願いの連鎖は止まらない

 ここは冷たい海の中。プランクトンはふわふわと漂って、「捕食者になりたいなぁ」と願いました。


 そのプランクトンをぱくりと鰯が食べて、「もっと大きくなりたい」と願いました。


 油断していた鰯を、ペンギンがごくんと丸呑みして、「ああ、僕も空を飛びたい」と願いました。


 ペンギンが空を見上げるとカモメが飛んでいました。カモメは下を向きもせず、「さらに優雅に飛べたら」と願いました。


 カモメの脇を力強く鷹が通りました。鷹は大きな羽で美しく飛びながら、「あぁ、永遠に飛べたらいいのに」と願いました。


 飛行機が進路にいたので、鷹は避けざるを得ませんでした。飛行機の機長はため息をついて、「早く地上に降りて家族に会いたい」と願いました。


 機長の帰りを待つ妻はテレビを見ながら、「はぁ…ドラマの女優になってみたい」と願いました。


 ドラマの撮影現場で女優は、「忙しすぎる、暇になってみたいものだわ」と願いました。


 たまたま撮影を見学していた無職の男は、「ケッ、俺には願いも夢も希望ねえ。あーあ、そういうもん持ってみてえな」と願いました。


 神様は下界を見渡しながら、「ワシに願う奴らが多すぎる。たまには誰も、何も考えないではくれまいか」と願いました。


 皆んなを乗せた地球は自転をしながら、「神であろうと、私の願いは誰も聞いてくれはしない。誰か私の悩みを聞いてくれ」と願いました。



 私はこの文章を書きながら、「地球は物を思うのだろうか。疑問を持たれないだろうか。しかし突っ込まれてもいいから、沢山の人々に作品を見て欲しい」と願いました。


 そんな私が作った文章を見て、読者の貴方は──。

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