第11話 責任は取りかねます
身重の妻の椅子を引くアディーベルトも、自分の主人であるロメリアから発せられる気に飲まれてガチリと固まる。
「……姫様を気遣う第二王子殿下に感謝なさって?あなた」
「………はい」
他の誰にも聞こえない小声で発せられる低いトーンにさらに固まりながらも、アディーベルトはホムラの腰を支えながら差し出す手を取った。
「
「あっ、ああ。そうだな。うん。我々も休むこととしよう」
何だかうまく言いくるめられた気もしないではないが、ヴィヴィニーアもロメリアの提案に反対する理由はない。
慌てふためいて周囲の招待客がアレコレと大公の様子を伺うが、ダーウィネット属王国一行だけは意にも解せず、
──が。
「おっ、お待ちください!!」
当然ながら、ロメリアは呼び止められた。
ガウシェーン公国マレク・デミアン・ガウシェーン大公が吹っ飛ばされたのは、自業自得であるとはいえロメリアの仕業とも言える。
ましてや彼女は今回選ばれるはずの、未来の大公夫人を祝福するために呼ばれたはず──であれば大怪我をさせた詫びとして、当の大公殿下を完全に治癒する義務があるはずだと、声を震わせながら訴えたのは、この国の宰相であるファンカシーア侯爵だった。
「……確かに大公殿下がこのような歓迎の場で、何かしら刺客などに襲われて負傷されたのならば、わたくしとて治癒するにお手を貸すことも考えないではないですが」
「でっ、ではっ………」
「残念ながら、婚約者の目の前でわたくしの身体に触れようとするような下劣な輩に施す慈悲など、わたくしは持ち合わせておりませんの」
「ひぇっ……し…しかしっ……」
「
意味はある。
大公という最高地位にある者を吹っ飛ばしたのは、他ならぬダーウィネット属王国から招かれた大聖女自身である。
だがその言葉を投げかけるにはあまりにもロメリアの表情は冷たく、確かに利己的な振る舞いで自分の大切な婚約者に手を触れようとした
そしてこのバカバカしい傷害事件とその回収劇を見せられている周囲の者は、主役級のダーウィネット属王国第二王子とその婚約者が従者夫妻を引き連れて迎賓館に用意された居室へ向かうと、本来のパートナーと共に自分たちも辞すると小声で挨拶し、気絶したまま床に伸びる大公を介抱する者たちと呆然としたまま動けないエミリア公女だけが冷めた料理と共に大広間に残された。
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