第6話 命を繋ぐもの チャプター7 AGE‐ASISST、現着!

「ふぅ」


 やった。倒せた。


 今朝もマグニを倒したけど、誰の援護もない、僕たち二人だけでマグニを倒せたのは今回が初めてだ。快挙と言っていいかもしれない。


「相沢君」


 少しくたびれた様子の我妻さんが駆け寄って来る。だが――


「ん?」


 我妻さんの背後の霧に黒い影が見えた。経験上これは!


 ――我妻さん危ない!


「我妻さん危ない!」


 声に出すよりも先にテレパシーが出た。我妻さんは反射的に振りむき、剣を構える態勢に入るが、影の方が早い! 既に我妻さん目がけて飛びかかっている。間に合わない!


 ダァンッ!


 突然の銃声。どこからともなく放たれた銃撃は影を撃ち抜き、強襲を防いだ。


 影の正体はもう一体のウルフマグニ。先程の青い毛並みの個体と違い、小豆色の毛並みをしたマグニだった。空中でバランスを崩し、硬直してる。


「はっ!」


 硬直によって攻撃が中断されたマグニは我妻さんの剣をモロに喰らい、地面へと倒れこんだ。


 ほっとしたが、さっきのは? 銃撃が飛んできた方向を確認すると、住宅の二階の窓からライフルが覗いていた。


 撃ったのは池田分隊長。これ以上の無いタイミングでの援護だ。我妻さんも気づいたようで、お辞儀をしている。


 ワオォォ―! と、こちらのマグニも遠吠え。エネルギー弾かと思いきや、霧の中からコブリンの大群がわらわらと現れる。仲間を呼ぶ遠吠えだったか。


 僕たちは改めて構え直し、コブリンたちが襲い掛かる。が……


 ダン! ダン! ダン!


 これまた銃撃が鳴り響いた。それも複数回。


 さっきとは違う方向からだ。振り向くと、複数台の車やバイクがエンジン音を上げてこちらへと迫ってきていた。AGE‐ASISSTだ。


「第二分隊、現着。総員かかれ!」


「第三分隊、現着。各員はマグニ周辺のコブリンを引きはがして」


「第四分隊、現着。他二部隊の取りこぼしはウチが拾うよ」


「「「了解!」」」


 各隊員がコブリンを相手取る。特に分隊長の三人は僕たちAGEと変わらないんじゃないかという勢いだ。


「どりゃ! つぇあ!」


 大庭竹分隊長は一体目のコブリンを殴り飛ばし、その返しで反対側から迫る二体目を裏拳で沈める。


 殴りかかってきた三体目の拳を避けて腕を掴み、関節をキメてから蹴り飛ばす。


 そして腰に帯刀した刀(僕たちが使う剣の刀版で、本来はアルカナ用)を抜くと、立ち上がった三体のコブリンを次々と斬り、刺し貫き、黒い靄へと変えていく。


「へぇぇあっ! えあっ!」


 高橋分隊長は他のAGE‐ASISST隊員が使用しているものと同型の、その中でもハンドガンタイプの物を使い応戦。


 相手の攻撃の隙をつきながら関節部を銃で撃ったり、距離が近い相手には蹴りで体勢を崩したりとダメージを蓄積していく。そこへ――


「ほーいよっと!」


 堀内分隊長がスレッジハンマーの様な武器で追撃を入れて倒していく。他の部隊だというのにコンビネーションは抜群だ。


「うぉおおお!」 「しゃあいけー!」 「だらぁああ!」


 他の隊員も協力し合ってコブリンを倒したり、足止めしたりと懸命に戦っている。


 遠くから池田分隊長の援護スナイプ、後方にいる隊員からの援護射撃もあり、コブリンはその数を保つことなどできはしなかった。


「我妻さん、一気に決めよう!」


「そうね。いくわよ!」


 僕たちの闘気を感じたのか、ウルフマグニはこちらへと向き直り、エネルギー弾を連発してきた。


 それを躱し、防ぎながらマグニへと接近し、二人同時に左右の肩を殴る。


 怯んだマグニは体勢をやや崩しながらも前のめりにその爪で襲い掛かるが、僕は脛の辺りにロー、我妻さんは顔面目掛けてハイ、それぞれキックでカウンター。


 堪らず後退りするマグニの腹部へ同時にキック! 追撃に僕は銃を取り出して銃撃。我妻さんは剣を取り出して斬撃を。何発も、何度も浴びせた。


 碌に抵抗もできないまま、立て続けにダメージを負い、満身創痍のマグニ。


「これでトドメよ!」


「トドメだ!」


『『マキシマ・オーバーストライク』』


 同時にベルトを操作し、システム音がダブって鳴り響く。地面を同時にめいいっぱい蹴り、天高く跳躍し、マグニ目がけて僕は右足を、我妻さんは左足を突き出す。


 「「はぁああああ!!」」


 必殺のダブルキックはマグニの胸部へ炸裂し、盛大に吹っ飛んだ。


 二体目のウルフマグニは地面に伏すことすら敵わず、空中で大爆発を起こし、消滅した。


「あれ? 終わってる……」


 爆発の黒い煙が丁度晴れる頃、バイクの音を轟かせて勝賀瀬さんが到着した。


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