できて早々潰れかけの文芸部に入部してラブコメする
雨依
第1話
とある日の昼下がり。風が気持ち良く、日の暖かさも眠気を刺激してくる。
「ふぁ……ねみ……」
「おいおい。お前寝ても良いけど俺起こさねーぞ?」
「ああ……わかってるよ。」
友人の木村宗太郎は、俺が俺を止めるようにそう言った。
そんなこと言ったって、昼休みなんだからとは思うが、俺は委員会の仕事も持っている以上、模範たる行動をしろと口酸っぱく言われているので実際は寝ることはできない。
万一遅れたら教師から何を言われるかわかったもんじゃない。
教師たちのことは好きだけども、怒られるのは好きじゃない。
大体、そんなことでわざわざ教師たちの手を煩わせたくはない。
すると、寝ないという選択肢しか残ってはいない。
「お前、珍しいな。眠たがるなんて。」
「ああ。ちょっとな。まぁ……夜更かしだよ。」
「これまたなんで?真面目なお前らしくねえな。」
「お前バカにしてる?」
冗談だよ……と、笑う宗太郎。外面はともかく宗太郎の前で真面目だったことはない。
……まあ、なぜ俺が寝不足なのか。だが、その理由は至って単純である。
「……読書だよ。ハマったんだ。」
「は、読書?お前がか?……ハハハハハッ!」
「てめぇぶっ飛ばすぞ?」
似合わねー!と、笑い続ける宗太郎に一撃を喰らわせると、ちょうどひるやすみの終わりのチャイムが鳴った。
「おっ!やべっ!」
俺たちは、それまでいた誰もいない階段を駆け下り、教室へ急いだ。
この学校は、まあまあな進学校と認識されている、そこそこの学校だ。確かに設備はかなりいい。
ただ、この学校は、やる気のある奴は伸びるし、ない奴はそこまでという特徴があった。
生徒はいえば貸してくれるさまざまな設備、聞けば教えてくれる教師、そして何をするにも悪いことじゃない限りはいいという校風がある。
逆に、やる気のない奴は授業だけになってしまい、この学校の良さは完全に潰えることとなる。
俺は残念ながら後者である。しかしながら、まだ入学してそう経ってもいない。いつかは活用しようと、そう思っている。今のところ思っているだけだが。でも、思ってもない奴よりはマシだ。と、俺は思う。
全ての時間が終わり、部活動にも入っていないので適当にぶらついていると、とある紙が目に入った。
「文芸同好会……?」
今まで、こんな同好会があっただろうか。一応、入学した時も全て確認したが、そんなものはなかったはずだ。
「文芸だけじゃなく、アニメ好き、劇好き、漫画好きの方も!か。部室は……いってみるか。」
俺は、暇であること、本に興味があったこと、そして、予想の文芸部の何倍もカジュアルな雰囲気に好奇心が湧いた。
「ん……ここだな。」
意外とあっさりと見つかった文芸同好会の部室は、つい最近まで何もなかった空きの教室だった。
ドアには、入部者募集!と癖のある綺麗な字で書かれいた。
ガラガラっと開けて、真っ先に目に飛び込んできたのは、
全体的に小柄な体格。黒に近い茶色の髪はボブくらいに切り揃えられており、美しい前髪は目にかからない程度に伸ばされている、一見高校生とは思えない、中学生にしか見えない女の子だった。
「あ、楠本さん?ここって……」
「あ、えっと……文芸同好会の部室だけど。」
中にいたのは、同じクラス、隣の席の楠本千紗だった。
「ああ、よかった。部長さんっているかな?」
見学するにも部長に挨拶しておくべきだろうと、部長の姿を探すが、それらしき影は見えない。
「部長は私です。この文芸同好会はまだ一人なんです……」
できて早々潰れかけの文芸部に入部してラブコメする 雨依 @Amei_udonsoba
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