第二艦隊砲撃終了
「畜生日本軍め! やりたい放題やりやがって」
一方的な砲撃を行うのを日本艦隊に見せつけられたエヴァ海兵隊基地の海兵隊員達が叫んでいた。
時折、真珠湾周辺の砲台が反撃するが、戦艦を護衛していた重巡が打ち返し、沈黙させられた。
周囲を掩蔽壕に囲まれており直撃弾がない限り平気なハズだったが、三式弾がばらまく弾子が雨あられと降り注がれては、被害が続出し砲撃不能となった。
一方的な砲撃は続き、仲間への虐殺を一方的に見せつけられた。
やがて、真珠湾への砲撃が終わったと思った時、再び日本軍が自分たちに向かって砲撃を行った。
どうも日本軍は徹底的に破壊したいようだ。
味方への執拗な攻撃に彼らは怒りを高めるが、同時にどこか安堵していた。
自分たちが攻撃されていないことに。
だが、日本艦隊が再び接近し、砲身を自分たちに向け発砲したことでそれが幻想である事を思い知らされた。
彼らに出来る事はただひたすら、自分達が掘った蛸壺の底で攻撃が止むのを、それまでに自分の蛸壺に砲弾が命中しないことを祈るだけだった。
「北表への砲撃完了しました」
「撃ち方止め!」
全ての砲撃を終えた宇垣は撃ち方止めを命じた。
弾薬は万が一、帰路で敵艦と遭遇したときに備えて最小限しか残していない。
事実上、残弾ゼロと言って良い。
しかし、それだけの成果はあった。
「戦果観測機より報告! 各目標の破壊を確認! 戦果大なり!」
「よし!」
ソロモンの撤退戦でガダルカナルへ航空戦力を麻痺させるため度々、飛行場砲撃を行ってきた日本軍だったが、効果が不十分とされていた。
だが、改良を重ね後半では、有効な打撃力となり米軍が模倣するくらいに腕が良くなった。
観測支援、戦果判定もその一つで、確実に目標を破壊したかを確認することが出来る。
「敷設隊はどうだ?」
「はい、予定通り、第一敷設隊は真珠湾湾口へ機雷を敷設。第二敷設隊はラハイナ泊地へ突入、機雷敷設を敢行し成功させています」
一部の軽巡洋艦と駆逐艦それに改造した二等輸送艦に機雷を大量に乗せ、全速で急行させ強行敷設させたのだ。
特に二等輸送艦は元々上陸用舟艇を扱う事を考慮し軌条を設けてあり、大量の機雷を短時間で敷設する事が可能だった。
機雷も機雷堰、潜水艦が入らないよう大量に機雷を敷設して封鎖する為に大量生産されていたので、用意できた。
相変わらずの徹底的なやり方に宇垣は呆れる。
命じたのは宇垣だが、立案したのは佐久田だ。
真珠湾いやハワイを機能不能にするために、泊地としての機能を喪失させるために機雷まで敷設する。
ここまでの発想はこれまでの日本海軍にはなかった。
佐久田の独創的な発想とされているが、佐久田本人は後に否定いている。
元々は日本海軍の基本作戦、漸減作戦、七段階にわたり来航する米海軍の艦艇を攻撃し徐々に戦力を削いでいく作戦だ。
その過程で、敵の主力だけでなく根拠地自体を攻撃し敵艦隊を行動不能にする事を思いついたのだ。
その作戦の延長であり、異端ではないと佐久田は主張していた。
だが、戦前の作戦とは全く違うやり方に、中堅以上、各種学校や海大で教育を受けた人間は特に面食らっていた。
しかし作戦が成功したのは、しかも大戦果を挙げたのは間違いない。
「第二艦隊全艦艇に通達。作戦目標の達成に成功したことを認める。直ちに離脱せよ」
「了解!」
作戦が成功したからには、長居は無用だ。
特に戦艦は、不意の遭遇戦に備えて必要最低限しか残弾がない。
敵の反撃を食らえばそれでお終いだ。
洋上で補給する方法もない。
艦隊決戦一本槍――国力上それ以外の作戦が採れない日本海軍は、洋上行動中で弾薬を補給する方法など確立されておらず、訓練も装備もない。
母港にもどらなければ、特に戦艦の大口径砲砲弾は補充できない。
直ちに離脱させたのはそのためだった。
「ハワイを破壊できた」
日頃、黄金仮面と呼ばれ滅多に笑わない宇垣の顔に笑みがこぼれた。
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