真犯人は?
ある日、僕は死んだ。そして今日は僕のお葬式が行われている。
すると両親の目の前に、同級生だったタケオがやってきて、土下座をして叫んだ。
「ごめんなさい!!俺が、俺があんなことをしたばっかりにケンジは死んじまったんだ!!」
それを聞いて、式の参列者がギョッとする。
「…タケオくん、どういうことかな。君とケンジは友人だったと聞いているが」
父さんは静かに、タケオへと問いかけた。
「お、俺!アイツが死んだ日の前日!アイツに石を投げたんだ!硬い石を!!アイツが俺の言うことを聞かないから…きっと、あの怪我が原因で、俺、殺しちゃったんだと思う!!」
「君──」
「それは違うわ!」
父さんの言葉を遮って、否定の言葉を吐いたのはサヨコだ。
「アタシが殺したの」
まさかの殺人対抗馬が現れ、参列者達のざわめきが大きくなる。
「どういうことだい、サヨコちゃん。君はケンジの彼女だったはずじゃ?」
「アタシね、ケンジくんが他の子と話してたからって、ケンジくんを呼び出して、階段から突き落としたの。ケンジくんが死んだ日の前に。多分その時頭を打ってたから、それが原因で死んじゃったんだと思う。アタシよ、アタシが悪いのよ!」
「そんな──」
「待って、あなた」
またまた父さんの言葉は遮られた。しかも、今度は母さんだ。
「まさか、お前…」
「……そうよ、ケンジを殺したのは私なの」
父さんの顔面が、雪のように白くなってゆく。
とんでもない大穴の登場に、もはや葬式どころではないと、参列者達は食い入るようにやり取りを見つめる。
「どういうことだ…」
掠れる声で、父さんは母さんに尋ねる。
「私、あなたにも言ってない借金があったの。ホストクラブに入れ込んじゃって。もうどうしようもない金額に膨れ上がってるんだけど、どうにか返さなきゃって」
「ホスト!?お前何でそんな所に!!」
「あなたが悪いんでしょう!?家庭も顧みずに仕事仕事仕事!!!ケンジのことだって、イジメられてたのも知らないでしょ!?そこにいるタケオくんもサヨコちゃんも、友達や彼女なんかじゃない!!!イジメの首謀者よ!!!ケンジはいつも言ってたわ『学校に行くのが怖い、死んでしまいたい』って!!!」
「だからって、殺したのか」
「そうよ!!ケンジの保険金が入れば借金を返せると思ってね!…あの日の前日、お夕飯に毒を混ぜたわ。それで帰ってくるなり部屋に篭ったケンジに、『夕飯置いとくわね』って言ってドアの前に置いたのよ。そうしたら翌朝、ケンジは死んでたわ」
母さんの証言に、その場にいた誰もが絶句した。しばらくすると、凍った時を動かすように、誰かが「なんて悲惨な事件なんだ」と呟いた。
「…一つ、聞かせてくれ」
頭を抱えて座り込んだ父さんが、僕を殺したという3人に問いかけた。
「何故、君達はケンジを殺したと打ち明けた?黙っていれば誰にもバレなかっただろう?」
3人は口を揃えてこう答えた。
「ケンジが死んで罪悪感が湧いてきた。かわいそうだと思った。だから、自ら話すことにした」と。
「──…ほう、こりゃ珍しい。3人もの人間がお主を殺したと言うておる。で、お主は結局誰に殺されたのじゃ?」
神様がそう聞いてきたので、僕は答えた。
「いえいえ、自殺ですよ。母さんが僕を殺そうとしていたのは知っていたから、料理には手をつけず、毒自体を盗んで服毒自殺をしたんです。
…でも面白いなあ。人って、生きている時よりも、死んでからの方が気にかけてもらえるものなんですね」
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