」


記憶を思い出してみる。


確か、リーフとご飯を食べてその時に、アレンとリーパーが来て一緒にご飯を食べて、リーフの聖人並の優しさに驚いて……。


「喉にお肉ひっかけ、酒をがぶ飲みし、それで酔って弱音をぶちまけて、その後……あ。」


急に気持ち悪くなってゲロると同時に、気絶したんだった。それほどまでにアルコール度数が凄く高かったんだろう。

というか、そんな酒をごくごく飲んでいたアレン達って……。


「あれ、そう言えば目の前にはリーフがいたよな。」


ゲロかかってないだろうか……回避出来たかな?


「とりあえず、リーフの部屋に行こう。」


この世界の時間の概念は元の世界と変わらない。

時刻は午前7時半、リーフは起きているだろうか?









「リーフちゃんは、5号室にいるよ。」


リーフの部屋が分からなかったため、受付のおばあさんに聞いてみた。


「ありがとう、あと昨日は宿で吐いてすまなかった。」


宿内で吐いてしまったため、謝罪する。


「あぁ、気にしないでいいよ。リーフちゃんが『マジックポケット』で床に嘔吐物がぶちまけられる前に発動してくれたから、被害はないよ。

お酒は飲みすぎると危ないから注意しないとね。

まぁ、今回は仕方なかったんだろうけど。」


おばあさんはにこやかに笑いながら、注意してくる。

この世界では16歳から酒は飲めるが、あれだけ強烈な酒を飲むことはないだろう。


「あぁ、気をつけるよ。ありがとう。」


ひとまず、リーフの部屋も分かった事だし、行くとしよう。


来た道を引き返し、俺のいた部屋を通り過ぎる。


「それにしても、『マジックポケット』か。」


『マジックポケット』とは、無属性初級魔法。

魔力でできた魔法の袋を生み出す魔法である。

薄緑色の袋で自分の入れたい物を入れることができる。そして消えろと念じると、中に物を入れたまま消える。もう一度詠唱をすると、元の状態で『マジックポケット』を生み出せる。

