第27話 越後屋はテンプレ

朝ご飯の後森を出て、昼前には町に着いた。町の名前はシダナと言って、3兄弟の出身の町とは別の、もっと都市寄りの町である。

次の町・・・が、都市であるスルハマで、1日もあれば着くそうだ。

都市から近いこともあり、シダナもかなり発展した町だった。イワーノより大きい。

いわゆる都会だ。その大きな町の門のところで。

私達、すごく注目されてます。

「なんでこんなに見るんだ?」と、原因になっている本人のみ、まったくの無自覚なままだったが。

子供達まで曖昧な笑顔で目を逸らしているし、たぶん、絶対気付いている。

リン!!荷物持ち過ぎ!!超絶パワーが隠れていない。

以前は確かに、私が非力なこともあり荷物は全部リンが持った。

ジエで貰った食料などは軽く荷馬車がいる量だったが、リンは当たり前に担いでしまう。実はジエでもドンびかれたが、あの町の人は義理堅く私達を隠そうとしてくれていたので騒ぎにはならなかった。

人類は、そんなに荷物は持てません。

今リンは、王魚の干物すべてを担いでいる。何10キロあるの?って感じだし、穀物はあらかた食べつくしていたが、家財道具(なべかま、食器、毛布など)も結構かさばる。絶対馬車がいる量だった。

やたら目立ちながら門を抜けた。一瞬だけリンがすれ違った商隊に目を向けたが、何も言わなかった。

なんとか町に入り、次に行ったのは商会。

たいていの町は、中央に裕福な人、壁際に貧しい人と住み分けていたが、唯一の例外が出入り口付近。出入り口があるということは壁際なのだが、商人達の利便性も考えてそのあたりに商会が連なる。

その1軒に・・・とりあえず1番大きく見える商会の門を潜った。

「王魚の干物なんだけど」とリンが見せると、

「えっ!?」と、受付の男が息をのむ。

この程度の目利きができなければ大商会の受付などやっていられないし、そういう意味では合格だ。

けれど、後がいけない。

欲しい顔を必死で隠し(隠せていない)、

「ああ、確かに王魚の干物らしいが・・・お前達お使いか?こんな処理じゃ高くは買えないぞ。精々大銀貨2枚程度か」と、女子供相手と思ったのだろう、騙そうとした。

目で伝えようとすると、王猪の時とは違い、今回はリンも気づいている。

ニヤリと笑い、

「じゃ、いいや。他に行くから」と、さっさと店を後にした。

「なら大銀貨3枚!!いや、5枚出すから!!」

背後で受付が騒いでいたが、完全無視。

次に行った商会では金貨1枚と大銀貨1枚と言われ、3軒目、4軒目は金貨1枚、5軒目が大銀貨9枚だった。

つまり金貨1枚前後が適正なのだ。

2軒目に戻りそこで売ることとした。

「ここで売るけど、大丈夫?」と、リン。

「ん?」

「そこの馬鹿でかい店で騙そうとしてきたから断ったんだ。あれ、たぶんこの町1の商会だろ?おじさん、恨まれたりしない?」

「はは、ズルタン商会か。一応うちも町で2番目だからな。大丈夫だよ」と、良心的な査定をした、受付の男が笑い飛ばす。

「わかった。連れの子供達にお金の使い方を教えたいし、細かくもらえる?」

「いいぞ。大銀貨10枚と、銀貨10枚でいいか?」

「うん。」

話が決まり、男が硬貨の入った布袋をくれた。

渡しながら忠告をくれる。

「嬢ちゃんは魔法使いなのか?」

干物を売ったお陰で、やっと通常の力持ちくらいの荷物量になったリンが、不思議そうな顔をする。

「え?なんで?」

「あんな量の荷物を担げる人間、魔法使いじゃないとおかしいだろう。」

「ああ。」

やっと得心が言ったリンと、思わず目をそらす私と子供達だった。

「教えてよ、みんなぁ。」

「なんだ、気づいてもいなかったのか。でも、気をつけろよ。さっきのズルタン商会だが・・・」

受付の男の話によると、ズルタン商会は都市であるスルハマに本店がある。王都にも支店を構えているレベルの大商会で、嫌な噂が絶えないらしい。

曰く、魔力持ち(王都で使えないレベルの弱い魔法使いをこういうらしい)を最悪な条件でこき使って、ほとんど奴隷のようにしている。弱みを握ったり借金をかたに、最低の賃金で働かせて使い捨てている。

「ふーん。そう言うことか。」

何故か思い当たるらしいリンが、門を入った時すれ違う商隊を見ていたことを思い出した。

リンには何か見えていたらしい。

「うん、気を付けるよ。ありがと、おっちゃん。」

店を出るリンが笑っている。

怒っていると気がついた。






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