Nothing

#1

「たっくん…、おはよう…」

 俺、抱き枕じゃないんだけど…。

 寝惚けてるこの寝癖が酷いイケメンは友達で、ルームメイトの加登かど。誰かと間違えて弄り始めるので、めた。息の根を。

「たっくんって、誰……?」

 ちなみに俺の名前は、須見すみ みおひとつも被りはしない…。

「加登、起きろっ」

「いやぁ…」

 ドMなんだろうな…。気持ちよさ気な顔してるから拍子抜けする…。

 そういうことは、コイビトとしてくれ。とばかりに、背を向ける。……コイビトだけど。

「どうした…?」

 俺の背中にギュッとして、甘えているように見せかけて、また寝ようとしているのは見え見えで。

「起きろって…」

「もう少し、澪の加齢臭、嗅がせて…?」

 俺よりデカくて、覆い被さるように抱き締められるのは腹立たしいけど…。

「仕方ねぇな…」

「仕方ないよ…好き、だもん…」

 好きだから。俺も…。

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