カクヨム賞 『ワンシーンなモブキャラの日々は食事が彩る』の感想
ワンシーンなモブキャラの日々は食事が彩る
作者 兎緑夕季
https://kakuyomu.jp/works/16816927861261471984
宇宙船内で撮影されているそれぞれの作品に登場するモブキャラ俳優たちが各々楽しみにしている、待機ルームでの食事の話。
本作は企画物で、『料理研究家リュウジ×角川食堂×カクヨム グルメ小説コンテスト カクヨム賞』を取った作品。審査に際し、最も重要視した点は「いかに料理がおいしそうに描かれているか」「料理を注文した後、その料理の登場する小説を読みながら、いつ自分のもとへ届くのかとワクワクしてしまう物語を選んだ」とあります。
モブキャラに光を当てて、彼女彼らが演技後の休憩をどう過ごしているのかにスポットを当てた着眼点は素晴らしい。
SFファンタジーのようなコントかしらん。
各話ごとに異なる主人公の一人称で書かれた文体。自分語りで実況中継をしている。読みやすさに加え、回を重ねることで余計な説明を省きつつ、コント的であり、最後にオチがある。
一行目の「貴族令嬢風な美しいドレスを身に舞った少女はハリボテ感満載の宇宙船の中にいた」という、はじめから非日常から入り、読者になんだろうとインパクトを与えている。
主役や準主役でもない、エキストラであるモブキャラ俳優にも待機ルームという名の控室が与えられている。
モブキャラであるが故に、部屋が一つしかなく、休憩時間をずらすことで共有していることで些細なトラブルが起きるところに面白さの一つがあるのだろう。
また、モブキャラ専門の俳優らしく、モブキャラ歴が長そう。
ヒーローにやられるモブキャラは、父親もモブキャラだったようだ。ひょっとすると、モブキャラ家系なのかしらん。だとすると、主役は親も主役をしてきたのかもしれない。
待機ルームをそれぞれ利用するモブキャラは、自分がくつろげる環境に部屋を変更できるという。
気になったのは、それぞれの食事は何処から現れるのだろう。
部屋を変更したときに、いっしょに食事も現れるのだろうか。
カレーライスを食べるヒーローにやられ役のモブキャラは、「僕の前には湯気が立ち込めるカレー」とあるように、目の前に現れている。また、カツサンドの残りは「蜃気楼のように揺らめくカツサンドが視界に入る」とある。
海はホログラムなので、待機ルームに映る映像はすべてホログラムなのだ。なので、部屋に残っていた皿に残っているカツサンドが蜃気楼のように揺らめいて見えたのだろう。
でも、つぎのモブキャラは南国風の部屋に入ると汗を流して熱さを感じている。なので、ホログラムだけでなく空調も変わると思われる。
また食事だけれども、「モブキャラ専用食堂で買ったカボチャの冷製スープを皿に流し込む」とある。つまり、待機ルームに入る前にモブキャラ俳優は、モブキャラ専用食堂で食事を購入し、それを持って待機ルームへ入ったのだ。
おそらく、食べ終わったら容器をモブキャラ専用食堂へ返すのだろう。
「以前、モブ貴族令嬢さんが、『宇宙人さんはスープがお好きですね』と言っていた」とある。また、「ザ•和室空間が広がっていた。多分、モブ宇宙人さんの仕業だな」とあることから、休憩時間が重なって、待機ルームで一緒に食事を取ったことがあるのだろう。
あるいは、〇〇時から〇〇時はまで誰が使っているのか、待機ルームの部屋の前に利用時間の予定表が張り出されていているのかもしれない。それで以前にも同じことがあり、モブ宇宙人さんの仕業とわかったのではないかしらん。
中年女性モブキャラ俳優さんは、使い慣れているのでしょう。自分の前に誰が使っていたかよりも、自分がくつろぐことを第一に考えている。
ということは、貴族令嬢Cのモブキャラ俳優は、モブキャラ歴が短いのかもしれない。最初に呼びに来たスタッフに、食べかけのカツサンドを取り置くように言っておけばよかった。
はたして、ヒーローにやられ役モブキャラさんはどうなったのでしょう。
さぞかし、おいしいカツサンドだったのだろう。
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