無邪気な甘噛み
じんとした痛みが手のひらに伝わる。人差し指の先に当てられた歯は、甘えるように私を刺激した。
目の前で微笑んでいる彼女からは、いじわるな気持ちなど全く伝わってこない。この無邪気さが、毒だと思う。
「どう?」
「ん、おいしい」
せっかくのバレンタインなのに、手作りをする勇気がなかった。百貨店で選んだハート型のチョコは、私の気持ちが露わになってしまったようで、今朝になってから少し後悔した。
でも、美味しかったなら、いいや。
「もう一個ちょうだい」
「そろそろ自分で食べなよ」
「いいじゃん。せっかくだから食べさせて」
リップを塗ったばかりの口が控えめに開いた。艶々とした桃色が縁取るそこに、私はそっとチョコを差し入れた。
(300文字)
2023/02/04
#Monthly300
( @mon300nov )
第2回お題:甘い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます