幕間

無月

　ねぇ。

　こっちを見ないで（　壊さないで　）。

　そう。悪いのは私。

　ごめんなさい。なんて、とても言えないけど。

　もう動かないで。

　それは過ぎていった私。

　汚点はない？ねぇ、何でそんなこと言えるの？

　……もう。

　頭の奥で鐘は鳴りやまないし。ハエの羽音はいつも五月蝿（うるさ）いし。

　あぁ。

　沸きだす膿（うみ）はガラスのように。突き刺す棘は甘味のように。

　明るく叫んでズキズキ疼く。きっとあれは光の欠片。

　あーぁ......。

　頭の奥で何かが割れた。

　そう。甘い毒がじんわり滲んだ。

　……あはっ。

　私は目蓋（まぶた）をぎゅっと抑えた。

　もう中身が零れて落ちないように。

　えぇ。

　通り過ぎるのは知らないおじさん。私の蛆（ウジ）なんて、もう見えてすらいないから。

　はい、そう。

　これでおしまい。もうおしまい。もう二度とこんなことなんてするまい。もうお前（私）のことなんて誰も知るまい。

　えぇ。だって、

　もう誰も要らないでしょ。こんな壊れもの何かなんて。

　......ねぇ。

　もう誰も要らないよね……。こんな潰れかけの何かなんて。

　……ね？

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