とりあえず明日、会社潰れてねーかな。

YORU

プロローグ


これまでの俺の人生、「最高」だとか「幸福」だとか「成功」だとか、そんな言葉を声を大にして言えるような事など無かった気がする。


いや、もう「無い」に等しい。


運命というものは残酷だ。俺の身に起きることは、全てにおいて最悪で、災厄だ。


長男として生まれ、弟と妹の三人きょうだいだが、これがまた俺だけが人生壁にぶち当たり状態。


俺は小さい頃から活発な性格ではなかった。

どちらかというと大人しく、自分の意思をはっきり言えない性格で、影を薄くして生きてきた。

小、中、高、大学とそれなりに過ごしてきたが、時には何も言えない性格に付け込まれてイジメにあうこともあった。

どうにかこうにかそんな学生時代を乗り越えて、就職は父が経営している会社で働くこととなり、従業員として役割をもらっていた。



流れるように過ごしていたそんなある年、一人の女性が新しく入社してきた。俺とは真逆な性格で、明るく周りの人間ともすぐに打ち解け、仕事の覚えも早かった。

何事にもテキパキと要領が良く、臨機応変に対応も出来れば頭の回転も良く、与えられた仕事を淡々とこなしていった。


見た目は話しかけずらいオーラで、俺にとっては一歩引いてしまうような、少し気の強そうなタイプだった。

だけど話してみると本当に普通で、聞き上手で話し上手な、よく笑う可愛らしい女性だった。


そんな彼女に惹かれて、俺はその女性に猛烈にアピールするようになる。

いつしかプライベートでも会うようになり、それから少しの時間が経って、その女性は俺の人生初の恋人となってくれたのだ。

そして、時間はかかってしまったが、勇気を出して人生初のプロポーズをした。

プロポーズは成功し、彼女は俺の妻となった。

俺にとっては奇跡で、人生で初めての「幸せ」を手に入れたのだ。



結婚して二年後には娘が生まれ、俺の人生の歯車は、良い方向へと回っているのだと思っていた。

「家族」を持ち、周りが言う「普通の人生」を送ることが出来ているのだと……思っていた。



しかしそれはいっときのものであって、またすぐに歯車は狂いだしのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とりあえず明日、会社潰れてねーかな。 YORU @yoru_book

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