戦争のない星

 地球人である男は、ある仕事に就いていた。他の星へ行き、自国の文化を売り込む仕事だ。


「ようこそ我が星へ」

「どうもありがとう。ところで、なにか欲しいものはありませんか? 私は地球の文化を売りに来たんです」


「欲しいものですか。しいて言うなら『争い』ですかね」

「争いですか」


「ええ。この星では争いは一切起こりません。厳重なルールが敷かれているのです。ですが、抑えられた感情はいつか爆発する。だから争いに変わる何かが欲しいのです」


「では、私たちの星から戦争映画とゲームを送りましょう。きっとご満足いただけますよ」


 それから数ヶ月が経った。


「どうですその後は? 私は心配だったんですよ。戦争の興奮を知って、本物を始めないかと」


「まさか。映画とゲームで欲は補えてますよ。しかし、どれも真に迫るものがありました。よっぽど戦争がお好きなようですな。地球とやらは」


 男は何も言い返せなかった。

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