第11話 星冥獣覚醒 チャプター7 星食らう、血だまりより生まれし地獄竜

 自然と凝れ出ていた言葉に兵頭さんが力強く答える。そして恐怖からか静まり返っていたこの場に恐怖に染まった叫び声が上がる。神隠しに遭った人の内の一人だった。


 その声が呼び水となって次々に人々は悲鳴を上げて散り散りとなって逃げ惑う。追わなければならないのだが、AGE‐ASISSTの皆は迫りくるエルマグニから視線が外せないまま固まっていた。


 ダンッ! 銃声が鳴り響く。勝賀瀬さんが上空へ銃を撃った。全員がハッとしてそちらを向く。


「何してんのっ!? さっさと被災者たちを追って撤退! 他は時間を稼ぐよ!」


「第八、第九分隊は被災者たちを! 残りはエルマグニを引きつけろ!」


 戸惑いを残しながらも、「「「了解!」」」と返し行動を開始する皆。散開し、エルマグニを囲うように配置に着くと武器を構えた。


「撃てぇっ!!」


 一斉に銃弾が、砲弾が、レーザーが、エルマグニへ向かって飛んで行く。しかし、そんなものには意を介さず、エルマグニをその進撃を止めることはない。


「早瀬! 奴を止めろ!」


「了解!」


 兵頭さんの指示で先輩がエルマグニの正面へ立つ。


「《マジカ・ファイアボール》」


 火球がエルマグニの胸に直撃するが、全く反応がない。奴にとっては熱いとすら感じない程度のことなのか!?


「この……」


『マキシマムチャージ』


「《マジカ・グレイトファイアボール》」


 先程の火球とは段違いなサイズの火球が生成される。さっきの火球がソフトボールより少し大きい程度。今回のはバランスボールよりさらに二回りほどでかい!


 その大玉火球が左肩に直撃する。燃え盛る左肩、それさえも全く眼中にない様子で足を止めない。


『オーバードライブ』


「《マジカ・ロックキューション》」 


 エルマグニの正面に出現した黄色の魔法陣から巨大な岩の牙が生え、マグニの胸を抉ろうと文字通りに牙をむく。


 しかし岩の牙は衝突した途端に粉々に砕け散ってしまった。


 続けざまに顎の下に魔法陣が出現。下から突き上げる様に牙がエルマグニを襲う。


 流石に仰け反り、少し態勢が崩れ、動きが止まるエルマグニ。そこへ更に新たな岩の牙が頭部へと襲い掛かる。


 確かな手応え。しかしエルマグニはたいしたダメージを食らった様子はなく、再び進撃を開始した。


「なっ、なんなのよこいつ!?」


『マキシマ・オーバーストライク』


「こんのぉ! 《マジカ・ハイドロシュトラール》!」


 水のエレメントによる高水圧破壊光線が青い魔法陣からエルマグニの腹部へと発射される。


 山さえも削ってしまうほどに強力な水圧光線だが、エルマグニの身体に弾かれ、水飛沫が辺りに飛び散るだけだった。


「そんな……あたしの攻撃が全然通用しない……」


「ハヤミ! 上げて!」


 それまではAGE-ASSISTの皆と後方でひたすら射撃による攻撃を加えていた勝賀瀬さんだったが、ここへ来て前線に出た。


「莉央姉、わかった! 《マジカ・ロックウォール》」


 勝賀瀬さんの足元に黄色い魔法陣が出現し、土壁が斜めに角度をつけて勢いよく迫り上がる。


 それに突き飛ばされるように勝賀瀬さんはエルマグニへ向かって吹っ飛ばされていく。カタパルトの要領だ。


『マキシマ・オーバーブレイク』


「やぁぁああああああっ!!」


 膨大なエネルギーを纏ったスティックによる打撃が加速を得て激突する。


 これにはさすがのエルマグニも声を上げながら数歩後ずさり。これまでで一番のダメージが出た。


「グキュルルゥォオ!?」


「今だ! たたみかけろ!」


「「「おおーっ!」」」


 勝賀瀬さんの一撃を浴びせたその箇所に攻撃が集中する。これにはエルマグニの進撃も止まった。


「マキシマムチャージ」


「《マジカ・ランペイジウインドカッター》!」


 AGE-ASSIST隊の攻撃だけでなく、先輩の魔術も加わる。いつもより大きな旋風の刃が放たれる。


「相沢君、行くわよ!」


「よしっ!」


『『オーバードライブ』』


『『マキシマ・オーバーブレイク』』

 

「「《トゥワイス・ニコラシカ》!!」」


 僕たちも互いの必殺技を重ねて威力を増幅させた光の刃と弾丸を放つ。


 息もつかせぬ怒涛の攻撃が次々とエルマグニを襲いかかる。その周囲は煙や火花がしばらく収まらないほどに荒れ果てた。


 そうしてAGE-ASSISTの持つ弾薬がほぼ全て尽き、遂に追撃を加えるのが不可能となってしまった。


 僕たちも、マグニやコブリンとの戦いにエルマグニと力を使い過ぎている。これ以上戦闘の継続は危険だ。


 だがそんな僕たちを嘲笑うかの如く、エルマグニはピンピンしていた。

 あれだけの攻撃を受けながら腹部が少し傷つき、焦げただけ。それさえも数秒で再生した。今は傷一つない。


「馬鹿なっ……!」


「そんな……」


「くっ……!」


 総力を上げて叩き込んだ僕たちの攻撃が全て無駄? 悪い夢でも見ているようだった。

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