第56話 お披露目へ向けて

それから1ヶ月が経ち、国から正式にローズと私が『二人の聖女』の生まれ変わりと女神様からご神託があったと発表された。闇魔法についても、正しく認識されるように説明がつけられる。


同時に、ハルト様と私の婚約も発表された。国民の皆様は、2つの慶事に大盛り上がりだ。ありがたいです。


そして聖女のお披露目式は二週間後。準備に大忙しだ。



「ローズ、エマ!ドレスが仕上がったわ、試着して!お直しがないか、確認しないと!」



そして今、ローズと私はドレスが仕上がったとの連絡を王妃様から受けて、王城に来ている。


私達のドレス姿は内緒!と、今日はハルト様もジークも、何と陛下まで出入り禁止だ(ハルト様は最後まで粘り、お二人に引きずられて行った)。


それにしとも、ひと月ちょっとでドレスを2着…お店の方達の頑張りに感謝です。



「まあああ!やっぱりお揃いは可愛いわ!」


ハイテンションの王妃様。涙ぐみながら喜んでくれている。


「エマもハルトと婚約してくれて……!可愛い娘が二人も……!」


王妃様の言葉が気恥ずかしくて、ローズと二人で目を合わせて、へへへっ、みたいな感じで微笑み合う。



ドレスは、ドレープがいっぱいで、ふわっとしている。


うん、今しか着られない型よね。ローズが青で、私が黄色。魔力のイメージカラーだけれど、何だか、婚約者の瞳やら髪やらの色とも言えそうな。い、いいんだけど。そして胸元にはお揃いで月と太陽の刺繍が施されている。繊細で、キレイ。



「お二人共、良くお似合いです!サイズもぴったりですわね!」


「本当に!お美しいわ!」


とは、今日の着付けのお手伝いをしてくれている、ニーナとリサ。二人のはしゃぎっぷりも、王妃様に負けないくらいだ。


「それに、エマ様がラインハルト様とご婚約されるなんて……私共からしたら、夢のようです。正直申し上げて、エマ様の重心はお仕事の方かと思っておりましたので」


特にリサは上機嫌だ。


実は、あれからハルト様の動きが凄い。どうって、もう辣腕な未来の王弟殿下。今まで隠していた能力を遺憾なく発揮していて、周囲はかなり驚いている。ずっと悶々としていたハルト様の従者たちからしたら、かなり嬉しくて誇らしいのだろう。


そのきっかけが私との婚約とのことで……妙に感謝されている。


「し、仕事も頑張るわよ?ハルト様も応援してくれているし。レイチェルのボートー家とカリンのマーシル家が早々にお米の苗を見つけて来てくれて。今、セレナ様と土壌改良中だし、聖エミの農業科の人たちとの共同研究の話も進んでるし」


「確かに、事業も順調よね?」


「ローズ。そうなの、お陰様で」


そう、あれから皆のお家も巻き込んで、事業は順調に進んでいる。王立病院の研究所も広くして、ソフィアとシャロンと共に、新薬研究中。これも、聖エミの薬科と共同研究予定。リーゼには、保育園と小学校事業のお手伝いを頼んでいる。あと、病院経営。光魔法はありがたい。この事業は、ローズにも協力をお願いしている。月の魔力は有効と思うのよね。穏やかに休めるし。



「会社名…、商会名は結局どうなったの?」


「うん、差し出がましくも、一応、私が代表みたいではあるけれど、実働はそれぞれだったりするから、私発案のプロジェクトってことで、『ルピナスシリーズ』にしました」


「あら、素敵。花言葉の意味で?」


「そう。さすがローズ」


ルピナスの花言葉は、『想像力、いつも幸せ、貪欲、あなたは私の安らぎ』だ。何となくイメージでしょ?視野の広い博学なカリンの発案……一発認定でした。……別に悲しくないです。



「きっと、聖女と公爵夫人と実業家と!エマ様は女性達の憧れと目標になりますわ!」


「ありがとう、リサ。そうなれるように頑張るけど……私に拘らず、誰もが自分の道を自由に選んでくれたりしたら、嬉しいかなと思うわ」


うんうんと、三人で頷いてくれる。王妃様も誇らし気にしてくれる。こそばゆい。



「あの、興味本位のようで申し訳ないのですが、セレナ様達の婚約はそのままなのですか?」


ニーナが控え目に聞いてくる。確かに気になるところだよね。


「それね……」


リーゼ、ソフィア、シャロンは、婚約解消に向けて話が進んでいる。元々、家の事業的な繋がりが主だったため、今回の『ルピナスシリーズ』への参加を踏まえると、娘に我慢を強いてまで婚約に拘る必要がなくなったとのこと。結局、巻き込む様になってしまった私からすると何だか申し訳なさも感じたのだけれど、三人共に自分の意思で決められたから、と、寧ろ感謝された。


そして、セレナは……


「トーマス様だけは、やり直し申請中なのよね」


「えっ、そうなのですか?!」


どの面下げて……と、ニーナがぼやく。


「いろいろあるのでしょう。幼馴染みですし……私達には分からない、何か」


ローズがニーナを窘める。失礼しました、と、ニーナ。


「私からすると、ニーナの気持ちも分かるけどね」 


私は言う。


「そうね、でも、結局彼はセレナなのよ。ずっと見てると何となく分かるの。……だからって、簡単には赦せないけれど」


ローズが複雑な表情で言う。きっと、昔からのあれこれがあるのだろう。セレナも初恋だったとは言っていた。外野は見守るしかないよね。



「ふふ。若いといろいろあるわね?さあ!今日の予定はまだあるの!サイズ直しはなくて大丈夫そうね?そうしたら、ドレスを脱いでもらって、お披露目式のプランの確認と、リハーサルよ!」


「「は、はい!」」


王妃様の一声で現実に戻る。うん、私達は私達でやるべき事をやらないとだ。


「エマ、二人でのお披露目魔法も確認しましょう?」


「そうね!」



まずは、式を成功させないとだ。


浮かれずに、頑張ります!

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