伝説のTS魔法少女はUMA扱いされてる
マッキーマン
第1話
この世には目には見えない闇の住民たちがいる。
何処かの地獄先生の冒頭のような、そんな事実が表沙汰になったのは6年ほど前の事だった。
東京の秋葉原付近のビルというビルのガラスから化け物が続々と現れ、東京を占拠し始めたのだ。
直ぐ警察や自衛隊が出動し制圧を始めたが、銃を通さない身体、自由に変形する腕や足、放射線を含んだビーム、はたまた催眠術や超能力を扱い始め、人間は蹂躙されて行った。
酷い光景だったと思う、先ほどまで笑顔で溢れ返っていたソレは一瞬で叫びや嘆きに変わって行った。
血飛沫がそこらを舞い、爆発四散した人間の肉や骨が地面を埋め尽くす。失った下半身を這いつくばって探す者、潰れた目を顔から掻き出す者、恋人の散らばった脳をかき集めて口に咥え出す者、それはまさに地獄絵図、その化け物が死にかけている人間を狂わせている様にすら見えるその光景は次第に何もかもを化け物で埋め尽くそうとしていた。
瞬間、光が全てを焼いた。
そこから生まれた光が化け物を一つ一つまるで梱包のプチプチを潰すが如く殺していく。
圧倒的、圧倒的にその化け物達を駆逐していく。
その光は人々を癒し、化け物を殺す。
死んでいく人々は救えないがその何かはせめてもと死体を肉塊から人の形へと戻していく。
正気を取り戻した人々は涙を流しそのナニかに向けて顔を上げる。死んだと思っていた、全員がその救ってくれたナニかを神の様に称える様に涙を流した。
そのナニかは金色の髪を靡かせて黒の帽子を被り、星形のステッキを持ち、紅いリボンをつけた、青のゴスロリ衣装に身に纏わせた少女であった。
後々に彼らはそのナニかをこう呼んだという
「魔法少女」と
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「魔法少女マッキー・ガイア アニメ化決定!!」
そんな事が書かれた電光掲示板を見ながら少年"田中彰人(タナカアキト)はため息を吐く。ここ数ヶ月流行りに流行りまくったラノベだ。アニメ化は直ぐなのは確実だった。現に彰人も全巻買ってハマりにハマっていたのだが、そんなこのニュースを喜ぶべき人間である筈の彰人がため息を吐くのには理由があった。
件のアニメの主役である、魔法少女に目を向ける。金髪と赤のゴスロリ服に星形のステッキを持っている。
「また僕のパクリが出回ってる…」
ー
世間でいう所の"秋葉原集団惨殺事件"。そこに現れたという謎の存在『未確認生物 魔法少女タイプ"A"』別称『Altair』が姿を表してから6年。それから一切"A"が世間に現れる事は無かった。あの秋葉事件で死んだとか戦う力を無くしただとかさまざまな見解を述べられたが、結局の所、誰も分かっていない。しかし、化け物は未だに現れ続け。そのAが行方不明の後、待っていたかの様に続々と様々な魔法少女が現れた、音速を超えたスピードで移動する者、ロボットの様な体を持つ者、敵の能力を吸収する者、魔法少女の力は無いが格闘技や多彩なガジェットで戦う者、全員が個性豊かでアニメ好きの日本人からしたらそんな存在に一定数のファンがつくのは自明の理であった。
そしてそんな魔法少女達に世間が問うのだ『アルタイルはどうしたの?』と、そして魔法少女全員が口を揃えて『あんな無茶苦茶な魔法を扱えていた時点でもう化け物と言っても良い。正直、あんな闘い方して生きている可能性はないと思って。』と言うのだ。
この言葉を聞いて沢山の人々が落胆した。確かに今まで彼女達の戦いを見ていた人々ならば理解できる、あの化け物一匹ですら凄まじい強さを持っているのだ。今まで魔法少女があの化け物に殺されたなんて話も珍しくない。結局どこぞのアメコミ宜しく何かしらのパワーや奇跡なんかで生き返ったりはしているが、残った死体は人と言えるものではない程グシャグシャになってしまっている。
Aがいない今、もし秋葉事件が起きたらこの世界にいるすべての魔法少女をかき集めたとしても収束できず必ず全滅すると言われている。それほどなのだ、それ程の災害をたった一人で蹂躙したあの魔法少女は異端であったのだ。つまり特撮やプリキ○ア宜しく、初代最強説が有力視されているのだった。
ーー
とこれが魔法少女A、アルタイルの詳細である(wiki調べ)まぁ、ここではあの秋葉事件が初めての変身みたいに言っているけど実を言うとあの時点で2年くらい戦い続けて来たベテランだったから、そんなに持ち上げられるとこそばゆいと言うか…何というか、
たしか、初変身が小学2年生で最後の出動が小学4年ってかほぼ5年生に片足突っ込んでいたのだからまぁ、持ち上げられてもしゃーなしって奴だろう。
あ、挨拶忘れてました、僕は田中彰人、魔法少女やってます。
いや、男なんで魔法少年か、でも変身すると身体が女の子になる訳だし魔法少女で良いのかな…?ってかもう少年とも少女とも言えない歳だけどね…高2だし。
いやぁ、最近は魔法少女が沢山出て来てくれて嬉しいよ、秘密裏に化け物を倒す必要も無くなったし、表沙汰になる前に他の魔法少女が戦ってくれるから、僕が出張る必要も無くなったしで6年も無断休業している、一応魔力や筋力は維持したままにしているが多分そのうち無用の長物になるだろう。
