第4話 青ならば終わらせて

 母は病院にいる。いつさよならになってもおかしくないことを娘に伝えた。病状説明をすると言われたので娘も連れていった。何度かくる病院なのに、変に緊張してしまって。待っている間ずっと喋っていたらしい。娘は私にやっぱり親子だなあって呟いて、笑っていた。


 震災後卒業した娘は就職先を転々とした。落ち着きがない。お酒や音楽にのめり込んで、時にヒヤヒヤすることもあった。それでも悪いことや何日も家に帰らないなんてことはなく、今の職場に長く勤めている。


 正直、私と似てないところを探した方が多い。旦那と母に似ている。ヒステリーなところや気合いが足りないところ。本当に、死のうとするなんてよく分からない。壁があって、何もせずに逃げて潰れて、死ぬ?どうしてそういう思考回路になるのか。自分のことしか考えてないんだよ。


 私の苦労話を聞かせても今と昔は違うとだけ、大変だったねと他人事で。あんたもそうなるかもしれないんだよ、シャキッとしなさいとカツをいれる。旦那もそうで、とても女々しい。怒っても直そうとせず、すぐ俺を悪者にすると拗ねてばかり。


 あなたたちのことを思ってやったことは全部無駄だったの?直してほしいから怒って、叱るのに。直す気がない、響かない。空や海に叫んでみても、返事がないように。山のようにやまびこが来ない。どっしりしてないから響かない。空っぽの、現実に生きていない人たち。その面倒ばかり見ている。母もそうだった。

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