第6話 ステータス
「あはは、ごめんね話長くて。」
苦笑いを浮かべるべシール。
やばい、そういえば心見透かされてるんだった。
「気にしないで、皆からも話長いって言われてるんだ。ごめんね?」
「大丈夫さ、最後までちゃんと聞くよ。」
どっちにしろ、この脳にある記憶以外のことは何も知らないんだから最後まで聞くしかないんだ。
「そう思ってくれて助かるよ。さて、次はステータスについて話そう。この世界の全ての生物にはステータスというものがある。ステータスはその生物の強さを分かりやすく表してくれるんだ。このステータスは心の中でステータスと念じると頭の中に自分のステータスが表示されるんだ。やってみなよ。」
べシールの言う通りに心の中でステータスと念じてみる。
すると……
ユウキツキモト(17)
魔法使い 得意属性【?】
魔法攻撃力 F
魔法防御力 F−
魔法回復力 F
魔法制御力 E−
魔力回復速度 E−
魔力量 E
Fランク
スキル欄(2)
スキル
なし
「おお、凄いほんとにでた。」
頭の中にはっきりと自分のステータスが表示された。
「うん、ちゃんと自分のステータスを見ることが出来たみたいだね。僕には見えるけど、本来ならステータスは人には見えないものなんだ。まぁ、冒険者ギルドとかでギルドカードを作る時とかに見られる時もあるけど。」
「冒険者ギルドあるのか。」
ライトノベルで見たことが多々ある。
俺も異世界で何度冒険者ギルドに入って依頼を受け、魔物達を倒して報酬を貰う……一連の流れをよく妄想したものだ。
「はは、冒険者ギルドは大抵の人なら所属できるからユウキも冒険者ギルドに所属するといいよ。
よし、それじゃあステータスの紹介でもしようか。
まずは、名前と年齢ね。これは分かるでしょ?」
「もちろんだ。」
俺の名前と年齢が1番上に表示されている。名前が月本勇気になっていないのは漢字という概念がないからだろう。そして、俺の年齢もちゃんとあっている。
「その下から分からないな。」
一般的な知識は脳に入っているはずなのだが、ステータスに関しては入っていなかった。
この世界にいる生物全てにステータスはあるようだから一般的な知識だと思うのだが……
「それは、どうせ説明するから別の知識を入れようと思って入れる候補から外したからだよ。」
「なるほど。」
「続いて、この魔法使いと得意属性【?】についてだね。魔法使いは産まれながらに存在する職業で、この世界には魔法使いの他に戦士、魔法戦士って言う職業があるんだ。魔法使いは言わずもがな魔法を使えて、戦士は戦技って言う魔法とはまた別の方法で、魔法戦士は魔法と戦技両方を使うことが出来るんだ。
それぞれの職業に個性があって、魔法使いは魔力が多い代わりに戦士よりも体力と筋力が低く戦技を使えない。戦士は魔力が少ない代わりに体力、筋力が高く魔法を使うことが出来ないんだ。
魔法戦士は魔力も体力も筋力も魔法使いと戦士の中間のステータスを持ってるんだ。」
「俺は魔法使いだから魔法を使えて戦技は使えない……。そして体力と筋力が少ないのか。」
自身の魔法使いと書かれているステータスを見ながら呟く。
「そうだね、でも体力が少ないっていっても元の体よりは遥かに多いからね?しかも、魔法使いって言うのは産まれた時から魔力を無意識に僅かに体に纏っていて素の状態でも体力も筋力もあまり戦士と変わらないんだ。でも、魔力がすっからかんになると魔力で体を強化できないから体力も筋力もものすごく少なくなる。戦士は元々体力や筋力が高くて魔力にあまり頼らないから例え魔力がすっからかんになっても大して疲れないんだ。魔法戦士は体力も筋力も中間くらいあって魔力を全て使ってもそこそこ疲れる程度だね。
そして、魔法使いの次に書かれている得意属性って言うものだけどこれは魔法使いなら誰でも産まれながらにして火属性、水属性、風属性、土属性、雷属性、光属性、闇属性のどれか1つが得意属性に選ばれるんだ。この得意属性はEランクになると解放されて自分がどの属性なのか知ることが出来る。
そして、得意属性が解放されるとその属性の魔法を他の属性よりも覚えやすくなったり、魔法の効果が高くなったりと色々な恩恵があるんだ。」
「じゃあ、俺もEランクになると得意属性が解放されるのか。」
どの属性になるのかなと思っていると……
「いや、君の得意属性は僕がもう決めているんだ。それにEランクに到達していないけど稀に加護持ちっていって産まれた時から得意属性が解放されている者もいるんだ。火の加護、水の加護みたいな感じでね。加護持ちは通常の得意属性よりも効果が数段上で加護持ちのみが許される奥義、魔法創造を使用できるんだ。」
「魔法……創造?」
魔法を作り出せるってことか……。
「そう、通常0から魔法を作るには長い年月をかけて大勢の魔法使いの叡智を振り絞って作るんだけど、その加護の属性のみで1度のみだけど加護持ちは魔法を作ることが出来る。もちろんなんでも自由にとはいかない。それぞれ加護持ちには魔法作れるリソースが決まっているんだ。だからどんな敵も1発で倒せる魔法!とかも作れる人はなかなかいないんだ。まぁ、この魔法創造で作り出した魔法は魔力を消費しないっていう最大の利点があるからできるだけ強力な魔法を作った方がいい。」
「俺にその加護をべシールが与えてくれるのか?」
「そうだよ、しかも君には無の加護を与えよう!