さて、何故男である僕が魔法少女になっていたのか…だが、理由は主に二つある。といっても現役の時、2日くらい居たマスコットから教えてもらった物の受け売りみたいなものだけど、
さてと…では大前提の話、化け物の話をしよう。まず、この世界の人間は皆大なり小なり魔力を持っているのだが、それを狙って化け物が襲ってくるんだ。そりゃあそうだよね、ろくに攻撃出来ないような存在が餌である魔力を持っているんだ、襲うに決まっている。
ではそれを踏まえて古代から人類を化け物から守っていた者がいる、それが今で言う魔法少女という奴なのだ。まぁ昔は皆ガーディアンって呼んでたけど、
はい、これが大前提の話、でここから僕が魔法少女になった話になるのだが、まず男と女で魔力量が違うんだけど知ってるかな?知らない?まぁ良いや、どうせ説明するから…箇条書きでいくよ!(箇条書きで書くとはいっていない。)さて理由だが、女の子の身体には魔力を魔法に変換する器官がある、それを『Magic Conversion Organ』略してMCOと呼んでいるのだが、そのMCOがあるお陰で女性は魔法が使える人が多いのだ。昔から絵本とかで魔法使いや不思議な力を使う人が女の人である場合が多いのはそう言った事があったりする。しかし、無論デメリットも存在するわけで、そのMCOがあるせいで魔力が抜けやすく基本的に女の子が所有している魔力はほとんどないのが現実だ。
逆に男はその魔力を変換する器官がないせいで魔力が入っても出る事は無くただただ溜まっていくだけになってしまう。その為男の子が保有する魔力は莫大な物になっていくのだが、その所為で男は本当に僅かだが短命だったり、精神的に弱かったりする。
しかし、1000年に1度くらいの確率で男の子でもMCOがついて生まれてくる者があらわれる。それは通常ではあり得ない、ほぼ突然変異と言われても良いレベルだ。
それが数万年も昔から1000年単位のインターバルを経て現れ続けている、理由は分かっていないが、その全ての男性がどの道を行っても戦いの道…つまり魔法少女…ガーディアンになって化け物を倒す道に進んでいる事からこれは一種の運命の様なものだという事がわかる。
つまり、僕は後1000年くらい、次代のガーディアンが現れるまで戦い続けなくてはならないのだ。
まぁ、最近はそれが必要が無くなってきたのだけれども…理由としては人間が今まで守られてきたそれらの脅威を認識して、人間の潜在能力を曝け出して魔法という力に目覚めていったのが挙げられる。
といってもそれはそれで危険なのだ。現在で言う僕じゃない魔法少女は結局の所延々と魔法が使えて戦い続けたり出来るわけではない、あくまで魔力の少なさというハンデを背負いながらもあの無尽蔵な化け物と戦わなくてはならないのだ、そんな彼女達が男の子の魔力が実は高いんだなんて事を知ってみろ、一部とはいえ、件の化け物の様に守るはずであった男達を襲うだろう。実際そういった事例が歴代の魔法少女の記憶を遡っても何度かあった。(因みに歴代の魔法少女から少しずつだが記憶を継承している)
現在、表だってはいないし、誰も理解できていないだろうけれど、正直、男の立場はかなり危ういのだ。
それはそうだ、男は魔力を多大に保有しているにもかかわらず、自分を守る方法が無いのだから。
現在は夜9時。6年前だったらパトロールに勤しんでいる時間帯だ、あの頃とは違い魔法少女の頭数も増えた影響で、僕がわざわざ街を練り歩き戦いに赴く必要がなくなったおかげで見ることがなくなった夜中の道を僕は歩いていた。
正直、理由なんて全くと言って良いほど無い。言わば興が乗ったからとしか言いようがなかった。
今年で中学生になる妹から「あんた、怠けすぎよ。少しは運動したら?」と言われた訳では無い、絶対に…
しかし…と空を見る、まん丸な満月が暗闇の中に浮かんでいる。月は神聖なものでそんな神聖な物を穢そうとこう言う満月の日は化け物が活性化するのだ。
だからだろうか、遠くの方で何か魔力が動いている気がする。
嫌な気配だ。
感じる魔力は三つ、一つは魔法少女だろうか弱い少女に魔力、もう一つは魔法少女が居るのならいるだろう例の化け物、そしてもう一つは…………なんだろう?よくわからないけど、女性であるのは確実だ、
そして、それが動いたのは直ぐだった。
瞬間、パァーンっと散る魔力玉が空を照らした。
魔力量からして余り有効打を与えられるとはいえない、牽制の為に打った物だろうけれど、それが上空に上がっていると言う事は照準を外してしまったと言う事だろう、といっても魔力の玉なのだ、自分で意識すればホーミングなんて簡単だし、そうそう照準から外れることなんてない。つまり意識外の攻撃、あの妙な魔力の所為だろう。
「多分、不味いな。これ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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