第20話 これからもよろしく

「そんな訳で。せっかく今生でありがたい能力を授かったからさ。頑張りたいなって」


「その能力を、恋愛方面に生かさないのがエマらしいな」


「うーん、恋愛を拒否してる訳でもないのよ?ジークとローズみたいなカップル、羨ましいなと思うし、見てるの大好きだもん」


むしろ大好物です。


二人が照れ笑いをしているし。


可愛すぎて、尊い。


「前世もさー、そりゃ結婚生活はきれい事だけじゃないけど、お陰さまで幸せだったんですよ。ほんとに文句なくて。だから、結婚なんて!とかはなくて、いい人いたらね、とは思う。エマとして」



「そっか……じゃあ、あの四人じゃ、役者不足よね」


「そもそも、婚約者がいるのに他の女にちょっかい出すとか、その時点でない。せっかくのイケメンも、もうアホな子にしか見えない」


「辛辣だな。しかし同意だ」


自分の身も切らず、相手にも失礼だ。



「だよね?あー、あの四人より、そのご婚約者様たちと仲良くなりたかったのに……あいつらのせいで、声をかけづらくなっちゃってさあ」


「そうなのか?」


「そうよう。あ、言ってなかったわね、エマの事業計画!」


「へぇ、何々?」


「ワタクシ、この国に保育園兼小学校を作りたいです!あと、光魔法を使いながらの薬の研究ももっと深く…。

あとあと、私が食べるの大好きなのは、もうバレバレだと思うのですが」


「「そうね」だな」


「米作りを!!したい!」



おー!と二人が言う。


「あー、そこは解るな」


「恋しいわよね」


「だからさあ、あの人達のご婚約者様たちの方が、ビジネスパートナーとしてね……」


それぞれ、水魔法や土魔法のスペシャリストで、光魔法を使える人もいる。水田作りにチャレンジしたい。


「声をかける前にこんなことに…」


「エマ、彼女たちと話をしたいなら私に任せて」


「ローズ…でも、不快にさせないかな?」


「エマ、彼女たちは貴族令嬢よ。きちんといろいろと弁えていると思うわ。大丈夫よ」


「…そう?じゃあ、お願いしようかな。彼女たちの魔法と能力、ぜひご一緒したいの!」



「あと俺からもひとつ。子どもたちは教会が面倒を見てくれてるだろう?それだけでは足りないか?」


「そうね、よくやってくれてるなあとは思うけど、人手不足感はあるし。ほら、孤児院としての役割もあるから。文字とか教えてくれるし、孤児院の子達とも遊べるけど、せいぜい2、3時間なんだよね」


「うん」


「うちの母、刺繍が得意なのね?だから家で内職みたいに仕事ができて、母子家庭でもそれなりに何とかなったけど、私を預けられていたらきっと、オートクチュールを手掛けるようなお店に勤められてたと思うの」


「エマ……」


二人が困ったような顔をする。


「あ、母から何か言われた訳じゃないよ?私が勝手に思ってるだけで。でも、長時間預かってくれる所があれば、選択肢は広がる。父子家庭のパパも助かると思わない?保育士って職業も増えるし!」


「確かにそうだな」



「私は前世の記憶を思い出したとき、まず、なぜ私?って思ったのよ。特に前がひどい…と言ったら語弊があるけど、大変な人生ではなかったし。でもこの国を知って、ローズとジークに会えて、ああ、この為だったのか、と今は思う」


私は二人を真っ直ぐに見て、


「ジークフリート=グリーク王太子殿下とローズマリー妃殿下の治世に、私、エマは聖女として精一杯勤めさせていただきます。共にこの国の発展に尽くさせてください」


最敬礼のカーテシーをする。改めての、聖女としての宣誓だ。



「ありがとう、聖女エマ」


「私も…精一杯、エマの忠心に答えられる妃になります」


二人も、王太子殿下と妃殿下として、答えてくれる。



そう、優しくて頑張り屋の二人と、二人の大切な国民と共に、みんなで幸せになるのだ。

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