最後に何故かひっくり返る。
おくとりょう
side.F
鶏肉が食べたくて、
目を覚ますと、外は雨が降っていた。黄色い雲が薄気味悪くて、僕はぎゅっと目蓋を閉じる。
「冷蔵庫には何があったっけ?」
ぼんやり頭で考えた。四月とはいえ、まだまだ寒くて、温もり残る寝床の中で、ふんわりのんびり微睡んでいる。
「マヨネーズはあったよね」
しっとりまろやか、淡い黄色のベッタベタ。それはほんのり酸味もあって。『べちゃべちゃ』って、絞り出される。僕の頭に飛び散った。
それはきっと。鶏肉と合うに違いない。鈍く気だるく淡い泥。
黄色い朝から溶け出すように、僕のベッドに降りしきる。誰かの心を沈めるように。
流れるそれが溺れる頃に。油の雨はようやく止んで。酸っぱい香りを部屋に満たして。青い僕は塗り潰された。
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