第10話 バディファイト! チャプター7 到達! 渾然一体のパーフェクトシンクロ!
『『オーバードライブ』』
ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!
心臓の鼓動が、妙にはっきりと感じ取れる。
私/僕はパスをそっと剣/銃のスロットへ挿し込んだ。
『『マキシマ・オーバーブレイク』』
ドクッ! ドクッ! ドクッ! ドクッ!
鼓動が速まる。だが、異様に静かだとも感じた。自分が溶けていくような、不思議な感覚。
「「はぁっ!」」
私/僕は何の抵抗感も無く、剣を振るった/引き金を引いた。
シンとした感覚から、徐々に周囲の様子がゆっくりと鮮明になっていく。
目の前では爆発が起こっており、轟音が次第に大きくなっていく。爆風による風圧と温度も、徐々に肌に伝わってくる。
すっかり元の調子に戻ってからは、なんだか今まで以上に色んな音が聞こえ、目に見える景色がなんだか色濃く、鮮やかに感じられた。
爆発から生じた黒い煙が風に流され、それとは別に黒い靄が空へと消えていく。マグニは復活せず、燃え残った小さな炎だけがそこに残っていた……
憐人SIDE
「やった……のよね?」
「ちょっ! のぞみんそれフラグだよ」
「何言ってんのよこのバカは。憐人、向こうはどうなってるの?」
妙に耳へスッと入ってきたその会話を聞き、再度我妻さんとの連絡を試みる。
――我妻さん、そっちはどう?
――多分……大丈夫だと思う。マグニの気配は感じられないわ。
その言葉を聞いた途端、周囲にまだ少し立ち込めていた霧が、この場を逃げる様に去っていく。施設内の霧も、次々に出てきていた。
霧が完全に晴れた時、ようやくいつもの感覚へと戻った様な感じがした。
「えっと、勝ったみたいです」
「ぃよっしゃー! やっと倒したぞ。ざまあみろー!」
「ったく。ここまで来るのに随分とかかったわね」
まったくだ。でもこれで、ようやく本来の任務である施設内の調査に本腰を入れられる。ここからが本番なんだ。
施設内部
あの後、後藤さんが引き返して僕ら三人を案内してくれた。ここの構造をある程度把握できているのは後藤さんだけだから助かる。暗いし思っていた以上に複雑な内部構造。おまけに縦にも横にも広い。こんなところに案内無しで入ってしまったら迷子になるのは必至だ。
「それにしてもよくやったわね憐人。これであなたも一人前のアルカナね」
道中そんな言葉を貰った。
「まぁ、マキシマ・オーバーブレイクを使いこなせていたし、そういうことになるわね。まだまだ色々足りていないとは思うけど。まぁ少なくとも、巓花よりは信頼できるかしら」
「早瀬さん、憐人に失礼よ」
「ちょっと! 二人とも私を引き合いに出さないでよ! てか私に失礼してるじゃん!?」
まだ実感があまり無い。でも、本当に僕はやったんだよな。あのマグニを、0.1秒以内のズレに抑えて、今まで使えなかったマキシマ・オーバーブレイクを使用して。我妻さんと二人で。
一人前のアルカナか……正確には僕はアルカナじゃないけど。でも、勝賀瀬さんや先輩たちに近づけたんだよな。
「おっ! 来た来た。おーい!」
いつの間にか合流地点に着いていたようだ。大きな扉の前で待機していた勝賀瀬さんがこちらに気付いて呼んでいる。我妻さんも一緒だ。
「やったね憐人。順調に成長しているみたいでお姉さんもうれしい限りだよ」
「ランベールが記録を取っていたみたいよ。誤差0.05秒ですって」
「0.05!? 大躍進じゃん」
勝賀瀬さんは僕以上に喜んでくれていた。見ていると恥ずかしくなってしまうほどに。それは我妻さんも同じだったみたいで、みんなの輪から一歩引いた場所でうつむいていた。
「我妻さん」
「相沢君。本当に私たちやったのよね……?」
「多分。いや、確実にそうなんだろうけど……実感わかないよね」
「うん。なんだか変な感じ。トドメを刺した記憶は確かに有るのに、記憶から抜け落ちてるような……何言ってるんだろうね私」
「わかるよ。僕もそんな感じ。なんだろう……なんなんだろうね」
「うん……」
お互いに上手く言葉では表せないでいた。でも、お互いに言いたいことは、感じていたことははっきりとわかっている。
あの時。溶け合った意識の中で。
「さて、話してばかりもいられないわ。任務の続きよ」
「そーだね。さっさと済ませよう」
「なんか収穫あるといいね」
「無い可能性も十分あるから困るのよね。ここまでして無駄足だった。って展開は避けたいわ」
会話も終わり、皆が動き始めた。
「行きましょ、相沢君」
「うん」
邪魔をする者はもういない。扉の奥へ、歩を進めた。
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