第5話 器の欠片

「お待たせ……て何してるのユウキ。」


べシールが部屋を出ていってから5分ほどたち、コーヒーを飲みながら窓から神界を見ていたところに紫色の箱を片手に持ってべシールが帰ってきた。


「いや、景色いいなぁって思って外を見てただけだ。」


綺麗な花々や川がちょうどこの窓から見えたためつい見入ってしまっていた。元の世界では自然には全くと言っていいほど興味がなかったが、不思議と惹き付けられる。


「そう……精霊界や人間界も少し劣るけどこんな景色が見れる沢山あるんだ。君にもこの世界を好きになってもらいたいな。」


べシールがそう言いながら席についたため、俺も元の場所に戻る。


「それで、べシールから力を与えられるって話だがその持ってきた箱がなにか関係するのか?」


机の上に置かれた紫色の箱を見る。


「正解だよ。これが君に与える力だ。」


べシールはニコリと笑い、箱を開ける。


「これは……なんだ?なんかとてつもなく凄いものっていうのは何となくわかるけど。」


箱の中に入っていたのは手のひらサイズよりも一回り小さい紫色の器だった。

そう、あの丸くて上の部分が空いてる器、それのちっちゃいやつ。それが2つ。


「これは、器の欠片って言うんだ。この器の欠片を魔力を込めながら砕くと力が手に入る。

具体的に言うと、ステータスの上昇、神の使徒のみが使用出来る神の力、通称権能の使用、器の欠片の防具への変化、神気を魔法に纏わせるようになることによる魔物、悪魔、魔王への魔法の強化、こんなところかな。

この器の欠片は……というか他の神にも器の欠片みたいに力を与える欠片、通称神の欠片があるんだけど、最初の1回目に砕く時と、2回目以降砕く時で効果が違うんだ。1回目に砕いた場合はステータスが少し上昇するんだ。2回目以降で砕く時は1回目に砕いていることが条件で、体に取り込んだ状態で器よ、来いって念じると体からこの器の欠片が飛び出してくるんだ。そして、再度魔力を込めながら砕くと、粒子状に一旦なって防具となって君に纏わるんだ。ちなみにこの神の欠片でつくられた防具は結構相手からのダメージを防いでくれるから便利だよ。まぁ、この防具への変化はおまけ程度の効果と思ってくれていい。1番の目玉は僕たち神の力の一部、神の権能を行使できることにあるんだ。この神の欠片1つ1つに権能が1つ封じられていてその権能を使用できるんだ。

そしてまだ効果はあってさらなるステータスの上昇効果。1回目に砕いた時に発生するステータス上昇とは別でステータスが上昇するんだ。つまりステータス上昇の効果は重複しないんだ。

そして、最後に魔法に神気を纏わせることが出来る。神気はこの神界にしかないものだけど、この神の欠片に神気が宿っているんだ。2回目以降神の欠片を砕いた時に常時魔法に神気が纏わり、魔物、悪魔、魔王に対しての攻撃魔法なら攻撃力が、防御魔法なら防御力が1.5倍になるんだ。

以上が神の欠片を砕いた時に与えられる恩恵だね。ちなみにこの2回目以降神の欠片を砕いたときのことを状態を神気解放状態っていうんだ。」


長々とした説明が終わる。


「いや、強すぎじゃないかその欠片の効果……。」


説明を聞き終えた俺の第一声がそれだった。


「そう思うでしょ?でも、こんなにメリットがあってデメリットがないわけないよね。

神気解放状態は制限時間があるんだ。神の欠片1つにつき1分30秒までしかさっき言った防具への変化、神の権能の行使、さらなるステータスの上昇、魔法への神気を纏う状態これらの効果は発動しないんだ。

だから、神の欠片を砕いて常時発動している効果はステータスの上昇くらいなんだ。

まぁ、一部の権能は神気解放状態じゃなくても弱体化した状態で使えるものもあるけど。

今器の欠片は現状この2つしかないから君は3分しか神気解放状態になれないんだ。」


「3分たった後にまた再度欠片を砕くことは出来ないのか?」


多分そんな美味しい話はないんだろうなぁと思いつつ質問してみる。


「神気解放状態って言うのは生身の人間に神の力を与える行為だ。そんな強大な力を連続して使えばもちろんデメリットがある。

まず神気解放状態が終わると6時間の間ステータスが半分になるんだ。

そして6時間たたずに再度神気解放状態になるとステータスは上昇するけど最初の元のステータス+神気解放状態のステータス上昇から元のステータスの半分+神気解放状態のステータス上昇と一気に弱体化するんだ。ちなみにこうやって6時間たたずに神気解放状態になって神気解放状態が終了した後だと3日たたないと元のステータスに戻らないんだ。ちなみにステータスは5分の1まで低下する。

そして、そこから3日たたずに神気解放状態になると神気解放状態が終わると死に至るんだ。だから、この神気解放状態って言うのは使いどころがかなり重要なんだよ。」


やはりというかなんというかとんでもないデメリットが存在したな。


「3分しか神気解放状態になれないってのがなぁ。」


まだ権能というものも見ていないが、それ以外の効果が強すぎるからおそらく権能もそれ相応に強いものだろう。

しかし、それを使用できる神気解放状態がたったの3分しかないというのはちょっとなぁ……


「器の欠片は2つだけじゃないよ?」


その告白にいや他にもあるのかよっ!?というツッコミたい気持ちを抑える。


「元々この神の欠片は神界にあった封魔の祠って言う建物の一部なんだ。

封魔の祠は人間界での強力な魔物の発生を防ぐ効果があったんだ。それを狙って魔王は復活した時に悪魔と協力してこの神界に来て封魔の祠を壊したんだ。

世界を移動できる悪魔と共にね。」


「なに、その世界を移動できる悪魔って?」


「たまにいるんだよ、常識外れな能力を持った生物って。でも、その悪魔はステータスが弱く、封魔の祠を壊すほどの力を持っていなかった。元々封魔の祠自体がかなりの強度があるからね。それこそ魔王以上の生物が全力で攻撃しない限り……。

だから、今まで警戒してなかったんだけど盲点だったよ。魔王が復活してからすぐっていうのもあるけどまさかこんな風に封魔の祠が壊されるなんて。

封魔の祠は僕たちの神の力を凝縮して作ったものなんだ。だから壊された時に大爆発して世界を越えてさまざまなところに飛んでいってしまった。

で、器の欠片はここにある2つだけ回収出来たってこと。」


器の欠片を指差す。


「なるほど、ちなみにこの欠片はいくつあるんだ?


「さあね、爆発した時にいくつに砕けたのかは分からない。でも、そんなに多くはないと思うんだよね。この神界と精霊界をくまなく探しても15個しか無かったし。もしかしたら人間界、魔界、邪神界にたくさん飛んでいってしまったのかもしれない。

だから人間界に飛んでしまった神の欠片を見つけたら持っておいて欲しいんだ。器以外の欠片もね。

そして、他の使徒が誕生して合流した時に渡して欲しい。」


「分かった。一体いくつあるのか分からないが見つけたら確保しておこう。」


「ありがとう、それじゃ次はステータスの話をしようか。」


ステータスの話へと移行する時俺は思った。



話長いなぁと……。


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