魔法創造のリソースは多めにしておくよ。
7つ目の属性、無属性は通常の得意属性では持っている人がいなくて、加護持ちしか無属性が得意属性の人はいないんだ。
しかも、無の加護は加護の中でも特に強力で8つ目の属性を使用できるんだ。」
「8つ目の属性ってなんだ?」
「それはランダム。色んな属性からランダムで選択されるんだ。今人間界にいる無の加護を持っている人だと、重力属性とか、魔法の糸を操る操糸属性とかだね。ちなみに君の無の加護の効果は全ての属性の魔法を無属性に変化させる効果を持つ真・無属性だよ。」
いやそのまんまやんというツッコミを放棄し、全ての魔法を無属性にするメリットを思考する。
ちなみに7つの属性の効果も記憶にある。
魔法の属性にはそれぞれ固有の特性がある。
火属性は攻撃力が高い、水属性は防御力が高い……などだ。
そして無属性魔法の特性は他の属性よりも詠唱が短いというものだ。
魔法を使用する際には詠唱が必要なのだが、この無の加護により、全ての魔法を普通の人よりも魔法の詠唱が短く、早く魔法を使えるということになる。
……が、全ての属性の魔法が無属性になるということは他の属性の特性を発揮することが出来ないことになるんじゃ?
「そうだね、例えば火属性の魔法、ファイアは火属性の特性により攻撃力が高いけど、君が使うと詠唱は短いけど元のファイアよりも攻撃力が低くなるんだ。しかも、この真・無属性の効果は全ての魔法に強制的に発揮されるから君は無属性以外の魔法を使えなくなる。」
「マジか……でも、魔法創造の効果も魅力的なんだよなぁ。」
明らかにデメリットな効果を持つ加護。
無属性しか使えない……が、それでも魔法創造の効果に魅力を感じる。1度だけだが、どんな魔法でも作れて魔力を消費しない。
どんな魔法を作るかにもよるが、リソースも多くしてくれるみたいだし相当強力な魔法を作ることが出来る。
……よし
「分かった、俺に無の加護を与えてくれ。」
俺は無の加護を受け入れることにした。
「ありがとう、この無の加護が将来きっと君の役に立ってくれるだろう。ほいっ……と。」
べシールは俺の額に人差し指を押し当て魔力を流す。
すると、ステータスにEXスキルと書かれた欄が追加され、そこに無の加護の字が追加された。
「知ってると思うけど、EXスキルっていうのは特定の人しか持つことの出来ないスキルのことだね。」
ついでのようにべシールが解説してくれる。
「よし、次は魔法攻撃力、魔法防御力、魔法回復力、魔法制御力、魔法回復速度、魔力量についてだ。」
「何となく想像できるけどな。」
「だいたいユウキが思っている通りだと思うよ。
ステータスはG−−から最大SSS++まであるんだ。
魔法攻撃力は攻撃魔法を使用する際に必要となるステータスだよ。このステータスが高いほど攻撃魔法の攻撃力が高くなる。魔法にもそれぞれステータスがあるんだけど……見た方が早いね。この魔法はさっき例に出したファイアのステータスだよ。」
ファイア 初級魔法
攻撃力 F+
魔法制御力 F-
消費魔力量 F
射程 F-
魔法発動速度 F
脳内にファイアのステータスが表示される。
「この通りファイアの攻撃力はF+だけど魔法使用者の攻撃力が高いとその分攻撃力が高くなる。
魔法攻撃力だけじゃなくて魔法防御力、魔法回復力もそれぞれ防御魔法、回復魔法を使用した際、ステータスが高いと、魔法がかなりの効果を発揮してくれるんだ。」
「つまり今の俺が魔法を使っても……?」
「かなり効果は低いってこと。まぁ、最初は皆ステータス低いからしょうがないよ。
次に、魔法制御力だ。このステータスは使用する際に必要となるステータスだよ。さっきのファイアのステータスに魔法制御力っていうステータスがあったでしょ?魔法の全てに魔法制御力のステータスがあるんだけど、その使用する魔法の魔法制御力と同じ、またはそれ以上に自分の魔法制御力がないと魔法自体が発動しないんだ。
