無駄のない生活
シヨゥ
第1話
「1分1秒が無駄にしたくないと言うけど、無駄ってない気がするんだよね」
彼は紫煙を吐き出した。
「こうやって自堕落にしている時間を他人は無駄だっていうけどさ。僕にとっては大事なんだよ。無駄かどうかなんて個人の価値観なんだから、とやかく言うことが間違っている」
「だけど少しは働こうよ」
彼の親に依頼されてこうやって久々に会いに来てみると彼は立派な引きこもりになっていた。
「働くってお金を稼ぐってことかな?」
「そうだけど」
「だったら僕はちゃんとお金を稼いでいるよ」
そう言ってパソコンを指さす。
「今は良い時代だよ。企業に所属しなくてもこうやってパソコン1つあれば稼げるんだから」
「でも親御さんのすねをかじっているのは変わらないだろう?」
「ちょっとはね。でも楽に生きるために使えるものは使わないと。それに衣食住の内、衣食は全部自分の稼ぎで賄っているし、タバコとかゲームとか欲しくなったらその分稼ぐしね」
そう言ってタバコの火を消した。
「必要な分を稼いでゆっくり暮らす。それが僕が選んだ人生なんだよね。もし追い出されたら必要は最低限稼げる自信はあるからほっておいてほしいかな」
それは明確な拒絶だった。
「君とはこれからも友達で居たいからさ。帰ってほしいかな」
「おっおう」
彼の微笑みに気圧されて部屋を後にせざるをえなかった。彼がそれでいいと言うならもう何も言えないだろう。さて親御さんになんて説明したものか。頭が痛い。
無駄のない生活 シヨゥ @Shiyoxu
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