第2話 ⦅最初の街⦆
舗装のされていない山肌を駆け抜けてしばらくすると、森を抜け、遮るものが無くなり視界が広がっていく感覚がした。
太陽を見ると、地球と同じなのなら昼下がり頃。澄んだ空気を吸い込みながら、人工的に作ったように見える川と石造の大きな壁に囲まれた中から覗く西欧風や
さて、どうやって合流しようか。と思っていると、今いるところの近くまで伸びている道が街の入り口だろうか、壁の近くまで伸びているのを見つけた。
その道を歩くこと十数分、木造の橋の先にある重々しい扉と同時に、綺麗な青髪を真っ直ぐ垂らしている彼女を見つけた。
それは彼女も同じようで、全速力で駆け寄ってきた。
「大丈夫でしたか!?怪我とか、!?」
僕の身を案じてくれてるのはわかるけど、、会話してただけとは言いづらい。
「大丈夫。それより、鱗。1枚でいい?」
「あ、、すいません。はい、ありがとうございます」
赤い竜の鱗を1枚だけ渡して、残り5枚はバレないように隠す。
「これから薬頼みに行くの?」
「はい。早い方がいいと思うので」
「出来ればだけど、着いて行ってもいいかな?この辺の事何も知らなくて、、あ、絶対邪魔にはならないよ」
知らない場所で一人行動は、なるべく避けたいし、世界間のカルチャーショックもあるだろうし、なるべく見知った人から聞いておきたい。
「旅人...なんですか?」
「まあね。しばらくはここにいるつもりだけど、何も調べてなくてさ」
これからの事も考えると、こっちの方が都合良さそう。
「分かりました、良いですよ。あ、自己紹介が遅れました。青鳥ギルド所属、リオ・ルードナイトと言います」
「無所属、シャルだよ。苗字はあるけど、あまり言いたくない」
ギルド...僕の想像通りなら、この世界での会社みたいなものだろうか。ノリで無所属って言ったけど、リオさんの反応からして特に問題なさそう。
「それじゃあ付いてきてください」
と同時に、リオさんが扉を通って行ったので、後を付いていこうとした。すると、
「へい、おかしな格好の兄ちゃん。身分証明の出来るものは持ってるか?」
と、門番に止められた。リオさんは特に何も無く通れたのを見ると、顔を覚えられているのか、一度通れば問題無いのか...
身分証明の出来るもの...前の世界でのならあるけど、絶対出したらマズイよね...
と、顔に出さず少し悩んでいると、リオさんが助け舟を出してくれた。
「門番さん。この人は私の命の恩人なんです。悪いことは絶対にしないと思います!」
「...よし分かった。兄ちゃん、そこで待っといてくれ」
そう言い残して離れると、横にあった扉の先から透明な球を持ち出して来た。
「ちょっとこれに手をかざしてくれ」
言われるがままに手を翳したが、何も変化は無かった。
「よし、兄ちゃんは大丈夫だ。通ってくれて良いぞ。ただし、なるべく早くここに顔出してくれよ?身分証明は出来ていないからな」
「あ、はーい。お仕事頑張ってください」
「おうよ!」
そのまま門番の人と別れて、今度こそ門を通る。
今のは...なに?
サラッと流したけど、おかしな格好って言われた...この世界も価値観は一緒か。
それはリオさんも同じだったようで、好奇心が躊躇に勝ったのか少し遠慮しながら聞いてきた。
「シャルさん、その格好について聞いても良いですか?」
「んー、なんて言おうかな...」
明確な理由はあるけれど、そっくりそのまま言うと確実に目立ってしまうだろうし、そもそも前の世界の話だから絶対言ったらダメだろうね。
ん?既に目立ってる?...ちょっと何言ってるか分からない。
「すごい簡単に言うと制服、かな?この格好なのは僕だけだけど、犬だったり、兎だったり、、他の人には他の人の制服があるよ」
猫耳黒ローブなんて分かりやすい変な格好は僕だけなんだよな...
今となっては、無かったら落ち着かないレベルになってしまったけど。
「普段から目立ちそうですね、、」
「まぁね。けど、良い加減慣れてくるかな」
なんなら今も少し視線を集めている。
...きっと悪い意味で。
「なるべく急いだ方がいいかな?」
「そうですね。早く行きましょう」
それから、周りの景色を見回しながら煉瓦造りの道を進んでいった。
変な注目を集めないように、たどり着いた製薬ギルド(と言うらしい)の中に入らず外で待っていたけれど、変わらなかったかもしれない。
リオさんが中に入って行った製薬ギルドは、周りとは違った雰囲気を出していて、病院と言っても寸分違わない作りだし、ギルド≒会社はあながち間違っていないのでは、と思ってしまうほどだった。
窓から中を見たり、道を歩いている人達を見ていると、色んな事が見えてくる。
文化レベルは恒例の中世ヨーロッパ程度ではなく、電気がない事以外は今のところ同じように感じる。
割合として1割程、武装した数人のグループが歩いているのを見かけた。
向かっている方向は同じのようで、その方向にきっと、戦場かダンジョンだかがあるんだろう。
まさか、無理矢理詰め込まれた知識が少し活きてくるとは自分でもびっくりだけど。
澄んだ色の青空に浮かぶ太陽と殆ど同じようなものを見ていると、なんだか、異様に過ごしやすく感じた。
リオさんが中から出て来た時、赤い液体が入った透明瓶を持っていた。
ここにくるまでの間に聞いたことから、これが鱗で作った薬のようで、大体の病気は治ってしまうらしい。竜の鱗強すぎる。
「私の家はこの辺りにあるので、ここで待っててください。すぐに戻ってきます」
「ん、おっけー」
「...では」
なんで少し言い淀んだんだろう。
追加の待機に少し不服に感じながらも、彼女の背中で、歩調に合わせてゆらゆら揺れている青い髪を見ながら、静かにそんなことを考えていた。
そんな事からしばらくあと。体感1時間ほど。
全然帰ってこない...
そろそろ動いてもいいかな、際限無く人が流れている大通りを注意深く見ると、リオさんがいかにも屈強そうな大男に凄まれているのを見つけた。
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