女性だらけの世界に迷い込んだショタが、年上のお姉さん達に色々されてドロドロに溶かされるまで
ポリエステル100%
第1話 ここはどこですか?
築40年を超えるボロアパートの一室で、ベッドに横になりながら漫画を読む。やっと大学も夏休みに入り、今まで積み上げていた漫画を消化していたのだ。もう時刻は0時を回ってしまったが、学校も休みだしバイトも無い。つまり、この静かな環境で寝落ちするまで自堕落な生活をしよう!
そんな事を考えていたけれど、小腹が空いてきた。あぁラーメンが食べたい気分だ。ちょっとコッテリとした豚骨ラーメンとか良いかもしれない! 一度ラーメンの事を考えてしまったら、もう頭は漫画を読む事よりもラーメンを食べる事で一杯になってしまった。
「よし、ラーメン食べに行こっと」
ベッドから起き上がり、外出するために部屋着からまともな服に着替える。今年の夏は特に暑く、0時を回った深夜になっても蒸し暑いのだ。すぐに帰って来る予定だし、クーラーは付けたまま行こう。
テーブルの上に置かれた財布を手に取り、中を確認する。千円札が3枚あった。これなら余裕だ。そして、お金の次に大事な物を取り出した。
「運転免許証……あった」
そう、運転免許証である。去年取ったばかりのオートマ限定の免許証です。車を運転するのに必要なのは言うまでもない。だがしかし、ボクにはこれが何よりも必要なのです。
洗面台に行き、軽く身だしなみをチェックする。鏡には男性にしては少し髪が長い、ボブカットの中性的で幼い顔が写っている。身長も150cmしか無く、どう頑張っても男らしさが微塵も感じないため、女装でもしてツウィッターでチヤホヤされようかと計画中なのです。
こんな、下手したら小学生に勘違いされてしまうボクにとって、身分を証明してくれる運転免許証というのは必需品なのでした。
部屋の電気を消して玄関から外に出て見ると、蒸し蒸しとした不快な空気が体に纏わりついてきた。その瞬間、思ってしまった。なぜボクはこんなに暑いのにラーメンなんて食べたいと思ってしまったのだろうと。でももう出てしまった。こうなったら美味しい豚骨ラーメンを食べてこよう!!
ダボダボのTシャツにハーフパンツ、サンダルという、オープニングが終わったばかりの勇者のような装備で夜の街を歩く。
「静かだ……」
住宅街は寝静まり、この街にボクだけが存在しているような錯覚を与えてくれる。こんな中、ボクがお巡りさんと遭遇してしまったら大変な事になってしまう。始まりの村から出てラスボスに遭遇する勇者の気持ちに近いかもしれない。ふふ……でも僕には
そんな事を思い出しながら歩いていると、背後から自転車の走る音がしてきた。一瞬でボクの心拍数が上昇し、立ち止まってしまった。もしかしてボクの宿敵、
息を潜めてジッとしていると、酔っ払ったオジサンが蛇行運転しながらボクの横を通り過ぎて行った……。
「なんだ、ただの野生のおっさんか。でもあれって飲酒運転だよね……」
自転車でも飲酒運転は絶対にダメです! 野生のおっさんを追いかけるように駅へ向かうと、ラーメン屋さんが見えてきた。深夜営業している飲食店って少ないから助かるよね。
「らっしゃーせー」
自動ドアを抜けて店内に入ると、若いおにーちゃんが元気よく出迎えてくれた。でもそのセリフ、どっかのラスボスみたいですね。もしかしてラスボスさんですか? ボクを倒しても3千円しかドロップしませんからね! ……深夜になると変なテンションになるよね。
「こってり濃厚豚骨ラーメンお願いします!」
「かしこまりましたー」
案内された席に座り、勢いで頼んでしまった。こんな時間にこのラーメンを食べるのはどれ程の重罪なのかと考えてしまう。でもしょうがないのです。たまには良いよね♪
お冷を飲みながらスマホをポチポチ操作してラーメンが届くのを待つ。ニュースのまとめアプリで気になる記事を見ていると、また行方不明者が出ているらしい。先月から続き、もう8人目のようだ。監視カメラで居なくなった人の動向を追っているが、いつもどこかの建物へ入った瞬間で追跡が出来なくなっているようなのだ。
世間では神隠しだと騒がれているが、建物の中にも監視カメラはあるだろうし、何か人為的な事件の香りがプンプンするぞ! そう、きっとこの豚骨ラーメンのような危険な香りだ……。
「おまちどーさまでーっす」
店員のおにーちゃんが運んできた豚骨ラーメンを見る。こってりとしたクリーミーな豚骨スープ、トロトロになるまで煮込まれたチャーシュー、存在感を示す大きな煮卵が盛り付けられたラーメンは、ボクの胃袋をキュンキュンさせる。
「いただきます!!」
はやる気持ちを抑え、まずはスープを一口飲んでみよう。レンゲに掬ったクリーミーなスープを口へ運ぶと、背脂と一緒に濃厚な豚骨スープが口の中で爆発した。飲み込んだ途端、鼻を抜ける臭みの無い上品な豚骨の香りが心地良い。
細い麺をスープと一緒にレンゲへ掬い、レンゲの上で小さなラーメンを作る。それをパクっと口へ入れると幸せが口いっぱいに広がった。……もう我慢できない!
上品に食べるのを止め、思いのままに麵をすすった。店内にはボクの他に数名のサラリーマンが居たが、みんなボクを見てきた。……ふふ、友達に良く『ユウは旨そうに食べるよな!』って言われるのです。そのうちテレビCMのオファーが来るかもしれない!!