中に無機物を入れた場合は、『マジックポケット』に入れている重さに応じて最大魔力量が減少する。

50キロで1段階、100キロで2段階と、50キロ増えるほどに1段階減少する量が増加する。

魔物等の生き物も入れることができるが、その場合は、そのランクに応じて減少する量が決まる。

G~Eランクなら、魔物10体で1段階減少。D~Cランクは魔物5体で1段階。B~Aランクが3体で1段階。

Sランク以上は1体で1段階減少する。


旅の際には世話になるだろうが、1つ問題がある。

この『マジックポケット』は消したら、時間が止まるということも無く長い間魔物の死体や食べ物を入れていたら腐ってしまう。


「時間停止できる『マジックポケット』だったら結構よかったんだけどな。」


そうすれば、長旅でも安心して食料を持っていけたのに、と1人呟く。


「ここか。」


そうこうしているうちに目的のリーフの部屋に辿り着いた。

とりあえず、起きているか確かめるためノックをしながら呼びかけてみる。


「リーフ起きてるか?」


「ユウキさん?起きてますよ、今開けますね。」


ドアに駆け寄る音がし、数秒後ガチャリと鍵が開く。


「おはようございます、ユウキさん、気分は大丈夫ですか?」


ドアを開け、昨日の夕食の時と同じ格好をしたリーフが出てきて、俺の顔を見るやいなや心配そうな表情で見つめる。


「あぁ、少しふらつく程度だ。それより昨日はすまない。目の前で思いっきり、ゲロってしまって。」


「私は大丈夫ですよ。咄嗟に『マジックポケット』で回収したので。そして、気絶したユウキさんを私じゃ無理だったのでアレンさん達に部屋に運んでもらったんです。」


「そうか……、アレン達にも借りができたな。」


「アレンさんがあんな強いお酒一気に飲ませたからあんなことなったと思いますけどね。」


「いや、元々俺がボーッとして、喉にお肉を引っ掛けたのが原因だ。」


「ブラックボアのステーキは弾力がありすぎますもんね。

ところで、いつまで部屋の前にいるんですか?入っていいですよ?」


そういえば、ずっと立ちっぱなしで会話していた。

女の子の部屋に(宿だが)入るのは少し緊張するが、お言葉に甘えて入ることにする。


「それじゃ、お邪魔させてもらうよ。」









「ユウキさんは、椅子に座ってもらって大丈夫ですよ。」


リーフはベットに腰掛け、俺はすぐ近くにある椅子に腰をかける。


「さて、とりあえず今日と明日はギルドのクエストに集中できるので作戦会議でもしませんか?」


何気にこの状況とリーフの格好にドキドキし、視線をさまよわせていると、リーフから作戦会議の提案をされた。


「確かにそうだな、一緒に戦うんだから作戦会議は必要だな。

とりあえずは、ステータスを教えてくれないか?」


まず最初は、リーフのステータスを知るのがいいだろう。

リーフがどんなステータスを知ったあと、前衛後衛を決めるとしよう。


「そうですね、ギルドカードに書いてあるので……えーと、これです、はいどうぞ。」


リーフは立ち上がり、荷物の中に入れておいたギルドカードを手に戻ってきて、俺に渡す。


「ありがとう、じゃあ俺もこれを。」


ポケットの中に入れておいたギルドカードをリーフに手渡す。

まるで名刺交換だ。

それはともかくリーフのステータスを拝見する。


リーフ・クレイン(16)

魔法使い 得意属性【?】


魔法攻撃力 F-

魔法防御力 F--

魔法回復力 D-

魔法制御力 E--

魔力回復速度 F+

魔力量 F+


Fランク


スキル欄(2)

回復魔法使い


魔法回復力が高いと昨日言っていたため、ある程度の予想はできていたが、予想以上に魔法回復力が高かった。

その他は、多少魔法制御力が高いのと、俺が未だ1つも持っていないスキルに興味が移る。

スキルの回復魔法使いを押してみると詳細が出てくる。


回復魔法使い

回復系の魔法を使用した場合、回復量が1段階上昇。

100回以上回復魔法を使うと習得可能。


シンプルではあるが、便利なスキルというのが俺の感想だ。てか、めちゃくちゃリーフ回復魔法使ったんだな。


「えぇ!?」


俺のギルドカードを見たリーフが変な声をあげる。


「ユウキさんって、無の加護持ちだったんですか!?」


「あぁ、そうだが。」


「すごいですね、加護持ちってだけでも凄いのに無の加護なんて……。」


そういえば、べシールが言ってたな。

無の加護を持っているものは八つ目の属性を使う事ができるため、無の加護というものは強力だと。

しかし……


「無の加護を持ってはいるが、俺の無の加護の効果、真・無属性はあまり強いものじゃないぞ?」


「そうなんですか?

……えーと、全ての魔法を無属性魔法にし、属性魔法の特性を無属性魔法と同じ特性にする?」


「その通りだ、だから俺は無属性魔法しか使えず、他の属性魔法を使うことも、その特性を使うことも出来ない。

どっちかというと、デメリット効果を持つ効果だな。」


魔王を倒さないといけない。

つまり、無属性だけではなく、ほかの属性も使うことが出来れば戦略の幅も増えるのに何故べシールが俺にこの真・無属性を与えたのか……謎だな。


「そ、そうなんですか。あぁ、だから昨日グレイウルフと戦っている時に詠唱が短かったんですね。

全ての属性魔法が無属性になるってことは、魔法の効果とかってどうなっているんですか?」


「こんな感じになってるぞ。」


机にあったペンと、羊皮紙に『ファイア』の火属性verと、無属性verを書き写す。


ファイア 火属性初級魔法

攻撃力 F+

魔法制御力 F-

消費魔力量 F

射程 F-

魔法発動速度 F

詠唱

小さき炎の灯火よ・我が手に宿りて・火球となれ


ファイア 無属性初級魔法

攻撃力 F-

魔法制御力 F

消費魔力量 F-

射程 F-

魔法発動速度 F

詠唱

小さき火種よ・火球になれ


「確かに火属性魔法の特性がないですね。

予想してたけど、一つの特性じゃなくて、やっぱり全部の特性が消えている感じなんですね。」


「ん、全部の特性ってどういうことだ?

1つの属性には1つの特性しかないんじゃないのか?

