思いのままに寝転んで

ひらり

音楽

仕事帰りの車中、好きな音楽を聞く。

私は音楽の好みは幅広い方ではなく、昔から聞いてきた曲を何度も何度も飽きずに聞くのが好きで、今流行りの曲には詳しくない。

流行りの曲が嫌いなわけではないが、聞き慣れない曲はどうしても食指が伸びず、若い頃から聞き慣れた歌い慣れた曲ばかりをえらんでしまう。


私が選ぶ曲の中のいくつかには、聞くと必ず思い出すそれぞれに決まった風景がある。

一つは冬の小雪降る交差点で、彼の乗る車の助手席から信号待ちをしている風景で、

もうひとつは、なんてことない、彼の住む街の三叉路の風景。これも彼の車の助手席から見たアングルだ。

他には、その当時好きだった彼の部屋とか、遅刻しそうで全速力で自転車を漕いでいた桜が満開の通学路もあれば、大学受験で最寄りの駅から試験会場まで歩いた道の風景というのもある。

さらには、自分が世界一幸せなんじゃないかと思った甘い夜(もちろんその思いは錯覚なのだけれど)に過ごしたホテルの一室も。


自分の思い出と音楽がリンクして、一生忘れられなくなっているし、これからもかならず思い出すんだろう。

甘い思い出も酸っぱい思い出も全部。

その度にその頃の自分になって切なくなったり、ニヤけたり、ふっとばかばかしくなったり。年を取ってもこれはリフレインするだろう。

音楽ってすごいな。すごい力だな。

そう思わずにいられない。

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