ミナトさん旅行記 ニセコ編

鷹美

第1話

時は遡り、ミナトが自動車免許をとって少し過ぎた秋ごろ。

陽キャのように紅葉で映える景色を楽しみながら旅をしようと何処か間抜けなテーマの旅を企画していた。


車はレンタカーを使い、遠からず近からずの場所にあるニセコが今回の旅の目的地だ。



メンバーはミナトを含めて2人で集合場所は札幌市の中心にある札幌駅。

そこの近くにあるレンタカー会社で車を事前に予約している。



人の往来の多い駅のホームでミナトは友人を待つ。

今回の旅のお供は久しぶりに会う専門学校の友人だ。



「やっ。」



シュタッと右手を顔の横位まで上げて声をかけてきたのが友人の“ツチヤ”だ。

肩にかかるくらいの黒髪、赤のフレームの眼鏡、歩きやすいスニーカーにジーパンと似た色のガウチョパンツに大き目の黒のパーカーと白黒のボーダーのTシャツを着ており背中にはトレードマークともいえる大きなリュックが背負われている。



「相変わらずの恰好だねぇ、ツッチー。

リュックサックもそんなに大きくなくていいやん、今回は車ぞ。」


「甘いね。

充電器、おやつ、ゲーム機、薬とかボクには持ち物が多いのだよ。」



エッヘンと胸を張るツチヤ。

やれやれと思いながら歩き始めたが、ピタリとミナトは足を止めた。




「あれ、化粧品は?」


「あっはっは。」



この女…笑ってごまかしたな。

まったく、無頓着なオオダでさえ多少のメイクをするのに…。


童顔の強みなのかは知らないがツチダはメイクを一切しない。

自称職場では達人と豪語してはいるが、ミナトは信用していないし信用した所でツチヤの接し方も変わらないだろう。



駅から少し歩きレンタカー会社に向かいサラサラと書類を記入すると外にでてレンタカーの説明を受ける。

傷がないかは勿論、当時は鍵を刺して回さないやつが出始めたばかりだったのでその使い方も説明を受けた。



いってらっしゃいませ。

ミナトはお辞儀をする店員さんに会釈をして運転席を見回す。


久しぶりの運転だ、ブレーキやギア等の場所を確認するとギアを動かしDの所までギアをあげてゆっくりと進ませてからアクセルを踏む。



「お手本のような運転だねぇ。」


「やかましい。」



ヘラヘラと笑うツチヤにそう言った後に歩道に入る少し前で一時停止する。

久しぶりの運転とレンタカーの車の質がいいのか、ブレーキの効きが良くてガクンと揺れて停止する。



「ミーちゃん?」


「…大丈夫、大丈夫。

初回のブレーキよ、誤差誤差。」



ジトーっと見つめてくるツチヤに対してミナトはそう誤魔化すと、再び車をゆっくり走らせて車道に入るまでに一時停止しいたのだが…再びガクンと揺れて停止する。



「ミーちゃん?」



ツチヤは再びミナトを見るが、ミナトはツチヤの言葉を無視して車を走らせた。



「ミーちゃーん!!」



大きなツッコミをいれるツチヤに対して口笛を吹いて誤魔化すミナトだった。




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