火属性は攻撃力が高いとか、水属性は防御力が高いって感じの……。」


「私も冒険者になってまだ日が浅いから詳しくは知らないんですけど、特性は複数あるみたいなんですよ。

冒険者ギルドにある本を前回ビギシティに来た時に読んだのですが、その本にはスキルの習得方法や、魔法の特性など色々とためになることが書いてあったので読んでみるといいですよ。

話は逸れましたが、その本に魔法の特性が書いてあったんです。その時はギルドの登録とかしないといけなくて時間がなかったからあまり読む時間がなかったけど……一番最初に書いてあった火属性魔法と、私がよく使う回復魔法が多い光属性魔法の特性は読みましたね。」


「へぇ、確か……火属性魔法の特性は、攻撃力が高い。

光属性魔法の特性は回復魔法が多く、回復魔法の回復力が高いっていう効果だったよな。」


べシールからもらった記憶を思い出してみる。

……特性が複数あるという情報を入れなかったのは、どうしてなんだろうな。

最低限は入れると言っていたから、1つの特性の情報しか入れなかったのかもしれない。

じゃないと、脳がオーバーヒートするかもしれないから。


「火属性魔法の特性は、攻撃力が高い代わりに、魔法制御力と消費魔力量が他の属性よりも多いんですよね。

光属性魔法の特性は、その回復魔法の量が多いのと、回復力が高い効果もですが、光属性魔法で魔物や、悪魔に攻撃魔法で攻撃した場合、高い攻撃力を出すことが出来るという特性です。それに、魔物と悪魔の攻撃を光属性魔法の防御魔法で防御した際も、高い効果を発揮するそうです。」


「つまり、火属性魔法は、攻撃力が高い代わりに制御力が難しく、魔力も多く使う。

光属性魔法は、魔物と悪魔に対して光属性は高い効果を発揮するってことか……。」


「そうです、火属性魔法は、シンプルですよね。

光属性魔法は、攻撃魔法と防御魔法は人間や精霊に対してはほとんど効果がありません。

でも、魔物や悪魔に対しては、攻撃魔法は一番攻撃力の高い火属性以上、防御魔法は一番防御力の高い水属性以上の効果を発揮することが出来ると書かれていました。」


「なるほどな、ということは無属性にも詠唱が短い以外にもなにか特性があるのか?」


他に特性があるならその特性を利用することで、もっと強くなれるだろう。


「そこまでは見ていないんですよね。あとで、冒険者ギルドに見に行きましょうか!」


「そうだな、とりあえずご飯食べて準備しようか。」


魔法の特性……ついでにスキルの習得方法も確かめたいため、とりあえず2人で食堂に行くことにした。









「朝食も美味しかったですね!」


今回もバイキング式で俺とリーフはベーコンと目玉焼きとパンを食べた。

シンプルな朝食だったが、元の世界でいつも一人、暗い部屋で菓子パン食べていた頃よりも何故か美味しく感じた。


「アレン達もいて、礼を言えてよかったよ。

なんか、納得してなさそうだったけど。」


アレンとリーパーも朝食を取りに来ており、昨日の件で、礼を言ったら逆に謝られた。

酒を飲ませてすまないと、俺が原因だから大丈夫だと言っておいたが、納得していない様子だった。


「アレンさん、村の警備をやっていることもあってああ見えて責任感ありますからね。ちょっと引きずっているだけです。少ししたらまた元気になりますよ。」


「そうか……ならいいけど。

とりあえず、準備しようか。着替えてくるから後で、宿の入口で集合しようか。」


「そうですね、私も着替えてきます。また後で合流しましょう。」


そう言って、俺を追い越して軽く駆け足で通路を走っていった。

それを見送り俺も部屋に入り、昨日買った黒のシャツとズボンを着る。


「そんじゃ、昨日買ったやつを身につけるとしますかね。」


その上にグレイトウルフの毛皮でできた紫色に染色してある上着を羽織る。その状態で腕を振ったりして体を動かす。

丈は太ももあたりまであるが、薄くかなり軽いため動きやすい。


「ちょっとゴワゴワしてるけど、そのうち慣れるだろうな。」


そして、ベルトを手に取り腰に回して前の方にあるバックルを留める。


「これ、腰袋って言うんだっけ?」


左右に五つづつある小物を入れるような袋を見る。

ちゃんと中に入れたものが外に出ないように袋と袋の上の方に留め具が着いている。

右側に初級魔石を二つと中級魔石を三つ入れ、左側に初級ポーションと中級ポーションを一つづつ入れる。

最後に腰袋のないベルトの後ろの方に短剣の鞘を取り付ける。


「これでいいか。」


鏡のある場所へと移動し、自分の姿を確認する。


「……元の世界だと、絶対にしなかったであろう格好だな。」


苦笑いしながら、自分の格好を見る。若干のワクワク感があり、ベルトやグレイトウルフの防具を観察する。


「……浮かれるのはやめにして早く行こう。」


顔を振り、鏡から離れて部屋の扉へと向かった。









「おやおや、これから外に出かけるのかね?