そんなアホな事を考えながら肉厚なチャーシューを頬張ると、口の中で溶けてしまった。この豚の角煮のような柔らかいお肉が最高なのです。
ほとんどの麵と具を勢い良く食べ終わった時、ついにボクの大好物の煮卵ちゃんを攻略です。このテカテカに輝く煮卵をレンゲに乗せ、スープと一緒に一口で食べるのだ。大きく口を開けて煮卵を放り込む。そしてモグモグすると、トロッと半熟になった黄身がスープと絡まり、ボクの口を犯すのだ。
ボクはきっと、この幸せのためだけに生きているんだと思った。幸せに浸りながらお腹が落ち着くの確認したので、そろそろ店を出よう。
会計を済ませ、威勢の良いおにーちゃんの声を聞きながら自動ドアをくぐる。その時ふと、神隠しのニュースが頭に浮かんだ。行方不明になった人達が本当に居たとしたら、一体どこへ行ってしまったのだろうか? もしかして、建物のドアを抜けた瞬間に異世界にでも連れて行かれてしまったのだろうか? ボクもこの自動ドアを抜けたら、異世界に行ったりして……?
「そんな事、ある訳ないよね」
お店の向かい側に居た夜の姿のおねーさんが、ボクの事をおかしそうに見て笑っている。ちょっとテンションが上がり、大声で言ってしまったようだ。……今流行りの異世界転移とか、そういった漫画ばかり読んでいたからだろう。ボクはおねーさんに微笑ましく見送られ、アパートへ向かった。
こってりとした豚骨ラーメンを食べたからだろうか、ボクの口が炭酸を求めていた。これから長い時間を漫画と格闘するのだ、補助アイテムくらい用意しておかなければ……。
近くの24時間営業の雑貨屋さんへ入り、炭酸水とコーラ、ポテチをカゴに入れる。他にも何かないかと物色していると、今日発売の週刊少年誌があった。そうか、日付が変わっているからもう売っているのか。せっかくだから買って行こう。更に物色していると、毎月購入しているボクの好きな雑誌があった。
『月刊めちゃシコ!! 8月号』を手に取り表紙を眺めて見る。女顔のショタっ子が四肢を拘束され、綺麗なお姉さんに囲まれて顔を赤くしている。お姉さんの手にはエッチな道具が握られていた。そして、『ドMなショタっ子がお姉さんにトロトロに溶かされちゃう!?』って書いてある。ボクは至ってノーマルなのだが、こんな綺麗なお姉さんにトロトロに溶かされるというのはどんな気分なのだろうか……? よ、よし、今日のおかずはこのお姉さん達に決めた!!
ホクホク顔でレジに向かうと、とても綺麗な女性が居た。こんな所に居て良いような女性じゃない。180cmを超える身長に、服をパツパツに盛り上げている大きなお胸、黒絹のように光沢のある黒髪は美しく、顔だって今まで見た事が無いくらいに整っている。こんな女性、二次元の中でしか存在してはいけない気がした。
ボクは女性から目が離せなくなってしまったが、何とかカゴをレジに持っていく事に成功した。彼女と目を合わせていると息をするのが精一杯で、ボクは目線を下に移動させた。すると、大きなお胸が目に飛び込んでしまい気まずくなってしまった。急いで顔を上に戻すと、彼女がニッコリと笑ってくれていた。……ああ、胸を確認したスケベな奴と思われてしまっただろう。視線を戻すとき、胸に付いたネームプレートに『カミ』と書かれていた。どんな漢字か分からないけど、レアな苗字だね。
お姉さんはカゴから商品を取り出し、レジに通して袋に詰めてくれる。……あ、エッチな本を買っていた事を思い出してしまった。まさかこんな女性が居るなんて思ってもみなかった。どうか気付かれませんように!!!
……ボクの願いも虚しく、お姉さんはエッチな本を堂々と手に持ち表紙を見ている。
「……へぇ、こういうのが好きなんだぁ」
脳を犯すような甘い声が彼女の口から発せられた時、ボクの下半身が暴発しそうになった。ボクの大好きなアニメ声優だって、こんな甘い声は出せないだろう。
「キミ、何歳? こういう本は18歳以上じゃないと売ってあげられないんだよね~」
お姉さんの獲物を見つけたような視線がボクに突き刺さる。ボクは言葉を発する事も出来ず、震える手で
「……あら。うふふ……ごめんなさいね。キミがこの表紙の子みたいに可愛いから、てっきり未成年なのかと思っちゃった。でも……キミもこの表紙みたいにお姉さん達にトロトロに溶かされたいのかな? ふふ……可愛い」
もうボクは死んでしまうのだと思った。彼女の声がボクの脳を犯し、エッチな本を手に持つ彼女から目が離せなくなってしまったのだ。
袋に詰めて貰った商品を受け取るとき、お姉さんが囁いてきた。
「キミが泣いて蕩ける顔を見て見たいなぁ」
ボクは恥ずかしくなり、急いで自動ドアに向かった。外は真っ暗で、蒸し暑いのだろう……。そして自動ドアが開く瞬間、背後からあの女性の声が聞こえて来た。
「いってらっしゃい。トロトロになって楽しんで来てね♪」
女性から聞こえた言葉の意味を問いただそうと思ったが、ボクの足は店外へ向かっていた。もう戻る事は出来そうに無い。そして自動ドアを抜けて店の外へ一歩踏み出したところ、急に視界が光で覆われた。眩しくて目を閉じてしまったが、目を開けて見たら辺りは昼間に変わっていた。
「あれ? どういう事?」
ビルがひしめくオフィス街のど真ん中でボクは一人、口を大きく開いて途方に暮れるのだった……。
女性だらけの世界に迷い込んだショタが、年上のお姉さん達に色々されてドロドロに溶かされるまで ポリエステル100% @Tikuwamaru
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