しかも、自分の魔法制御力が使用する魔法の魔法制御力と同じか少し上程度のランクだとかなり意識を集中させないとちゃんと魔法が使えないんだ。
だから、この魔法制御力っていうステータスはとても大事で高ければ高いほどいいんだ。」
俺の魔法制御力はE−大抵の初級魔法は使えるが、かなり意識を集中させないとダメってことか。
ちなみに魔法は初級、中級、上級、超級、神級に分けられ、いちばん簡単なのが初級魔法、いちばん難しい魔法が神級魔法だ。神級魔法は今のところ神以外に使える者がいないらしい。
「そして、次に魔法回復速度だ。これは神界に来た時に説明した大気に含まれるマナを体に取り入れる際に必要なステータスだよ。この世界の生物の心臓の隣にはマナを魔力に変換する器官があるんだ。その器官をマナ変換器官って言うんだ。体を交換した時にこれは言ったけどね。で、魔法回復速度はこのマナを魔力に変換する速度を表すんだ。
このランクが高ければ高いほど魔力の回復速度が早くなる。
最後に魔力量。これはその人の持つ最大魔力量を示すものだよ。
そして、以上の6つのステータスを合計してランクが決まるんだ。んで、一定のラインを超えるとランクが上昇する。ランクは一番低いのがGランク、一番高いのがSSSランクだよ。」
現在の俺のランクはFランク。下から2番目でお世辞にも高いとは言えない。
「後から器の欠片を与えるから少しはランクが上がるはずだよ。器の欠片は体内に取り込むんだけど、取り込んでいる間はずっとステータス上昇の効果が持続するからある程度の強さは確保できるはずだよ。
最後にスキルについて説明するね。スキルって言うのはステータスを上昇させてくれたり、戦技や魔法の効果を上昇させたりと、色々とサポートしてくれるもののことだよ。スキルごとに習得条件があってその条件をクリアすると習得できるんだ。
そして、スキルはスキル欄にセットすることで使用することが出来る。セットできるスキルの数はランクによって異なるんだ。
Gランクは1つまで、Fランクは2つ、Eランクは3つ……というふうにね。
スキルとは別でEXスキルというスキルがあるけどそれはスキルとは扱いが別で、セットできる数に制限がないんだ。だから、EXスキルは持っていれば持っているほどいい。まぁ、さっきも言った通り、特定の人しか習得できないけどね。」
「じゃあ俺はEXスキルの無の加護とあと2つスキルをセットできるってことか、スキル持ってないけど。」
「スキルの習得条件教えることも出来るけど、数が多いし、後から君を転移させる場所の辺りには器の欠片だけでも対応出来るから大丈夫だと思うんだけど聞く?」
「いや、大丈夫だ。自分で習得条件を探すよ。」
自分で探す方が楽しいだろうし、数が多いならどうせ覚えきれないだろうしなと呟く。
「まぁ、ある程度のスキルの習得条件は色んなところにある図書館の本にのってるし、冒険者に聞けば教えてくれる人もいるだろうしね。」
「そう簡単にスキルの習得条件教えてくれるのか?」
「教えてくれない人もいるけど、教えてくれる人もきっといるはずさ。
さて、ステータスについては以上だね。
最後にこの器の欠片を与えようか。」
ニコリと笑ってべシールは箱の中にある器の欠片を取り出す。
「神の欠片にはそれぞれ別のステータスに特化しているという特性があるんだ。
力の欠片、守護の欠片、癒しの欠片、知識の欠片、自由の欠片、そして器の欠片……僕の持つ器の欠片は魔力量に特化しているんだ。だからこの器の欠片を取り込んだら魔力量が結構上昇するんだ。他のステータスも上昇するけどね、魔力量が上昇の幅が1番い。
この器の欠片に意識を集中させてみて。」
べシールが器の欠片の1つを俺の目の前に持ち、俺はその器の欠片に意識を集中させる。
器の加護
器の神べシールの力の一部を秘めたもの。1度目に器の欠片を砕いた際ステータスが上昇する。上昇するステータスは器の欠片によって異なる。