似合ってるよその格好。」


受付に行くと、おばあさんが声をかけてきた。


「今からリーフと、クエストでも受けようかと思って……あ、鍵預かってもらっても?」


無くすといけないので、部屋の鍵をおばあさんに預ける。


「分かった、預かっておくね。

それにしても、クエストね。知ってるとは思うけど、魔王が出てきて魔物は昔よりも強くなっているから気をつけなさいね。」


「死なないようにちゃんと気をつけるさ。」


「ならいいけどねぇ。」


おばあさんと話しているとそこにリーフがやって来た。


「遅れてしまってすみません。」


ぺこりと頭を下げながらリーフは昨日と同じ格好でやって来た。

ちなみにリーフの格好は、白のインナーに薄黄色のケープを羽織り、緑色のリボンを胸の前で結んで、下は白のミニスカートに、茶色のブーツという、さっきの部屋着のように明るめの格好だ。そして、肩から白のショルダーバッグをかけていた。

明るい色が好きなんだろうか?


「わぁ、ユウキさん似合ってますね!The冒険者って感じです!」


俺の格好に目を輝かせながら、ぱちぱちと手を叩いている。


「あ、あぁ、それはどうも。」


年下に格好を褒められて照れる俺。


「若いねぇ……。」


そして、暖かい目で見るおばあさん。


「も、もう行こうかっ!?」


耐えられなくなり、リーフの手を掴み宿の外へと向かう。


「気をつけなさいな〜。」


「えっ!?あっ、おばあさん行ってきまーす!」


律儀にリーフはおばあさんに手を振り返し、俺に引っ張られるリーフなのであった。









「とりあえずは、魔法の特性と、スキルの習得方法を見てもいいか?」


冒険者ギルドについた俺は、周りを見渡す。

まだ8時過ぎということもあり、そこまで人はいない。

何冊か本が収まっている本棚を確認し、近づきながらリーフに言った。


「はい、大丈夫ですよ。私も見てないから見ようかな?」


リーフの了承も得た事だし、本を手に取り、近くの席に二人で腰をかけて本を開く。


『魔法には八つの属性が存在する。

火属性、水属性、風属性、土属性、雷属性、光属性、闇属性、そして無属性の八つである。

(これらの属性の上位属性については、この本では解説を省くとする。)

ここでは、それぞれの属性に存在する特性を解説していこうと思う。

まずは、火属性魔法。

この火属性は全属性の中でもトップクラスに攻撃力が高いという特性がある。ただし、攻撃力が高い分、火属性は魔法制御力、消費魔力量も全属性の中でもトップというデメリットもある。


次に水属性。

この水属性も火属性と相対する特性を持つ。全属性の中でもトップクラスに防御力が高い。そして、魔法制御力、消費魔力量も高い……が、火属性程ではない。

何故ならば、魔法というものは自分から離れる魔法ほど、制御するのに必要な魔法制御力、そして魔法を放つのに必要な消費魔力量が多いという研究データがある。

火属性は攻撃魔法がメインで、水属性魔法は防御魔法がメインである。それ故に、相手を攻撃するのに遠くへ放つ火属性よりも、自分を守るために自分の周りに放つ水属性の方が、魔法制御力、消費魔力量が少ない。


次に風属性。

この風属性は、魔法発動速度がどの属性よりも速く、魔法制御力、消費魔力量が少ない。

しかし、一つ一つの魔法の効果が低いという特性もある。

防御魔法ではすぐに打ち破られ、ほぼその役目を果たせないため、その圧倒的な速さでの攻撃魔法で相手への不意打ちや、戦況を掻き乱すなどの役目が主である。


次に土属性。

この土属性は、火属性と水属性の関係のように、風属性と対極の特性を持つ。

その特性は、全属性の中でもトップクラスの魔法発動速度の遅さである。

これだけ聞くと、使えない属性だと思われがちだが、魔法発動速度が遅い代わりに、魔法制御力、消費魔力量が少なく、一つ一つの魔法の効果が高い。

この特性は攻撃魔法だと、遅すぎて使えないが(攻撃力は火属性に相当するほど高い)、防御魔法だと、味方が敵の相手をしている間に鉄壁の要塞を作り上げるといったことも出来る。さらに防御力は水属性にも匹敵する。


