物言わぬ我々
…ククク、間抜けな人間め。ヤツらは迂闊にも、我を住処へと招き入れおったわ。
──我の仲間は、既に数多の施設へ潜入を成功している。ある者は人間の資産が管理される重要施設へ、またある者は人間達の口が最も軽くなるとされる場所に潜りこんでいる。さらに奴らの生活実態を詳しく知るため、我のようにヤツらの居住地へと潜入する部隊もいるのだ。
我々は人よりも優れている。生命力は奴らよりも上だし、仲間も無数にいる。さらには下等な人間共には持ち得ない、特殊な浄化能力を持っていたりもする。しかし悲しいことに、我々の種族の殆どが穏健派であり、また人を殺すほどの武力を持っていたとしても受動的な攻撃手段のみで、力関係で言えば現状、人間の方が上となってしまっている。
どうして受動的なのか、ということだが、そもそも我々は行動が制限されているのである。自由に動くことができないのだ、忌々しいことに。なので近付いてきた相手に毒針を刺すとか、そういった形でしか対抗できないのである。
しかもそれでいて怪しまれないようにと、我ら潜入部隊は武力の類を持つことを、生まれた時から禁じられている。
だが、我々はこんな理不尽に決めつけられた力関係を決して認めはしない。我々は人よりも上に立つべき存在なのだ。
そもそも我々の祖先は、愚かな人間達よりも古来からこの地球上で生きていた。それを後からのこのこと出てきた猿如きが、デカい面をしていること自体許せん。人々は我らに感謝をし崇拝して、縮こまって生きていくべきなのだ。
──そして最近、良いことを聞いた。何でも我々の仲間が放つ生物兵器が、人間を脅かしているそうではないか。素晴らしい。ついに人間共へと対抗する、強力な手段を手に入れたのだ。暫くすれば、我々と人間共の立場は逆転するはずである!
クククク、下等な猿共よ、今まで我々を軽く見たことを後悔するがいい。貴様らのせいで死んでいった我らの仲間の無念、必ずや晴らしてやる!
…だがその光景を見るまでに、我は生き残っているのだろうか。というのも、人間は我々の種族を何世代にも渡って虐げてきているのだ。我がいつ標的にされてもおかしくはない。
しかも我が潜入したこの場所は、我の同胞達の屍の上に成り立っているのだ。ああ、何と恐ろしい!
どうか、一刻も早く革命を成功させなければ、死んでいった仲間達が報われない。見ておけ人間共よ、我々の受けた屈辱は何倍にもして返すからな──。
…む、食事の時間か。おい人間、水は程々だぞ。あまり入れすぎると根腐れをしてしまうからな。気をつけるんだぞ。我をホームセンターとやらで買わせてやって、家に置かせてやったんだから丁重に扱え。銀行やカフェによくいる我々の仲間と同じように。その代わり我も観葉植物として、貴様を癒してやろう。
──ただし、秘密兵器「花粉」で、貴様らが我々の前に這いつくばるまでの話だがな!はーっはっはっはっ…!
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