2回目以降砕いた際は神気解放状態となり、器の権能を使用することができる。器の加護以外の権能を使用する際は目が紫色へと変化する。また神気解放状態になると追加でステータスが上昇する。
神の欠片は神気解放時に大ダメージを受けることで体からランダムで排出されるが、この器の欠片は最後の1つになるまで体から排出されない。
この欠片がなんらかの効果で一番最後ではない場合に排出された場合全ての器の権能が使用できなくなり、ステータスも通常状態に戻る。
しかし、再度砕いた場合ステータスが上昇し、器の権能も使用可能になる。
神気解放は器の欠片1つにつき、1分30秒
また、神属性を神気解放時は常時魔法に付与される。
ステータス上昇値
魔法制御力+1 魔力回復速度+1 魔力量+2
+以下のステータスが、追加で上昇する
神気解放時に追加されるステータス上昇値
魔法制御力+1 魔力回復速度+1 魔力量+3
「これは……この器の欠片を砕いた時の効果か?」
「そうだよ、この器の欠片に封じられた器の権能は他の器の権能を使用するためのカギ的な役割を果たす権能だ。全ての神の欠片にこの効果と同じ欠片が存在していてこの欠片の効果は神気解放状態にならなくても常時発動しているものなんだ。そして複数器の欠片を持っている時に神気解放状態に大ダメージを受けると器の欠片が体からランダムで排出されるんだけどこの器の欠片は最後の一個になった時に排出されるんだ。でもなんらかの効果でこの効果が無効化された時は他の権能を使うことが出来ないから注意してね。
もう一個の器の欠片も見て。こっちはちゃんと役に立つ器の権能が封じられているから。」
もう片方の器の欠片を見せる。
マジックシェア
自身の魔力を他の者に譲渡することが出来る。ただし身体の一部が触れていなければならない。魔石の魔力を取り込んだときと違い、魔法の効果と魔力制御力が低下することは無い。
ステータス上昇値
魔法回復力 +1 魔力量+3
+
神気解放時
魔法回復力+1 魔力量+2
「魔力を渡す能力か。これ1人の時だと意味は無いよな。」
「そうだけど、きっと誰かと一緒に戦う場面もあると思うしそういう時に役に立ってくれるはずさ。」
「あと、この魔石がどうたらって効果はなんなんだ?」
「この世界には魔力を回復するには魔石って呼ばれる魔力を溜め込んだアイテムを砕くんだ。それで魔力を回復できるんだけどその魔石の魔力は自分自身の魔力じゃないから、魔法の効果……攻撃魔法なら攻撃力、防御魔法なら防御力が1段階低下して自分のステータスの魔力制御力が1段階低下するんだ。この効果は吸収した魔石の魔力を全部使い果たさないと無くならないからユウキも魔石を使う時は気をつけてね。
んで、ユウキが他の人にこのマジックシェアを使って魔力を回復させた時、その回復させた魔力はユウキの魔力であって、その人自身の魔力じゃないけど、魔法の効果の低下も、ステータスの魔法防御力の低下もないよってことだね。」
「なるほどな。」
「それじゃあこの2つの器の欠片を取り込んでもらうよ。はいこれを持って魔力を手に込めてー。」
べシールが俺の両手に器の欠片を持たせる。
「魔力を手に……こうか?」
魔力の扱い方が脳に入っているからかすんなりと魔力を手に宿らせることが出来た。
「そうそう、そして力を入れて砕くんだ。」
「よっ……と。おお?」
言われた通りに手に力を入れると、パキンと音を立てて器の欠片は粒子となる。そして、俺の体に吸い込まれていった。
「……すごいな、力が沸きあがる。」
「ステータスを確認してみなよ。今のでステータスが上昇してるよ。」
俺は自分のステータスを見ることにした。
ユウキツキモト (17)
魔法使い 得意属性【無】
魔法攻撃力 F
魔法防御力 F−
魔法回復力 F+
魔法制御力 E
魔力回復速度 E
魔力量 D
Eランク
スキル欄(3)
スキル
EXスキル
無の加護(真・無属性)
