タダより怖いものは無し

 はぁ…最近なんだか身体が重い。部活動で頑張ってるからかな?でもそれにしては異様に重い気がする。まさか、幽霊に取り憑かれてたり?


 「もし、そこのお方。もしかしてツかれてらっしゃいますか?」


 「えっ、やっぱり!?何か悪霊とか見えますか!?」


 「いえいえ、そういうことではなく。私は単に『疲れてらっしゃいますか』とお聞きしたのです。しかし、聞き間違えるところを視るとやはりお疲れのようでいらっしゃる。どうです?気分転換に占いは」


 …うーん、占いかぁ。こういう道端の占いって、なーんか怪しい感じがするんだよなぁ。しかもこの占い師、テーブルも椅子もなく棒立ちで、服装も占い師っぽくない。もしかして詐欺?それとも勧誘?


 「あ、いま怪しいって思われましたね?ならこうしましょう、お代は一切頂きません。私はただ、あなたとお近づきになりたいだけなんですから」


 「…なんか、更に怪しさが増したんですが」


 「そうですか?」


 「でも無料でいいって言うなら占ってもらおうかな」


 「ありがとうございます…では早速」


 そう言うと占い師は手を合わせて何かを念じ始めた。薄々気付いてたけど、水晶とかは使わないんだな。──にしても男二人が通りの端の、そのまた端っこの方で立ち尽くして、しかも片方がもう片方に念仏みたいなの唱えてる光景って、側からみたらヤバい奴らと思われるんじゃないか?


 案の定、通り過ぎた何人かの人達は、もれなく全員怪訝な目でこちらを見て去っていった。あー、占い、受けなかったほうがよかったかなあ…。


 「はいっ、結果が出ましたよ」


 「あ…どうも…」


 ハッキリ言って、後悔の方が強くなってきたから、占い結果は割とどうでもいいんだが…。


 「あなたはですね、結構ツかれやすいタイプですね」


 「確かに!そうかもしれません。部活の後とか人よりも疲れて…」


 「いえ、そうではなく。『霊に憑かれる』方の憑かれやすいです」


 「えっ!?」


 驚きだ。占い結果の初っ端からそんなこと言われるとは。


 「で、ですね。あなたに近々不幸が起こります」


 「ええ!?」


 まさかの2連発でマイナスの結果。占いって、どっちかって言うと良い結果を伝えて客を気分良くさせる職業だと思ったんだけど、この人は随分ズケズケとショッキングなことを言ってくるな。


 「というのもですね、この結果二つは密接に関係しておりまして、あなたに悪霊が取り憑いてしまうのです」


 「はぁ…?」


 何だそりゃ。にわかに信じがたい。こりゃ、インチキ占い師だな。


 「で、最後の占い結果なんですけど──」


 「あー、分かった。もういいです。うん、いい占いでしたよ。はい。無料にしては良い体験ができた」


 「まあまあ!ちょっと待ってくださいよ、最後の結果も聞いてください」


 「嫌ですよ!アンタさっきから悪いことしか言わないじゃないですか!なんかいい結果の一つくらい言ってくれないと、こっちだって暗〜い気持ちになるでしょう!?」


 「んー、そうですか。じゃあ、あれです。後の人生、精一杯生きたらいいんじゃないですかね」


 「アンタ舐めてんのか!?そんなん占いじゃないでしょーが!!」


 最悪だ!コイツやっぱりインチキ占い師だったんだな!?後の人生精一杯生きろって何だそれ!!!売れない自己啓発本のアドバイスか!!


 「んん?おーい、ユウキ!何やってんだお前!」


 お、後ろから友達の声がする。そりゃこんなに騒いでりゃ目につくよな。ちょうどいい、アイツにも事情を説明して、2人でこの占い師を扱き下ろしてやろう。


 「おうっ、聞いてくれよ!この占い師がさー」


 「?お前何言ってんだ?ここにいんの、お前1人じゃないかよ。お前がずっと壁に向かって騒いでっから気になって、俺は話しかけたんだよ」


 「えっ?」




 (──あら、バレちゃいましたね。そうです、私は占い師じゃありません。幽霊なんです)


 脳内に、声が響く。アイツの声だ。


 (さて、最後の占い結果をお伝えします。あなたは悪霊である私に取り憑かれたせいで、3日後に死にます)

 

 …なんだよ、占い全部、当たってるじゃないか。

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