第18話 失敗する団体様
だが。
ガチャガチャと激しく取っ手を引こうが押そうがビクともせず、ついに城門を打ち破るための太い角棒を持ち出して兵たちに当たらせたが、まるで岩石にぶち当たったかのように先端は砕け散ってしまった。
「なっ、何をしておる!たとえ角棒といえど我が国の重要な兵器の1つ!だ、大事にせんかぁっ!!」
「もっ…申し訳っ……」
だがあるはずの隙間に刃をたててこじ開けようとすれば剣は折れ、火を付けようとすれば炎自体が滑ってカーペットに着火した。
慌てて消火に走れば今度はバキバキと音を立ててその炎ごと扉が凍り付き──その範囲は天井に及ぶ。
しかもその勢いは止まず──
「たっ、大公様っ!」
「うひゃぇっ?!」
扉の前に陣取っていた兵たちが慌てて飛び退ったカーペットが白い煙を湧き立たせながら凍っていき、あっという間に呆然としていたガウシェーン大公の煌びやかな大靴までも床に凍り付かせた。
おかしな悲鳴を上げた大公を救うべく、後ろに控えていた護衛が慌てて脇を支え引っ張り、靴を残してだらしない肉を纏った大男はズルズルと廊下の端まで引き摺られていく。
「こっ、今夜は、し、静かに未来のっ、妃たちをや、休ませよっ」
「はっ、ははっ」
引き攣った命令に、同じく引き攣った、しかし安堵に満ちた声で返事が上がる。
そうして這う這うの体で公国の者は逃げ去ったが、その様子を窺い見る目が複数あったことを気付くことはなかった。
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