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 普段の私であれば、きっと遊間が目覚めるまで、じっと何もせず部屋の隅に縮こまっていただろう。

 しかし、その時の私は、遊間の熱意にあてられてか、妙に昂っていた。

 遊間の言うことが仮に真実だとしたら、この記憶の正体を暴かなければ、また近いうちに新たな犠牲者が現れる。

 それは明日かもしれないし、もしかすると今この瞬間にだって、見知らぬ誰かが私の悪夢の被害者になっているかもしれない。

 一つ確かなのは、私たちには時間がない、という事実だった。

 必然的に、私の取るべき行動は決まっていた。

 遊間を置いて、私一人で神府町へ向かう。

 そう決心した私は、眠っている遊間の胸ポケットから、例の事件現場を記した地図のコピーをそっと抜き取り、自分の懐に忍ばせた。

 ダイニングテーブルの上に書置きを残して、一人事務所を後にする。

 朝、事務所を出たときとは打って変わって、空はどんよりした曇り空だ。

 私はマスターから借りたワゴン車に乗り込み、カーナビの目的地を神府町の小学校に設定した。

 神府町。そこは前世の記憶における私の故郷と思われる町。

 その地名を聞くだけで、不思議と胸に懐かしい気持ちが湧いてくる。

 私は、込み上げる涙をぐっと堪えて、車のエンジンをかけた。

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