第59話 颯、天界に行く

 ◇◇◇◇◇


 千代田マンションにて。


「ここはずっとサイレントね。何か少しでも食べた方がいいわよ。」


 迷宮HAPPYの5人組は、マンションのリビングに集まっている。が、誰も何も喋らない。


「その割には、みんなリビングに集結するのね。まあ、気持ちはわかるけど。」


 なぜか、レベッカがここにいて、みんなに声をかけている。ハヤテの住んでいたところを見たかったのと、少しでもみんなを元気付けようと思ってのことだったが、今のところ成功していない。


「みんな、それ着るのね。ハヤテがくれたのよね。羨ましいわ。」


 探索に行くわけでもないのに、5人ともトラックスーツを着て、日本刀を抱きしめている。



「サクヤってハヤテのマネージャーよね。

 このあと、どうするの?」


「……。あ!私ですね。しばらくは、ここにいます。そのあとは、決まってません。」


「そうなのね。」



「それじゃ、黙ってていいから、みんなで聞いてほしいの。


 私はこれから『サーベイランス』って言う独立機関を立ち上げるのよ。

 この世界はハヤテに救ってもらったでしょ。

 その意志を無駄にしないように、世界を監視するためにね。


 ハヤテの仲間のレイナ、シズカ、アケミ、サクラ、ワカバには、その立ち上げる機関に加入してほしいと思ってるの。サクヤたちマネージャーもサポーターとして一緒にね。


 だから、あなたたちの気持ちが落ち着いたらでいいから、考えて返事をちょうだいね。」



 これが、レベッカなりの元気付けるためのやり方なのかもしれない。



 ◇◇◇◇◇



 ところ変わって、天界にて。



「ようやく目覚めましたね。

 おかえりなさい。ハヤテ。」


「あ!その声は!

 あなたがエルミカ様ですか?」


「そうですよ。」


「あの、いきなりですいません。イースはどうなったんでしょうか?あと、桜たちは?」


「大丈夫です。イースは浄化されて、サクラたちもアースに帰りましたよ。」


「そうですか。良かった〜。

 ありがとうございました!」


「いえいえ、ハヤテのおかげですよ。

 私が行ければ良かったのですが、あの状況では、とても間に合わなかったのです。」


「もうこの先も大丈夫なんでしょうか?」


「そうですね。永久にというわけではありませんが、今回のことは、魔界の勢力争いが原因だったそうです。ルシフェールンからその件は収束したと連絡がありましたので、当分は大丈夫でしょう。

 あとは、アースの人間次第ですかね。」


「はい。ありがとうございます!

 あ!そう言えば、サランディーテ様は大丈夫だったんでしょうか?」


「そうですね。翼を失いましたからね。

 今回は、彼女の行動を考慮して、天使に戻して第六位階天使に昇格させました。

 ただし、彼女にはイースの門番を継続するという条件が付きましたがね。ふふふ。

 彼女は納得してましたよ。」


「そっかー、良かった〜!

 それで……ここは天国でしょうか?」


「いえ、ここは天界ですよ。

 ハヤテは解放されてここにいます。

 お疲れ様でしたね。

 人間界はどうでしたか?」


「天界ですか。そうですか。

 あ!いろいろありましたが、楽しかったです。

 みんなのことは心配ですけど……。」


「少し早かったですが、ハヤテは解放されて、天界に住むことになりますからね。

 すぐに慣れると思います。

 しばらくはゆっくり休息すればいいですよ。」


「はい……やっぱり俺って死んだんですね。」


「死んではいません。解放されたのです。」


「では、地球に戻れるんですか?」


「ハヤテはせっかく解放されたのにアースに戻りたいというのですか!?

 本来、ここが帰る場所なんです!」


「無理ですよね……。」


「……。ふふふ。本当にあなたは変わっていますね。かわいい子には旅をさせろ。アースのことわざでしたか。

 もう少しだけ、旅をさせましょうかね。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る