第60話興信所に
【興信所に】
そろそろ裕子さんの父親にも挨拶に行こうか、と話合っていたけど、その前に母親に様子を聞いてみるとのことなのでちょっと待つ事になった。
間接的に様子を聞いた感じだけど、気になるのが1番最初の旦那=DVやろう
普段はおとなしく人当たりが良く、裕子さんが病院で診断書を書いてもらっても父親は信用しなかった、という事。
まさか父親と最初の旦那が今でもつながりがあるとは思わなかったけど、そうだったら、俺達が結婚した事も伝わっているかもしれない。
裕子さんに昔のいやな思い出について話すのはつらいかもしれないけれどこれからの2人の事を考えると避けて通れない事なので 裕子さんに話してみた
「裕子さん、裕子さんにとって思い出したくないいやな話ですけど聞いてくれますか?」
「うん」
「裕子さんの最初の旦那の事です」
「……そうね」
「大丈夫だと思うんですけど、念のため、この前お世話になった興信所の方に、今の様子を調べてもらおうと思うんです」
「……うん」
「いやな思いをさせて、ごめんなさい」
「ううん いいの」
「俺は何があっても裕子さんと一緒にいたいんです、2人で幸せになりたいんです、だから……」
「うん、わかってる。私も克己君と同じよ、2人の間に溝ができるのはイヤ」
「はい」
裕子さんの父親の件は母親からの連絡待ちなので、その連絡が来るまでに、最初の旦那について先日お世話になった興信所に連絡を入れ、今度の休みの日に2人で興信所に伺う事となった。
「いらっしゃい、結婚されたそうですね、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「先日お電話いただいた件ですね」
「はい、念のためですが…………」
先日、あいつの件で俺の挨拶の時、弁護士先生と興信所の所長さんに話をした内容をもう少し詳しく話して、1番目の旦那の現況調査をお願いした。
何事もなければいいけれど場合によっては弁護士先生にお願いするかもしれないので同様の内容を弁護士先生にも伝えておいた方が良いと言われ、その場で弁護士先生に電話して改めて弁護士事務所に行きお願いする事になった。
やっぱり昔のいやな思い出が、裕子さんがちょっと暗い。
「裕子さん?」
「何?」
「そんな顔しないでください」
「ごめんね」
「昔のいやな事思い出しました?」
「うん」
「あの~、俺は何があっても大丈夫ですよ、俺が大切なのは裕子さんですから、裕子さんを守ります、愛し続けます」
「うん」そう言って強く手を握る
「そうだ、これから2人で水族館にでも行きませんか?」
「水族館?」
「はい、高校生デートみたいですけど」
「うん、そういえば、私、本当の意味で高校生デートしたことなかった」
「えっ? そうなんですか?」
「うん、男女友達と4人で水族館に行った事はあるけれど、付き合ってたわけじゃないのに、2人でどこかに行こうってしつこく言ってきたからしょうがなく他の友達も誘って一応Wデートってことにして水族館に行っただけで……」
「じゃあ、2人で本当の恋人デートしましょう、まず初めに水族館デートしましょう」
「うん」
興信所事務所は弁護士事務所のすぐ近くで、そのまま弁護士事務所に行こうと思えば行けるけど、それは後日にして、そのまま丸の内線に乗って終点まで
あまり来た事がない駅だけど、大きくて地下で道に迷いながら地上に出た、最初は反対口に出てしまい
百貨店の出入り口の端の方に交番があったのでそこで場所を聞いて、また地下に潜ってやっと東口に
「この街も大きいんですね」
「ええ、ほんと、でもここって克己君のマンションから1本じゃないの?」
「あっ、そういえばそうです、地下鉄しか使ってなくて、私鉄なら10分もかからないですね」
「そうよ、大家さんなんだから近隣の街も調べておいた方が良いかもね」
「じゃあ、時々2人で、この街を探索するのはどうですか?」
「いいわね、それ」
「はい!」
それから、毎週じゃないけれどこの街に来てはぶらぶら、西口を出ると目の前は公園、そこでのんびりしたり水族館の他にも色々な施設があって少しずつ楽しむ。
裕子さんは本当の意味での高校生デートをしたことがなかったので、いつもは行かない街で2人で遊ぶことが楽しいと言ってくれ、東京もその気になれば色々遊べる街がある。
2番目の旦那みたいな人種は六本木とか青山とか目黒区とか、そういう処を中心に、東京カリキュレーターという雑誌に載っているようなところしか行かないようだけど裕子さんは違った。
一般庶民の俺にとって、そんなうれしいこと言ってくれる裕子さん。
やっぱり俺達は一緒になる運命だったんですよ、
うん、わかってる。って言ってくれる裕子さん
大好き。
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