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みたか
天使の椅子
小さな窓から浴槽に光が落ちているのを見て、天使がいてもおかしくないと思った。クリーム色のタイルから伸びた光は、白い浴槽に煌めく波を作っていた。私はそこを天使の椅子と呼んでいて、アイちゃんはそこに座って歌うのが好きだった。白い足を揺らしながら、私の知らない歌を歌う。アイちゃんは天使になった。
木の葉に合わせてたゆたう波は、天使の足をくすぐった。私は脱衣所から眺めて絵を描いた。歌っているアイちゃんを描くのが好きだった。
スケッチブックが一冊終わる頃、私たちは中学を卒業し、私の天使だけが紙に閉じ込められていた。一枚一枚切り離して浴槽に並べると、波が天使をくすぐった。でももう天使は歌ってくれなかった。
(298文字)
2021/08/07
第78回お題:波
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