次に雷属性。

この雷属性は、魔法制御力がずば抜けて低いという特性がある。この特性が意味することは、誰でも簡単に使うことができるということである。

消費魔力量も水属性よりも少なく、魔法制御力が低いという特性も相まって、初心者に大人気な属性である。

さらに、一定の確率で相手をスタン状態にすることも可能である。

(スタン状態とは相手の行動を一時的に封じる状態異常である。魔法の詠唱などをしている場合、スタン状態になると、詠唱がキャンセルされ、また一から詠唱しなければならない。)


次に光属性。

この光属性は回復魔法の回復力が高いという特性を持つ。

さらに、魔物や、悪魔に対して光属性で攻撃魔法を行った場合、火属性よりも高い効果を発揮し、防御魔法を発動した際も、水属性よりも高い効果を発揮する。

しかし、人間や精霊に対して光属性の攻撃魔法、防御魔法は、ほぼ効果を発揮しない。


次に闇属性。

この闇属性は相手にデバフや幻影を見せるといった妨害に特化している。

闇属性の攻撃魔法や、防御魔法が他の属性と比べて少ないが、デバフや幻影魔法の一つ一つの効果が高い。


最後に無属性。

この無属性は他の属性とは違い特殊な属性である。

というのも、魔力を属性に変換させ、さらに魔法に変換させる他の属性とは違い、魔力をそのまま魔法に変換させるという特性が他の属性とは違うと言われる所以である。

この、属性へと変換させるという工程がないため、魔法の詠唱が他の属性よりも少ない。

さらに、他の属性の魔法は詠唱途中でキャンセルする場合、属性に変換させた分の20%の魔力はなくなってしまうが、この無属性は属性に変換させないため、詠唱途中でキャンセルした場合でも100%の魔力が戻ってくるという特性もある。


下に魔法の基本的なステータスの魔法攻撃力、魔法制御力、魔法回復力、魔法制御力、魔法発動速度、消費魔力量でどの属性がどんな順か並べておいた。


魔法攻撃力

火属性>土属性>雷属性>無属性>風属性>闇属性>水属性>光属性(なお、魔物や悪魔に対しては光属性が火属性よりも高い。)


魔法防御力

水属性>土属性>雷属性>無属性>風属性>闇属性>火属性>光属性(なお、魔物や悪魔に対しては光属性が水属性よりも高い。)


魔法回復力

光属性>水属性>無属性>風属性>火属性=土属性=雷属性=闇属性


魔法制御力

雷属性>風属性=土属性>闇属性>無属性=光属性>水属性>火属性


魔法発動速度

風属性>雷属性>闇属性>水属性=光属性=無属性>火属性>土属性


消費魔力量

風属性=土属性>雷属性=無属性>闇属性>光属性>水属性>火属性』


「……魔法をキャンセルした場合、100%の魔力が戻ってくる……か。」


一通り最後まで目を通した俺は、無属性のもうひとつの特性を口にする。


「まず、詠唱をキャンセルする場合があるのか謎だな。」


「んー、こっちが魔法を発動しようとしたら相手のほうが速くて攻撃を回避するために詠唱をキャンセルする!っていう場面とかですかね。この特性が生きるのは。

あと、詠唱途中で別の魔法を使わないといけなくったとか……。」


「そこそこ使い道はあるな。……真・無属性じゃなくても出来ることだけど。」


やっぱり真・無属性を受け取らなければよかったかなぁと思い始めてしまった。

まぁ、もらったもんは返すことも出来ないし、何とかして無属性だけでも戦えるようにしよう。


「まぁいい。次にスキルの習得方法見てみようか。」


スキル習得本と書かれた本を撮ってページを開く。

スキルは、魔法の補助をしたり、ステータスを一定時間上昇させたり、連続で魔法を出すことが出来たりと様々な種類があった。

ただし、強力なスキルほど習得難易度が高く、中には上級魔法を〜個覚えるといった、今の俺では絶対に達成できない習得条件もあった。


「なかなか習得方法が難しいな。」


「そうですね……あ、これとかどうですか?」


リーフが一つのスキルを指さした。


詠唱省略(小)