器の欠片(2)
器の加護
マジックシェア
「FランクからEランクになってるな。」
さっきと比べて魔法回復力、魔法制御力、魔力回復速度が1段階上昇し、魔力量に至っては5段階も上昇している。それに無の加護もついているし、EXスキルの下には器の欠片と器の権能も見れるようになっていた。
「うん、ちゃんと反映されているようだね。
ちなみに器の欠片と権能については他の人には見られないようになっているんだ。」
「それはまたどうしてだ?」
「それは、転移させる予定の国の王様の性格が酷くてね。その王様の耳に神の使徒が現れたなんて入ったら多分いいように使われるから誰にも分からないように隠蔽したんだよ。」
「それじゃ俺は権能とか使う時は人前でやらない方がいいのか?」
「まぁ、そうなるね。どうしても使うと言うなら信頼できる人の前でのみにしておくべきだね。下手に人目のある場所で神気解放してその情報が国中に回っても厄介だからね。せめてもう1人使徒が見つかるまでは見つからないで欲しい。そうすればこっちで何とかなるから。」
そもそもそんな王様のいる国に転移させないという選択肢はないのだろうか?
「別の場所にしたいのはやまやまなんだけどそこの辺にいる魔物は比較的弱いから今のユウキのステータスで戦闘に慣れたりステータスを上昇させるのに一番いい場所なんだよ。近くに冒険者ギルドがある、初心者の冒険者が多い街、ビギシティがあるのも理由だよ。もうすぐ転移させるけど、周りの人に見られないように少し離れた場所にするから少し歩いてもらうよ。」
「だいたいどのくらい歩くんだ?」
「1時間くらいかな、転移させたところから目に見える範囲に1つ大きな木があるからその木の方向にずっと歩いていけばビギシティに着くはずだよ。途中で魔物と会うかもしれないけどさっきも言った通りその辺にいる魔物なら倒せるはずだよ。あと、これは宿代とかアイテムや装備を買うお金だよ。」
べシールはどこからともなく小さなちょうどポケットに入るくらいの麻袋を取り出し俺に渡す。
「ありがとう。」
感謝の言葉を言って俺はポケットに麻袋を入れる。
「どういたしまして、少なくとも数日はそのお金で生活出来るはずだよ。あとは、冒険者ギルドで依頼を受けたりすればお金は手に入るから頑張ってね。
よし、伝えたいことはこれで全てだ。
もし、ユウキが早く行きたいのであれば今すぐにでも転移させることができるけど……どうする?」
「今すぐ行くよ、別に体を動かした訳でもないから疲れてる訳でもないしな。」
俺はワクワクしながら席を立つ。
「よし、それじゃ君を転移させるよ。ちょっと待ってね。」
そう言いながらべシールが指をパチンと鳴らす。
すると、床に紫色の魔法陣が出現する。
「これは君を転移させるための魔法陣だよ。この神界と人間界は時間の流れと空間が違うからこの魔法陣がないとぐしゃぐしゃになって安全に送れないからね。その魔法陣の上に乗って。」
俺は言われた通りに魔法陣の上に立つ。
「それじゃ、今から転移させるね。
とりあえず人間界では他の使徒が揃うまで、神の欠片の回収、ステータスの上昇を中心にやっておいてくれ。強力な魔物や悪魔、そして魔王の討伐は他の使徒が来てからでも構わないからね。」
「了解した。ありがとうな、いろいろと教えてくれて。
そして俺を夢の異世界に連れてきてくれて。」
もし、べシールが俺を連れてきてくれなかったら……俺の人生はどうなっていたのだろうと少し考える。きっと退屈な人生だったんだろうなと自問自答し、苦笑いをうかべる。
「どういたしまして。君にはこれから様々な困難が待ち受けている。でも君ならきっと乗り越えることが出来るはずだ。
器の使徒ユウキツキモト、君の活躍を願っているよ。」
その言葉を最後に魔法陣が光を放ちながら起動し、俺は転移した。
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