第4話
「...頑張ったじゃん」
満面の笑みでこちらを見てくる里奈を無言で軽く睨みつけてみる。
「いやいや、今回は役立ったくない?ちゃんとアドバイスしたし、成功してるし。」
そうなんだけど、!感謝もしてるんだけど、!
恥ずかしいところを見られた直後はなかなか素直にはなれない。でも今回ばかりは里奈のおかげ。またなんか奢ってやろう。
「まぁ確かに今回に関しては!ありが...とう」
「いいえ〜どういたしまして!」
こういうとこ。ありがとうを真剣に受け止めてくれるところが好きだ。だから憎めないんだよね、。
「っていうかあんなんでお姉さんキャラ守れんの?さっきなんか借りてきた猫みたいに萎縮してたけど」
里奈の目を見ると本当に心配なようだ。確かにさっきの一部始終だけでは心配されても仕方ないだろう。
「いや、さっきのはあんなに恥ずかしいことがあったからで、今日の朝たまたま会った時はちゃんと大人の対応できてたもん!」
軽く里奈の胸をたたきながら頬を膨らませて、抗議する。里奈とは身長差が結構あるからこういう時も上を見上げないといけないので少し尺ではある。
「まぁ、私はなんでもいいよ。早希が満足する結果になるまでちょっと手伝うだけだから」
本人には口が裂けても言えないが、そうやって笑う里奈は早希にとって今後何年もずっと友達でいようと、離さないでいようと思える存在だった。
「で、どうなのよ?進展あった?」
しんどすぎて休もうかと思ったが、早希さんがもしかしたらあの場所で待っている、もしくはたまたま会うなんてことがあるかもしれないので、僅かな可能性にかけて登校したのだが、予想通り早希さんと会うことはなかった。流石に明人に昨日のことをそのまま話すわけにはいかない。明人に話せば、澪に伝わってしまうかもしれないからだ。
前田澪
中山明人
谷口亮太
俺含めてこの三人は同じ中学同じバスケ部だった。澪は女バスなので、一緒に練習することはなかったが、体育館を分けて使うため、ある程度かかわりはある。そこで、俺たち二人と気が合って、よく三人で遊んだりしていた。いまでこそ俺以外の二人は未だにバスケ部で現役だし、澪とはクラスも違うのであまり関わることはないが、澪に聞かれたら明人は素直に答えてしまいそうなので、話したこともない人の裸を見たなんて言えば、俺は生涯変態認定されてしまう。ましてや学校でそれをバラされ、それでもなお友達でいてくれる人は片手で数えられるほどだろう。
いくら親友とはいえ、オブラートに包むべきである。
「ま、まぁな。連絡先は交換した。あとカフェいく約束も」
少し胸を張って自慢げに言う。これくらいは自慢しても罰は当たらないはずだ。
「え......?まじで??」
今までで一二を争うくらい本気で驚いた顔で少し食い気味に聞いてくる。なにかまずいことがあるのだろうか。
「流石の早さに驚いたか??」
「いや、まぁおめでたい気持ちと残念な気持ちが複雑に絡まり合ってて」
明人の言う通り、喜びたい気持ちを抑えて、なにか悩みを消化しようとしてるように見える。
「あいつが知ったら、」
「え?なんて?」
「いや、なんでもない。とにかくおめでとう!俺は応援してるぞ」
若干誤魔化された気がしたが、祝う気持ちは本心なようで、とりあえず受け入れておいた。
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