青すぎる、僕ら

青鳥

電車の中のレプリカ

朝の電車の中。


がら空きの座席には座らず、ドアに寄っかかる。


向かいに立っている君に、視線がバレそうで、僕は車窓に目を向けた。


そこには、連続して家が建ち並ぶだけで、価値ある景色なんて、ひとつもなかった。


家の隙間から、ちらちらと覗く太陽に、思わず目を顰める。


それでも、僕は、その窓から目を逸らすことができなかった。


「めっちゃ眩しいね…」


突然、前に立つ君は言った。


さっきまで逃していた視線を君に戻せば、君は僕と同じように窓の外を見ていた。


素直な、人だな。


好き、だな。


単純に、それだけを、思った。


泳ぐ目のやり場が分からず、また外を見れば、そこにはビルが立ち並んでいて、太陽は見えなかった。


つまらない景色を、ぼーっと眺める。


ビルが急に無くなって、長い時間、太陽の光がこちらに差した。


予想してなかった眩さに驚くと、君は、僕をちらりと見て、口角を上げた。


悪戯な、人だな。


好き、だな。


また、単純に、それだけを、思った。


3年間、毎日、同じことを思っていた。


無機質な時間に楽しみを添えてくれた君は、今、どこにいるのだろう。


たった2両で編成された電車は、いくら見渡せど君はいない。


僕らが、もう、制服を着ていないからだろうか。


僕が、もう、英単語帳を持たなくなったからだろうか。


それとも、僕が、髪を染めたから?


ありがちな片想いは、終わりの音を、電車の轟音に隠して、消えていった。

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