初級魔法の詠唱を一節にする。

魔法制御力をE+にすることで習得可能。


「確か、ユウキさんの魔法制御力って今Eでしたよね?もうすぐでこのスキル習得出来ますよ!」


「おぉ、これを習得出来れば、今まで以上に戦いやすくなるな。」


初級魔法だけという制限があるものの、たったの一節で魔法を撃てるのは嬉しい。


「あと、簡単に習得できそうなのは、これですかね?」


デュアルアクション(初級、中級、上級、超級)

一度の詠唱で二回連続で同じ魔法を使用することが出来る。


対象が初級魔法の場合、二回同じ初級魔法を連続で使って魔物を10体倒すと初級を習得可能。

対象が中級魔法の場合、二回同じ中級魔法を連続で使って魔物を100体倒すと中級を習得可能。

対象が上級魔法の場合、二回同じ上級魔法を連続で使って魔物を500体倒すと上級を習得可能。

対象が超級魔法の場合、二回同じ超級魔法を連続で使って魔物を1000体倒すと超級を習得可能。


「デュアルアクションの初級なら、いけそうだな。」


同じ初級魔法を二回連続で使って魔物を10体倒すという緩い条件のため、なんとか習得できそうだ。


「とりあえずは、今回のクエストでは、魔法防御力の上昇、魔法制御力を上昇させて、詠唱省略(小)を習得できるようにすること、あとは出来ればデュアルアクションも習得出来るようになりたいけど……10体倒すのが条件……いけるかな?」


「スライムみたいな弱い魔物でも大丈夫みたいなので、いけなくもないんじゃないですかね?

私は、魔法攻撃力と魔法防御力の上昇をとりあえず目標にします。」


「それじゃ、前衛は俺が最初にやるから後ろから攻撃魔法を撃ってくれ。後半は逆にして、俺が後ろから攻撃魔法を撃つよ。」


こうすれば、前衛で敵の攻撃を防御魔法で耐えることで魔法防御力を鍛えられる。

それに、後衛で魔法を使うことで、リーフは魔法攻撃力とついでに魔法制御力が鍛えられ、後半で入れ替えれば、俺も同じく魔法攻撃力と魔法制御力が鍛えられる。


「そうですね、あまり攻撃と防御は自信ないけど頑張ります!」


胸の前でギュッと手を握りしめ、リーフは気合を入れた。


「よし、そうと決まれば、クエストを受けようか。


二人でクエストの紙が貼ってある壁を見ながら、どれにするか悩む。

昨日のリーフが受けていた、ヒーリンソウの収集や、魔物を討伐するといった依頼が多い。


「個人的には、ゴブリンの討伐がいいと思うんだけどどうだ?ゴブリン討伐ついでにスライムを見つけたらデュアルアクションの習得を狙うって感じにしたいんだが。」


一番ランクの低いスライムの討伐依頼はなかったため、次にランクの低い、ゴブリン討伐の紙を剥がして見てみる。

ちなみに報酬は1万5000ギルだ。

リーフが昨日受けていたヒーリンソウのクエストよりも高額なのは、魔物と戦うクエストで命の危険があるからだろう。


「ゴブリンを10体討伐ですか。一人だと厳しいと思いますけど、二人なら大丈夫でしょうね。

これでいきましょう!」


ゴブリン討伐に決めた俺達は紙を持って受付に向かい、職員に話しかける。


「ゴブリン討伐の依頼を受けたいんだが。」


「はい、分かりました。紙とお二人のギルドカードを提示してください。」


言われた通りにギルドカードを取り出し、紙と一緒に手渡した。

そして、ギルドカードを何度かタッチして、ギルドカードのみ返される。

ギルドカードを見ると右上にはゴブリン討伐と書かれており、その下には現在の進捗状況が表示される。

今は0/10となっている。


「ゴブリンを一体倒す事にその進捗状況に書かれている数字が増えます。

お気をつけて行ってらっしゃいませ。」


「ありがとうございます。」


さてと、初めてのクエストだけど、ちゃんと達成できるか不安だが、同時にワクワクもする。


「リーフ頑張ろうぜ。」


「はい、頑張りましょう!」

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