※第二話『叫んで五月雨、金の雨。』まで読んだ時点での感想です。
大学生たちのごく普通の日常を描いた、オムニバス形式の短編連作集です。
なんてことのない(と言ったら申し訳ないようですけれど)平和で穏やかな日々の中にある、ふとした出来事を丁寧に拾い上げるような手触りが素敵なお話。
主人公(視点保持者)も各話ごとに巡っていくようで、本当にオムニバスとしての質感が強いというか、ある種の群像劇的な味わいもあってワクワクします。
最大の魅力はやはり現代ドラマとしての堅実さ。
何か不思議な出来事が起こるでもなく、また登場人物たちが突拍子もない振る舞いをするでもなく。
実直で落ち着いたリアリティラインのあり方が実に心地よく、安心して物語に身を預けることができます。
勢いや迫力のあるド派手なお話も楽しいけれど、そういう飛び道具に頼らない物語もまた良いものですよね。
穏やかな読み味が嬉しい作品でした。