近所迷惑

 男が住むのはマンションの二階。その部屋では大音量の音楽が流れていた。するとドンドンドン。左の部屋から音がする。


「おかしい。隣は誰もいないのに」

 

 暫くするとドンドンドン。今度は上から音がする。気づけば四方から壁を叩く音が部屋に響いていた。


「上も下も両隣も空き家なのに」


 四方からの壁ドンがピタリと止んだ。突然チャイムが鳴る。何度も鳴る。恐る恐る扉を開けると足の透けた人達がいた。


「あの。うるさいんですけど」


「あなた達は?」

「見て分かるでしょ。幽霊よ。とにかく音、気をつけてください」

「すいません」


 男は部屋に戻ると別のCDをセットした。するとどうだろう。低い呻き声がして壁から音が消えた。


「お経のCDでも除霊できるんだな」


 あくる日。ドンドンドン。男はまた、お経のCDをかける。

 またチャイムが鳴る。今度は一つだけ。


「はいはい。幽霊さん、なんでしょう?」

 扉の前には刃物を持った女。足はあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る